キミの時間
【キミの時間】
♂2人 ♀2人 計4人
~30分
槻白 一稀(つきしろ いつき)
男、高校二年生。バカ。
東条 沙耶(とうじょう さや)
女、高校二年生。元気。
和泉 悠真(いずみ ゆうま)
男、高校二年生。お兄ちゃん系、委員長。
一之瀬 詩織(いちのせ しおり)
女、高校二年生。可愛い。
沙耶ママ
優しい。(詩織と兼ね役推奨)
病院の先生
(悠真と兼ね役推奨)
――――――――
♂一稀:
♀沙耶:
♂悠真・先生:
♀詩織・ママ:
――――――――
――― 学校・朝
沙耶「おはよー!」
詩織「おはよ♪あれ?今日は一稀君一緒じゃないんだねー」
沙耶「えっ!?なんであいつと一緒に来なきゃいけないのよっ」
詩織「いっつも一緒にいるじゃん?」
沙耶「ただ家が隣なだけだって言ってるでしょー。それ以上なんてないない」
一稀「はぁ…はぁ…、おいこら!(バックを投げる)なんで起こしてくんねーんだよ!危なく遅刻するとこだったじゃねぇか!」
沙耶「いったいなぁ…!なんであたしがあんたを毎日毎日起こさなきゃならないのよ!あたしはあんたの彼女じゃないの!」
一稀「はぁ!?誰がお前みたいな馬鹿で、女の魅力の欠片もないやつを彼女にするかよ!こっちから願い下げだっつーのっ!!」
沙耶「誰が……あんたみたいな脳筋、彼氏にするかってーーのっ!(鳩尾に蹴り)」
一稀「っいってぇぇぇぇぇ!」
悠真「おーおー朝からやってるねぇw夫婦喧嘩」
一稀/沙耶「夫婦じゃない!」
悠真「へぇ~。にしては、毎日毎日にぎやかなことで♪」
詩織「まぁまぁ…二人とも落ち着いて…ね?悠真君も、茶化さないのっ!」
悠真「だってさ、こいつらいじるの面白いだろ?」
詩織「そうだけど……」
一稀「あっ!そうだ沙耶、今日返ってくる数学の小テストで勝負しようぜ」
沙耶「…は?なに言ってんのあんた。絶対に嫌」
一稀「はっはーんwさては自信ねぇんだなぁ?www」
沙耶「…いいわよっ。受けてたつわ」
一稀「そうこないとな!んじゃ、負けた方が一つなんでも言う事聞くってことでっ!」
――― テスト返却後
一稀「ぶっwwwwww11点wwwだっさーーーーーーw」
沙耶「なっ…そうやって馬鹿にしてるけど、あんたはどうなのよ!」
一稀「ふっふっふっ…聞いておどろけ!俺は、26点だ!」
沙耶「……」
詩織「あ、あはは…」
悠真「……お前ら…揃いにそろって赤点じゃねえか!なにしてんだよ!詩織ちゃんを見てみろ。満点だぞ!」
一稀/沙耶「すいません…」
一稀「で、でも!勝負は勝負だぜ!一つ言う事聞いてもらうからなっ」
沙耶「な、なによっ」
一稀「えっ…あぁ…そ、それは、思いついてからのお楽しみってことで♪」
詩織「考えて、なかったんだね…」
――― 二日後
沙耶「…おはよー」
一稀「あっれ~?沙耶さん遅刻ギリギリですよ~?お寝坊さんですかー?ww」
沙耶「うるさい…」
一稀「え…?え?え?そんだけっ!?ゆーまー!沙耶が!沙耶が冷たいよー!」
悠真「こっちくんな!いい加減お前の対処に疲れたんだろ」
一稀「うぅ・・・」
詩織「沙耶?どうしたの?なんか元気ない…?」
沙耶「え、ううん。大丈夫だよ。全然元気っ!ね?」
詩織「そ、そう?ほんと?」
一稀「あっ!そだっ、詩織!宿題うつさせてー!」
詩織「あ、沙耶ごめんね。また後でね。もうっ、今日もしてきてないの?」
沙耶「あのバカがほんとごめんねー。……けほ」
――― 一週間後
一稀「はぁ…はぁ…おいこら!(バックを投げる)あ、あり…?」
悠真「いってっ!…いーつーきーくーん?何してくれてやがりますかねぇ!」
