草原の急行列車
草原の急行列車
Steppe Express
2007年10月26日 TOHOシネマズ六本木ヒルズにて(第20回東京国際映画祭~アジアの風~)
(2005年:カザフスタン:90分:監督 アマンジョル・アイトゥアーロフ)
カザフスタン映画です。
カザフスタンという国は、国土は日本の15倍、人口は日本の1/15だそうです。
広大なステップ(草原)を、重たげな列車が走っている。街・・・というか、村はほんの小さなものです。
この映画は、あるフランス人旅行者の青年が、列車で旅行中、財布を盗まれてカザフスタンで途中下車したハプニングから始まります。
カザフスタンの線路の保線夫をしている父と、みやげ物や食べ物を止まった列車で売る女の子の2人くらしの家に世話になることになった青年。
まぁ、外国で財布とられた・・・っていったら、もう戻ってこないのでしょうが、この映画では、お父さんが、「む。探してきてやる」と馬を連れて行って、「あったよ」と財布戻ってくるのです。
なんかなぁ、このお父さん、怪しげです。でも、何とも飄々としている。
美しい娘と恋に落ちるフランス人の青年。
フランス語しかできないわけですが、字幕ではなくて、フランス語にかぶせて、カザフスタンの言葉が重なるようになっています。
字幕があまり普及していないので、字幕は使えないということですが、ありがちな、「言葉が通じないがゆえのトラブル」が全くないのがこの映画の特徴。
すぐに、コミュニケーションがなりたってしまう。
広大な草原で馬を走らせる娘。コツコツと線路を点検して、直す父。
静かな暮らしに、さざなみが起きる。
西洋に密かにあこがれている娘は、青年と一緒にカザフスタンを出て、フランスに行ってしまう。
でも、父は反対して暴れたりしない。
フランス人の青年と娘が一緒になるなら、結婚式をしろ、と言うくらいだけれども、そこら辺になるとドライで、青年は結婚はしない、ただ、フランスに行きたいから連れて行くだけだ、というばかり。
素朴な服を着ていた娘がフランスで洗練されて、息子を連れて帰ってきても、もう父はいない。
なんとなく、着ている服や髪型は洗練されているけれど、ギスギスとしてしまった娘の姿がなんとも哀しい。
列車は、昔と違って最新式のきれいな車両。
変わっていくもの=娘、変わらないもの=父・・・という対比のさせ方をしています。
変わった方がいいのか、変わらない方がいいのか・・・・どちらがいい、とこの映画でははっきりとは言いません。
広大な草原は相変らず、風が吹いて、雨が降って、遠くから列車がやってくる。
そんな風景が、日本では見られない広大な風景で、カザフスタンとはこういう国です、という観光映画にしていない淡々とした風景がとても印象的。