マイ・ブラザー
マイ・ブラザー
My Brother is an Only Child
2007年10月26日 TOHOシネマズ六本木ヒルズにて(第20回東京国際映画祭~ワールド・シネマ~)
(2006年:イタリア:108分:監督 ダニエレ・ルケッティ)
今年から新設されたワールド・シネマ部門。
ヨーロッパや南北アメリカの新進気鋭のインディペンデント映画を特集する枠組みで、日本で公開される可能性は低いかもしれないけれど、なかなか面白そうなラインナップではありました。
この映画はたまたま席がとれたので何も知らず観たのですが、なかなか熱い映画でした。
しかし、こういう映画は、その国の歴史や文化、お国事情などがわかった上で、楽しめる・・・というハードルがあるのは事実です。
この映画もイタリアの1960年代の政治・学生運動などが背景になっています。
イタリアの小さな村のある兄弟。
主人公は弟ですが、最初はカソリック神学校に入りますが、性に合わず出てしまう。
そして、ファシスト党に入党。
兄といえば、工場で働いている内に共産党運動のリーダーに。
方や、共産党運動のリーダー、方やファシスト党。正反対になる兄弟ですが、断絶はしないのですね。
ただ、兄はまだ幼い弟がファシスト党に入ることに怒り、反対する。
洗面器に顔ぐ~~~~~っとつけて「頭を冷やせ!!!!!」・・・・で、顔をあげると少年だった弟は、青年になっている。
もう、何度も何度も兄ちゃんに頭を冷やせ!やられていたわけですね。
ムッソリーニを尊敬するファシスト党が堂々とまだ、ある、というのが驚きですが、わたしたちが習うムッソリーニは独裁者ですが、この兄弟が暮らしている街は、ムッソリーニ政権の時に、貧しい人々の為にたくさんの住宅を造ったひとつになのですね。
まぁ、評判の悪い政治家も、出身地元じゃ名士のようなもので、ムッソリーニのおかげで・・・と感謝する人々もいるそうです。
だから、ファシスト党というものも黙認されている状態。
兄はリーダーだけあって、明るくリーダーシップにあふれて陽気で、美しい恋人もいる。
しかし、弟はおとなしくて、ファシスト党といっても過激な行動をする訳ではなく、地味な青年。
フランスでは五月革命が起き、イタリアにも不穏な空気が流れ始める。
そんな空気に敏感なのは、兄。弟は静観している。兄の恋人の女性にもなんとなく好意を持ち始める。
兄を演じた男優さんはイタリアでは若い女性に大変な人気の人だそうで、陽性でカリスマ性のある熱い兄貴分というのを好演していました。
兄と弟・・・・政治的思想は違っても、兄弟は兄弟・・・そこら辺は割り切ってきちんと距離はとってもつきあっていける兄弟の絆・・・というものが最後の最後になってば~~~んと出てきます。ここ、すごく感動的でした。
映画であまりにも国の事情が違うと、他の国では通じない・・・というハードルを最後の最後でがんっと万国共通の何か、で打ち砕くという良い例。
どこの国でも通用する映画になると、描く物は限られてしまうけれど、作り方によっては、そんなハードルも跳び越えることができる、というギリギリスレスレのラインを上手く使った映画だと思います。