一稀「ご、ごめんって!ほんとごめん!悠真に当てるつもりなんてなかったんだって!ほんと!――ぐぇ…ギブ…」
詩織「ゆ、悠真君。そのぐらいにしないと一稀君が死んじゃうよ…」
悠真「チッ…!詩織ちゃんに感謝するんだな」
一稀「げほっ…げほっ…。ってか、沙耶は?まだ来てね―の…?」
詩織「あ、沙耶ね。朝に連絡があって、今日は風邪で休むって」
一稀「あいつが風邪?仮病の間違いだろww」
悠真「エロゲの発売日、って休んでるお前と一緒にすんなっ(殴る)」
一稀「いてっ…なんだよー!人をダメ人間みたいに!」
悠真「それは伝わったのか。バカのくせに」
詩織「あはははは…」
――― 放課後
悠真「いつきー、これ。沙耶ちゃんのプリント。届けとけよ」
一稀「はぁ?なんで俺が?お前が頼まれたんだろー」
詩織「一稀君、家隣でしょ?それに悠真君と私これから塾だから、ね?おねがい」
悠真「そゆこと。よろしくなー」
一稀「ちょっ…。はぁ…、めんどくせぇ…。沙耶のやつさぼりやがって」
――― 沙耶宅
一稀「おーい、さーやー!あっれ…?誰もいねぇのかな…?」
沙耶「…げほげほ。ごめん…今開ける…」
一稀「お、おう…ほんとに風邪だったのか。ほいっ、これプリント。叔母さんは?」
沙耶「ありがと…。今出かけてる…」
一稀「そか。…んじゃ、帰るわ。お大事にな」
――ドサッ(沙耶が倒れる)
一稀「っ!?さ、沙耶っ!?おいっ、どうした?おいっ」
――― 病院
沙耶「っ……」
一稀「あっ…!沙耶!目、覚めたのか?大丈夫か?沙耶?聞こえてるか?」
沙耶「……いつ…き?…ん、…ここは?」
一稀「お前あの時病院が救急車失って意識が倒れただろ!?」(焦って)
沙耶「……は?」
一稀「だーかーら!」
ママ「まぁまぁ、一稀君おちついて、ね。沙耶?大丈夫?あなた玄関で倒れて、一稀君が救急車呼んでくれたのよ」
沙耶「そう…だったんだ…」
先生「目が覚めましたか?気分はどうですか?とりあえず今日は入院して、明日検査してみましょうね。お母さん、少しお話があるので、こちらに」
ママ「あ、はい。…じゃあ沙耶、また後でね。一稀君も、ありがとね」
沙耶「……なん……よ」
一稀「え?なに?聞き取れねーよ」
沙耶「だから、なんでこんなことしたのよ。風邪で救急車呼ぶバカがどこにいるのよ」
一稀「は?なんでって、おまえ」
沙耶「救急車呼べなんて言ってないっ。頼んでないっ」
一稀「そ、それは……んじゃっ、あのままほっとけばよかったのかよ!」
沙耶「そうよ!ほっといてくれたらよかったのよっ」
一稀「……あー、そーかよ!それは悪うござんした!もう知らね。そんなにほっといてほしいならもう関わらねーよ!……じゃあな」
沙耶「……ばか。……こんなの…ただの風邪…でしょ…」
――― 次の日
悠真「おはよ―――っ!?いつきっ!?俺より早く来てるとか、どうしたよ!?」
一稀「・・・おう」
悠真「え?そんだけ!?どうしたよ?頭でも打ったのか?」
詩織「おはよう。あれ?今日は一稀君早いんだねー」
悠真「詩織ちゃん!おはよう。そうなんだよっ!一稀のやつおかしいんだって!話しかけても微妙な反応でさ…」
詩織「え?えっとー…一稀君大丈夫?どうしたの?あ、そういえば今日も沙耶休むって来てたけど…、沙耶と何かあったの?」
一稀「別に何もない…席着けば、先生くるよ…」
――― 放課後
悠真「いつきー、遊びに行くぞ!」
一稀「はぁ…?そんな気分じゃねぇ…」
悠真「知るか!強制だ強制!あ、詩織ちゃん悪いんだけど今日の塾は休むわ。ごめんね」
