城田実さんコラム第26回「ジョコウィ、外交で存在感」(メルマガvol.53より転載)
ジョコウィ大統領は、内政面ではジャワ島縦貫の高速道路建設にも目鼻が付き、広大な群島内の海域には高速の定期海運網を構築するなど、眼を見張るインフラ整備で脚光を浴びている。その成果が華やかなだけに、外交面での地味さが目立つのはある程度止むを得ない。
米国とロシアを向こうに回して第3世界のリーダーを自任したスカルノ大統領は別格にしても、開発一途に見えたスハルト大統領でも、東南アジアの地域問題については「インドネシアの了解なしに話は進めさせない」という存在感があった。
インドネシアが国際舞台で脚光を浴びた過去を経験したり、称賛する人たちにとっては、ジョコウィ外交には物足りなさが残るであろう。経済外交は民族的な高揚感とはどうしても縁が薄い。
そのインドネシアがようやく、長い「外交埋没」の時代を経て、再び国際舞台で存在感を示し始めたように見える。まず注目されたのはロヒンギャ難民問題への対応だ。大統領は即座に外相をミャンマーに派遣し、自らもバングラデシュの難民キャンプを訪問している。ASEAN(東南アジア諸国連合)域内の事件でかつイスラム関連宗教問題と条件が揃えば、インドネシアのためにお膳立てされたような国際問題だと受け止めたのかもしれない。何と言ってもインドネシアは世界最大のムスリム人口を抱えた穏健な国家なのだという自意識も刺激されただろう。
次には、今年1月に大統領がアフガニスタンを訪問し、そのわずか1カ月後に今度はカラ副大統領が同国での和平プロセス会議に参加した。3月中頃には、アフガニスタンとパキスタンそしてインドネシアのイスラム学者らが参集して話し合う場をインドネシア政府が用意することになった。アフガニスタンの平和構築と国造りにタリバン勢力らが加わるための環境作りであろう。
政治の季節に入って、「どちらの陣営がイスラムに優しいか」という選挙運動が増えている。ジョコウィ氏再選を掲げるあるイスラム団体は、さきの二つの外交活動を例に上げて「イスラムのために国際社会でも奮闘するジョコウィ大統領」と訴えた。外交と内政は切り離せないが、折角の外交努力が内政に振り回されないように願いたいものだ。(了)