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ミス・ポター

2018.03.15 00:12

ミス・ポター

Miss Potter

2007年10月25日 有楽町 日劇にて

(2006年:イギリス=アメリカ:93分:監督 クリス・ノーマン)

 ピーター・ラビットの作者として有名なベアトリクス・ポターは、イギリス湖水地方の自然を残す活動をして、遺言としてナショナル・トラストに寄贈した人物として有名です。

 この映画は、20世紀初頭のイギリス上流社会を描いたものであり、ピーター・ラビットが世の中に知られる事になった時に出合ったミス・ポター(レニー・ゼルウィーガー)とその本の編集をしたノーマン(ユアン・マクレガー)の恋愛に焦点をしぼっています。

絵本作家として有名になって、当時、めずらしかった独身の自立した作家として、湖水地方の自然を残すことになるその後の物語もあるはずですが、93分という長さでは、焦点をしぼらざるを得なかったというのがあると思います。

また、「かわいい~~~~」と人気のピーター・ラビット他の絵たちの誕生秘話あたりは、アニメでひよひよ・・・と絵が動いたりして、かわいいピーター・ラビット大好きファンへのサービスもきちんと出しています。

 わたしは、この映画で重要なポイントである、イギリス北部の湖水地方というのは、大好きなアーサー・ランサムの『ツバメ号とアマゾン号』他の舞台となったところ、のほうが大きいので、その風景が楽しみでした。

アーサー・ランサムの本は、ウィンダミア湖やコニストンといったところがモデルになっているのですが、お金持のポター家は、まさにウィンダミアに避暑に行くのであり、ベアトリクス・ポターの家があるのもコニストンなのです。

 20世紀初頭で100年以上も昔の上流階級では、30すぎて独身というのは肩身が狭い・・・かといって外に働きに出るなんて良家の子女はとんでもない・・・ましてや、やっと恋した相手は「商人」である、ということで、ベアトリクス・ポターは絵を本にしたい、恋を成就させたい、願いはあっても、両親に何かと阻まれてしまう・・・あれこれ、がメインでした。

 良家の子女といっても、ベアトリクス・ポターを演じたレニー・ゼルウィーガーは、化粧もあまりせず、笑ったり、怒ったりすると、頬がまっ赤になるところとか良かったですね。表情がとても豊かで、エグゼクティブ・プロデューサーも兼ねているという力のいれよう。

つん、とすましたところがなく、自分のやりたい事を実現させたい・・・と思うのを助けてくれる男性の出現。

 自分の思い通りの本にしたいため、印刷所に行ってあれこれ、指示を出す。

今ではあたりまえかもしれませんが、「印刷所」なんてとんでもなく下級の世界で、上流階級の人は入ったりしないところ、ノーマンの助けもあってベアトリクスは、ピーター・ラビットの本を作る。

母は、そんな道楽が・・・と鼻にもかけないけれど、ベアトリクスは本の大きさにこだわっていましたね。

小型の本にすること、値段を安くすること・・・で、結果としては、子供へのプレゼントに最適・・・で、本は売れてどんどん、ベアトリクスは絵本を出していくのです。

 子供のころから、動物が好きで、絵が好きで、自然が好きで・・・上流階級の世界とはなじめなかった気性の少女。

湖水地方の家を買っても、泥だらけになって作業をする、という気さくな人という描き方でした。

 それに反するのが、母で、ベアトリクスをとにかく枠にはめようとして、最後の最後まで、ベアトリクスの実力を認めない、知ろうとしない・・・という俗物ぶりがいいですね。

なんとなく、『プライドと偏見』を思い出しました。お金持はお金持で窮屈なところもあるのでした。

 この映画は、恋愛がメインなので、わたしとしては、湖水地方でのあれこれ・・・を含めて、もっと美しい、湖水地方の風景が見たかったという気持もあります。こういう自然を現代でロケできる、というのも、ベアトリクス・ポターの尽力の賜なのだなぁ、と思います。

映画の冒頭、人物を映さずに、絵筆で絵を描く様子をクローズアップしたところも良かったですね。

様々な青の色を、絵の具で作り、水に青い絵の具が広がり、絵を描く・・・という手先のアップで映画を始めたところが、とても良かったです。