詩織「はーい。わかったよー、伝えておくね」
一稀「ちょっ…離せって!何なんだよ…」
悠真「ふぃ~。遊んだ遊んだっ♪」
一稀「なんなんだよ…。無理やり連れてきて、勝手に遊びまわって楽しんで。なにがしたいんだよ…」
悠真「それはこっちのセリフだ。お前こそなんなんだ?その態度は。らしくない通り越してあからさますぎるだろ。なにがあったよ?」
一稀「べ、別に…なにもねぇよ…」
悠真「お前は変なとこで意地張るからな…。バカのくせに、いやバカだから、か?」
一稀「何もねぇって言ってんだろっ」
悠真「……はぁ。ま、どっちが悪いか知らねーけど。お前から謝れ」
一稀「はぁ!?なんで俺がっ」
悠真「やっぱケンカしてたのな。んじゃ尚更だ。そーゆーのは男から折れるもんなんだよ」
一稀「チッ…わりぃ…もう帰るわ」
悠真「…がんばれよ」
――― 病院
ママ「検査お疲れさま。明日の朝には退院ですって」
沙耶「ほんっとだよ!いろんな機械使われて疲れた!ただの風邪だよ?ヤブなんじゃないの?」
ママ「こらっ。そんなこと言わないの。検査結果は明後日出るみたいよ」
沙耶「ママー?あたし元気だよ?ほらっ!ね?」
ママ「そうね。……明日一稀君に会ったら仲直りするのよ?」
沙耶「えっ!?な、なんのこと?」
ママ「見てればわかるわよ。沙耶も一稀君も頑固なところあるからね。ずっとケンカしたままでいいの?」
沙耶「それは、……やだ(小声で)」
――― 次の日・昼
悠真「今日も沙耶ちゃん来てないなー。ちゃんと謝ったのかー?」
一稀「しらね…。邪魔、飯食うから…」
悠真「はぁ…んなことだろうと思ってたけど。ほいっ卵焼きいただきっ」
一稀「あっ、てめっ」
詩織「あーっ、沙耶!ひさしぶりー。風邪は、もう大丈夫なの?」
沙耶「詩織ー♪会いたかったー♪うんっ!もう元気♪」
悠真「おっ!沙耶ちゃん、おはよ。元気そうだな」
沙耶「ご心配おかけしましたっ!東条沙耶、完全復活ですっ」
悠真「ははっ。みたいだな。おい一稀、嫁さん来たぞー」
一稀「あっそ…」
沙耶「あ…。あー!もう!悠真ったら、そんなんじゃないっていっつも言ってるでしょ!」
詩織「あ…う…。そうだっ、沙耶はもうご飯食べた?購買行かない?」
沙耶「いいね!詩織のおごり?あたし、すっごいお腹すいててさー」
詩織「えー…。しょうがないなー、今日だけだよ?」
沙耶「やったっ♪れっつごー♪…ほら詩織おそーい」
詩織「あ、ちょっと沙耶、待ってよー」
悠真「沙耶ちゃん、元気になったみたいだな。それに比べて、お前は……」
一稀「なんだよ……」
悠真「別に」
一稀「意味わかんねぇ……」
――― 放課後
一稀「悠真!今日も遊(びに行こうぜー!)」
悠真「わりぃ、さすがに二日もさぼれないわ。また今度な!」(被せて)
詩織「一稀君またねー」
一稀「…あ。はぁ…帰るか…」
一稀「……」
沙耶「……」
一稀「なんなんだよ。なんで着いてくんだよ?」
沙耶「……家こっち」
一稀「じゃあ先行けば」(立ち止まる)
沙耶「えっ…あ…えっと、明日検査の結果出るらしいよ…」
一稀「あっそ…」
沙耶「うん……。……それだけっ。じゃあね!」
一稀「……はぁ」
――― 数日後
一稀「お前ら今日も塾だろ?じゃあ俺先帰るわ…」
悠真「あ、おう。わりー、また明日なー」
詩織「一稀君、またねー」
悠真「詩織ちゃん、ちょっといいかな?」
詩織「え?……あぁ…うん」
悠真「一稀たちの事。あの元気バカが、ここ最近ずっと暗い」
詩織「沙耶もあの日からまた、来なくなっちゃったし……」
悠真「最初はケンカが原因っぽかったんだけどなー…こないだの感じでは、沙耶ちゃんは平気そうだったしな……」
