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銀河書店's HP

【連載】(タイトル未定)#2

2022.11.05 04:14

※こちらは、超絶遅筆な管理人が、せめてイベントに参加する毎には更新しようという、

若干他力本願な長編(になる予定の)連載ページです。

状況により、過去投稿分も随時加筆修正予定。

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「名前は? 覚えてるか」

「ルークスキヴォーラ」

「はっ?」

 聞き取れなかったのは、答えがあると思っていなかったからか、それとも耳慣れない響きだったからか。

「えっと、すまん。もう一回」

「ルークスキヴォーラ」

「おまえの名前か?」

「はい、たぶん」

 たぶんと言う割には迷わず発音しているから、おそらくそれが名なのだろう。が。

「……長いからルークでいいか?」

「はい」

「悪いな。あぁ、俺はフレイ。ここで……まぁ、便利屋みたいな真似事をしている」

 実際はもう少し荒っぽい稼業になるのだが、拾ったばかりの少年にそこまで明かす義理もない。

 と、小屋の扉を控えめに叩く音がした。フレイが立ち上がり、隣の部屋に消える。

 ルークはベッドからおり、腕を回したり体を捻ったりしてみた。特にどこかを痛めたり、動かすのに支障がある様子はない。浜に打ち上げられていたということだが、それなら確かにフレイの言う、不自然さみたいなものが感じられた。

 なぜ、自分は無傷で浜に倒れていたのだろう。海で何かしらの事故に遭って流れ着いた――本当に?

 覚えていない。フレイに名乗った自分の名以外、なにも。

 そこではたと、まだろくに礼も言っていないことに気が付いた。しっかり乾いている服を手早く着込み、隣の部屋を覗く。

 僅かに開いた扉から、フレイと、別の数人の声がする。しばらくすると声は止み、足音が遠ざかっていった。部屋に戻ってきたフレイの表情は、少し硬い。

「あの」

「ん? あぁ、服、ちゃんと乾いてたか」

「はい。助けてくれて、ありがとうございました」

「あぁ」

「……」

「……」

 互いに沈黙。口達者な方ではないのだろう。フレイは何か言いたげに視線を彷徨わせていたが、やがて小さく息をつく。

「おまえ、行くあてなんかないよな」

「ええと」

「名前以外に覚えてることは?」

 ルークは首を横に振る。覚えていることはない。けれど。

「あの、行かなきゃいけない、と思います」

「あ、いや、追い出そうってんじゃねぇんだけど」

「いえ、そうじゃなくて」

 どこかに。あるいは、誰かを。探しに行かねばならないような気がする。

 呼んでいた。否、呼ばれていた? わからない。

「すみません、うまく説明できないんですけど」

「いや、いい。わからんでもない」

「え?」

 聞き返したルークに、フレイは「おまえもか」、と呟いた。僅かに伏せた瞳が沈む。どういう意味かと、重ねて尋ねることはできなかった。

「とりあえず、朝飯にするか。その後、ちょっと付き合え」

「はい」

「あぁ、それと。もうちょい気楽に話せ。そんな堅苦しいと俺の気が滅入る」

 冗談なのか本気なのか、フレイの眉間に皺が寄る。ルークは少し困ったが、曖昧に笑って頷いた。