【連載】(タイトル未定)#2
※こちらは、超絶遅筆な管理人が、せめてイベントに参加する毎には更新しようという、
若干他力本願な長編(になる予定の)連載ページです。
状況により、過去投稿分も随時加筆修正予定。
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「名前は? 覚えてるか」
「ルークスキヴォーラ」
「はっ?」
聞き取れなかったのは、答えがあると思っていなかったからか、それとも耳慣れない響きだったからか。
「えっと、すまん。もう一回」
「ルークスキヴォーラ」
「おまえの名前か?」
「はい、たぶん」
たぶんと言う割には迷わず発音しているから、おそらくそれが名なのだろう。が。
「……長いからルークでいいか?」
「はい」
「悪いな。あぁ、俺はフレイ。ここで……まぁ、便利屋みたいな真似事をしている」
実際はもう少し荒っぽい稼業になるのだが、拾ったばかりの少年にそこまで明かす義理もない。
と、小屋の扉を控えめに叩く音がした。フレイが立ち上がり、隣の部屋に消える。
ルークはベッドからおり、腕を回したり体を捻ったりしてみた。特にどこかを痛めたり、動かすのに支障がある様子はない。浜に打ち上げられていたということだが、それなら確かにフレイの言う、不自然さみたいなものが感じられた。
なぜ、自分は無傷で浜に倒れていたのだろう。海で何かしらの事故に遭って流れ着いた――本当に?
覚えていない。フレイに名乗った自分の名以外、なにも。
そこではたと、まだろくに礼も言っていないことに気が付いた。しっかり乾いている服を手早く着込み、隣の部屋を覗く。
僅かに開いた扉から、フレイと、別の数人の声がする。しばらくすると声は止み、足音が遠ざかっていった。部屋に戻ってきたフレイの表情は、少し硬い。
「あの」
「ん? あぁ、服、ちゃんと乾いてたか」
「はい。助けてくれて、ありがとうございました」
「あぁ」
「……」
「……」
互いに沈黙。口達者な方ではないのだろう。フレイは何か言いたげに視線を彷徨わせていたが、やがて小さく息をつく。
「おまえ、行くあてなんかないよな」
「ええと」
「名前以外に覚えてることは?」
ルークは首を横に振る。覚えていることはない。けれど。
「あの、行かなきゃいけない、と思います」
「あ、いや、追い出そうってんじゃねぇんだけど」
「いえ、そうじゃなくて」
どこかに。あるいは、誰かを。探しに行かねばならないような気がする。
呼んでいた。否、呼ばれていた? わからない。
「すみません、うまく説明できないんですけど」
「いや、いい。わからんでもない」
「え?」
聞き返したルークに、フレイは「おまえもか」、と呟いた。僅かに伏せた瞳が沈む。どういう意味かと、重ねて尋ねることはできなかった。
「とりあえず、朝飯にするか。その後、ちょっと付き合え」
「はい」
「あぁ、それと。もうちょい気楽に話せ。そんな堅苦しいと俺の気が滅入る」
冗談なのか本気なのか、フレイの眉間に皺が寄る。ルークは少し困ったが、曖昧に笑って頷いた。