詩織「けど、あの日の沙耶はなにか無理してる感じだった、かな……」
悠真「やっぱりそう思う?詩織ちゃんが言うなら、間違いないな。んー…、ケンカして沙耶ちゃんは仲直りしようとしてる、けど一稀が意地張ってる、ってとこか…?」
詩織「うーん……。なのかなぁ?」
悠真「ん?なにか引っかかることでもあるのか?」
詩織「引っかかるっていうほどでも、ないかもしれないんだけどね……。休む前ぐらいからかな?沙耶、痩せてる気がして……」
悠真「あー……、風邪じゃ…ない……とか?…なんて考えすぎだよなww」
詩織「そ、そうだよねっ。私たちが考えてもわかることじゃないもんね!わたしの気のせいだと思うしっ」
悠真「おう…。にしても、ほんとどーすっかなぁ……。あいつらがクラスのムードメーカーなとこあるしなぁ…。あんな風に落ちられてると、つまんなくなるよな」
詩織「私たちにできること、ないかな?…仲直りさせるとか」
悠真「一稀の背中は押したつもりだったんだがな…。あの頑固バカ、動く気ねーみたいだからな……」
――― 帰り道
ママ「あら、一稀君。今帰り?おかえりなさい」
一稀「あ……。どうもです…」
ママ「ちょうどよかったわ。一稀君にお話があるの。少しおうちに上がってもいいかしら?」
一稀「コーヒーと紅茶、どちらがいいですか?」
ママ「じゃあ紅茶もらえる?」
一稀「どうぞ…それで、どうしたんですか?」
ママ「ありがとう。……沙耶のことよ。何も聞いていないのでしょう?」
一稀「……はい」
ママ「驚かないで聞いてね?沙耶は……もう長く生きられないみたいなの」
一稀「はっ!?えっ……嘘…冗談ですよね…?」
ママ「こないだの検査の結果が出たの…」
――― 回想・病院
先生「先ほどお母さまにはお伝えしましたが、先日の検査の結果がでました」
先生「大変申し上げにくいのですが、沙耶さんの体は日本では珍しい病気に侵されています」
沙耶「えっ…先生?冗談ですよね……?だって、ただの風邪ですよ?嘘ですよね?何かの間違いですよねっ!?」
ママ「……沙耶(優しく)」
先生「現代の医学では、治療法がまだ見つかっておりません。もちろん、やれることは精一杯させていただきます。…が、沙耶さんはあと数年しか生きられないでしょう」
沙耶「待ってよ!あたしまだ十六だよ!?あと数年なんて!ねぇ!せんせ(っ!おかしいよ!嘘はやめてよ!)」
先生「辛いのはよくわかります。すぐに受け入れられる話でないことも」(被せて)
沙耶「だって!こんなに元気だよ!?」
先生「ですが、おそらく一年以内に、歩くことが困難になると思われます」
沙耶「……歩けなく」
先生「そうですね。今後については、正直に申し上げますと、入院していただいてもできることは限られてます。ですので、沙耶さんの意思次第ということになりますね。いずれは入院せざるを得なくなるわけですから」
沙耶「……だ。…いやだっ!入院なんて!あたしは学校に行きたい!みんなと卒業したい!」
ママ「沙耶……。先生、私からもお願いします。この子のしたいようにさせてあげてくれませんか?」
先生「わかりました。できる限りのサポートをしましょう」
――― 回想終了
一稀「そんな…沙耶が…」
ママ「ごめんなさいね。本当はすぐに伝えるべきだったのだけど…。あの子に止められててね。今話したのも、私の勝手なのよ」
一稀「…いえ。話していただいて、ありがとうございます…」
ママ「あの子を責めないであげてね。あの子もすごく苦しんでるの…」
一稀「はい…。わかって、ます…」
