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「エルシー・ピドックゆめでなわとびをする」エリナー・ファージョン シャーロット・ヴォーク

2018.03.15 10:59

絵ではなくてお話のこと中心になってしまう気がして、instagramにはあまり馴染まないかと、ですのでそんなに紹介してこなかったのですが、エリナー・ファージョンが大好きなんです。皆様はどうでしょうか。

1881年生まれのイギリスの児童文学作家で、日本でもアーディゾーニの挿絵が添えられた作品集などが多くの人に読まれ、愛されていると思います。

大好き、と言っても、実は本はたくさん持っているのですが、その作品の大半はまだ読んでいないのです。読んだことのある幾つかの作品が本当に素晴らしくて、だからこのまま一気に読んでしまっては勿体無い気がして、なかなか読み始められないんですね…。この感覚、わかって頂けるでしょうか。お薦めがあったら教えてください…。

そんな私の読んだことのある数少ないファージョンの作品のひとつ、こちらはシャーロット・ヴォークが絵を描いている「エルシー・ピドック、ゆめでなわとびをする」です。

この素敵なお話をどう説明しようか、困ってしまうのですが、生まれながらのなわとびの名手、エルシー・ピドックという女の子が主人公のお話です。

そのなわとびの上手さは妖精たちの間でも広まり、彼女は妖精の中のなわとび仙人のような人物にも認められ、手ほどきを受け、素晴らしいなわとびの技/秘術をさまざま身につける…、これでこのお話の前半部分です。前半だけで、随分と不思議なお話ですね!

なわとびの秘術…それがどんなものかは是非読んで頂きたいのですが、読んで頂いてもそれがわかるかどうかは保証できませんのであしからず…。

後半は、長い年月が過ぎ、エルシーの事を皆が忘れた頃、その村に、横暴な地主がやってきて村人たちに色々と嫌がらせをするのです。しまいには村人たちの愛するケーバーン山(ここではエルシー以来、三日月の晩に子どもたちがなわとびをするというしきたりが生まれ、今でもそれは守られ、楽しみにされていました)を封鎖しようとするのでした。

もう半分は村の人たちも諦めてしまいました。現在の随一のなわとびの名手の女の子、エレンももうケーバーン山でなわとびをとぶことが出来ないのかとしくしく泣いていました。すると何処からか声が聞こえてくるのです…。

素晴らしいお話の結末は是非ご自身で読んで見て下さい。

このお話が読者を喜ばせてくれることのひとつは「なわとび」という子どもの「遊び」がなにか偉大なものでもあるかのように描かれていることに、可笑しみと、何だか不思議な爽快感を感じさせてくれることでしょうか。

エルシーのなわとびであるならば、人々はすべての憎しみや戦争を止めることさえ出来ると思ってしまうような、そんな描かれ方なのですね。身近な遊びが、何だかものすごく大きなものに繋がっていると思わせてくれることは、子どもであっても読んでいてワクワクすると思いますし、大人でも日常に色がつくように、新鮮な喜びを感じさせてくれます。

また、このお話には幾つも不思議な部分があるのですが、文学に親しんでいる人が読むときっと一番気になるのが、この「なわとび」は何であるか?と言うことではないでしょうか。「なわとび」が何かのメタファーである感じがしてしまうのですね。

しかし優れた文学では往々にして言えることですが、単純な解釈を拒否する傾向がこの作品にも見られます。

なわとびはなわとびとしてしか描かれていないのですが、なわとびを超えたなにものかに見えて仕方がない。けれどそれを言い当てることは決して出来ないのです。

なわとびが世界を変える。

そんな風に言うと、ああ、例え話でね、なんてきっと言われてしまうのですけれど、エルシーは、ファージョンは、なわとびで世界を変えます。物語を読む喜びは、こんなところにあるのではないでしょうか。

文学に親しんでいながらも、児童文学はあまり読んだことがない人にはファージョンの作品は本当におすすめですよ。


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