ママ「じゃあ、私はそろそろ行くわね。買い物に行くって出てきてるから。そろそろ戻らないと怪しまれちゃうわ」
一稀「沙耶は…、ずっと家に?」
ママ「そうね。ずっと部屋に閉じこもったままなの。ご飯は部屋の前に置いておくと、少しは食べてくれてるのだけど……」
一稀「そう…ですか…」
ママ「勝手なお願いなのだけど、これからもあの子と今まで通り、変わらずにいてあげてほしいの」
一稀「それはっ、もちろんです!」
ママ「ありがとう…。沙耶をよろしくおねがいね」
――― 次の日
一稀「……おはよ」
悠真「うぃーっす。今日もギリギリだな。嫁さん今日も来てねーぞ?ほんとどしたよ?」
一稀「え?いあ…、何も知らない。悪い…」
詩織「一稀君、大丈夫?クマすごいよ…?寝てないの?」
一稀「え…あぁ…。ちょっと寝れなくてな…」
悠真「徹夜でゲー(ムでもしてたかー?)」
詩織「保健室いこっ!少し休ませてもらおっ!」(被せて)
一稀「えっ…いや…」
詩織「理由は言いたくないならそれでもいいよ。けど、沙耶ちゃんも休んでて、一稀君もこんなんじゃ、不安だよ……」
悠真「そうだな…。ほらっ!さっさと立て。保健室行くぞ」
一稀「……あぁ」
悠真「担任には伝えてきたから、そこのベッド使っていいってよ」
一稀「悪い…。ありがと」
詩織「……ねぇ、一稀君。沙耶となにがあったの?」
一稀「……何もないよ」
詩織「だって、メールも電話も連絡付かないんだよ?」
一稀「……そっか、お前らも何も知らなかったのか。そうだよな……」(小声)
悠真「ん?なんて言ったんだ?」
一稀「いや…何も言ってねぇよ…」
詩織「何か、知ってるの?」
一稀「だから、何も知らないって……」
悠真「……そうか。じゃあ、お前が寝れなかった理由は何だ?」
一稀「っ……!それは……さっき言いたくないならいいって……」
悠真「それは詩織ちゃんが言ったことだろ。俺は言ってないからな」
一稀「……何もない」
悠真「沙耶ちゃんが居なくて寂しいんだろ?」
一稀「なっ…、そんな、わ、け」
悠真「お前の自慢の明るさはどうしたよ?ケンカしたままでいいのか?」
一稀「だからケンカなんてっ……してた……けど……。そうじゃねぇんだ……」
悠真「そうじゃないって?」
一稀「……わかんねぇ。何もわかんねぇんだよ……」
悠真「もう気づいてんじゃねぇの?沙耶ちゃんのこと、好きなんだろ?」
一稀「っ!!……好き……わかんねぇよ……そんな風に思ったことなんて……」
悠真「ないのか?」
一稀「……。……少し、一人にしてくれ……」
悠真「……」
詩織「……いいの?」
悠真「さぁ…?たぶん?」
――― 次の日
沙耶「おっはよー!みんなー!元気だったー♪」
詩織「沙耶ーっ!メールも全然返事ないから心配したんだよっ!」
沙耶「あははっ。ごめんごめん、ちょっと忙しくてさー」
詩織「もう…。けど、元気そうでよかったー♪ここ最近一稀君もずっと変でさ、何かあったのかと思ってすごく心配したんだからっ!」
悠真「まぁそんな感じだ。まだあいつは来て、っと噂をすればっ」
一稀「……おは、っ!……おう、来たんだ」
沙耶「おはよっ。何その顔?あたしに会うのはそんなに嫌ですかー?」
一稀「っ!!……別に」
沙耶「なんなのよ。まだ怒ってるの?はぁ…、ほっとこ♪」
詩織「……いいの?」
沙耶「いいのいいの。あんなバカ、相手にするだけ時間の無駄よ。青春は一瞬なんだよっ!」
――― 昼休み
詩織「沙耶、今日も購買行く?」
一稀「…おい。ちょっとこい(腕をつかんで引っ張っていく)」
沙耶「えっ!?ちょっ、いきなりなによっ!ごめっ詩織、すぐ戻るからっ!」
一稀「……(無言で引っ張る)」
沙耶「わかった、わかったから。ついていくから、引っ張るのやめてってば!」
悠真「じゃあ俺は今日購買にしようかな。俺でよければお供しますよ?」
詩織「え?あ、うん。悠真君ありがと」
悠真「な?良かったろ?」
――― 屋上
沙耶「で、屋上まで連れてきて何の用よ?」
一稀「…お前、屋上入ったことあった?」
沙耶「は?何の話よ。そもそもここ、普段カギ締まってるじゃない、なんであんたがカギ持ってんのよ」
一稀「合鍵作った。さぼるのに最適だったからな」
沙耶「最低」
一稀「見てみろよ。結構眺めいいんだぜ。ほらっ、俺んちも、隣のお前んちも見える」
沙耶「…だからなによ」
一稀「……お前さ…長く生きれねぇって、ほんとなのか…?」
沙耶「っ!…はぁ?何わけわかんない事言ってんのよ。ただの風邪だっ(て言ったでしょ?)」
一稀「ただの風邪でこんなに休まねぇだろっ!…なんでそんなに嘘つくんだよ。お前の病気の事…おばさんから聞いた…」(被せて)
沙耶「…言わないでって言ってたのに。……そうだよ。あたしあと数年しか生きれない。風邪なんかじゃなかった。薬も治療法もない…一年もしないうちに歩けないってさ…」
一稀「知ってる…。全部聞いたから…」
沙耶「それで?だからどうしたの?一稀に関係ないでしょ?」
一稀「関係なくなんかないだろっ!」
沙耶「関係ないよっ!!あたし死ぬんだもん!あたしだけがみんなと居られなくなるんだもんっ…」
一稀「……」
沙耶「だからもう関係ないの……。みんなあたしのこと忘れてくれれば……。あたしが居なくなれば……それで……」
一稀「っ!(胸倉つかむ)んだよそれっ!諦めんのかよっ!生きること!なに勝手なことばっか言ってんだよっ!」
沙耶「離してよっ!諦めるって何!治らないのに、じゃあどうしろって言うのよっ!病気の事も!あたしの気持ちも!なにもわかんないくせに(偉そうなこと言わないでよ!もうほっといて!)」
一稀「わかんねぇよっ!!!……お前の気持ちは、お前じゃないからわかんねぇ…。教えてくれなきゃわかんねぇよ…。けどさ…、今お前が言ってるのはお前の本心じゃねぇだろ…。俺らといた時間、そんな簡単に消せるものなのかよ!違うだろ!」(被せて)
沙耶「……ぐすっ。わかんないよ…あたしにも…」
一稀「……くれよ。」
沙耶「…え?」
一稀「お前の残りの人生、俺にくれよ!……俺はお前に生きてほしい!幸せにしたい!お前と居たい!」
沙耶「え……。なに言ってるのよ…」
一稀「これ、命令だから!こないだのテストの罰ゲーム、まだ使ってなかっただろ!だから、命令!お前の人生俺にくれ!」
沙耶「……無理だよ。あたし、死ぬんだよ?歩くことも、なにもかもできなくなるんだよ……?」
一稀「それでもいい!歩けなくても、動けなくても、ただ俺の横にいてくれれば、それでいい!沙耶!お前が好きだ!」
沙耶「……バカ。遅いよ…」
一稀「遅くねぇ!ぜってぇ死なせねぇ!俺バカだからそんな病気の寿命なんかしらねぇ!」
沙耶「……ちがうよ。……あたしはあんたのことずっと、ずっと前から好きなの!気付くの遅すぎなのよっ!バカ一稀!」
一稀「あー……。へへっ、んだよ。両思いかよっ!緊張して損したっ!」
沙耶「損したって何よっ!」
一稀「いあ、なんでもねー。んじゃ、そろそろ戻ろうぜ!飯食う時間なくなっちまう!」
沙耶「これからあたしの病気がどうなるかはわからないけど、一稀は変わらず居てくれる。こんなバカなやつだけど、好きでいてよかった……」