悪の魔王と神になった人間
【悪の魔王と神になった人間】
♂0人 ♀0人 不問2人 計2人
~10分
勇者
魔王
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勇者 不問:
魔王 不問:
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勇者「はぁ・・・はぁ・・・。見つけたぞ魔王!!」
魔王「フハハハハ。こんなところまでやってきたか、勇者」
勇者「俺はお前を倒し!世界を救う!!!」
魔王「ほぉ・・・私を殺すか勇者よ・・・。なぜだ?」
勇者「なぜ?だと・・・。ふざけるな!!!貴様のような悪は死んで詫びろ!!!」
魔王「私が悪だと?なぜそう言い切れる?」
勇者「貴様が悪でなかったら、なんだと言うんだ!!!魔物たちは人々を襲い、村を破壊し・・・」
魔王「それがどうした?」
勇者「それがどうした・・・だと・・・。いい加減にしやがれ!!!貴様ら魔物にどれだけの人が殺されたと思っている!!!師匠に・・・親友・・・、それに俺の両親も・・・」
魔王「ほぉ・・・それは辛い思いをしたな。それで復讐か?」
勇者「そんなものではない!!!」
魔王「大切な人を殺されたから、魔物を、私を殺そうと来たのではないのか?」
勇者「違う!俺は世界のために!みんなが安心して暮らせる世の中のために!貴様らを倒すんだ!!」
魔王「では、魔物は殺してもいいのか?私の親も、兄弟も仲間も・・・みな、お前たち勇者に倒されてきたぞ。他の魔物たちもそうだ。お前は、自分が殺してきた魔物に家族がいるとは考えたのか?」
勇者「なっ・・・・・・。それは・・・」
魔王「魔物にも心はあればこうして話すこともできる。親や家族、仲間もいるぞ。それを殺しているのは、お前たち勇者ではないのか?」
勇者「そ、それは・・・。貴様ら魔物が人を襲うからだ!!!」
魔王「人を襲うからか・・・それも間違ってはいないだろうな。そういった魔物も多く居ることは私も知っておる。・・・だが、本当にお前が殺してきた魔物は全て人を襲っていたのか?」
勇者「な・・・に・・・?」
魔王「人を襲ったから、罰するために・・・。これはまだ理解できよう。だが、本当にすべての殺してきた魔物は人を傷つけていたのか?確認したのか?」
勇者「わ、わけわかんねぇこと言ってんじゃねー!魔物は悪だ!人を襲う!悪なんだ!!」
魔王「お前は先ほど、人を襲うから悪であるといったな。では、その魔物を倒すお前は悪ではないのか?同じように魔物を殺しているではないか」
勇者「それは・・・、俺は・・・。ひ、人を襲う魔物が悪だ!!!俺はその悪を倒す正義だ!!!」
魔王「ほぉ・・・。お前が正義か・・・」
勇者「そうだ!!俺は!!!みんなのために!!!みんなを守るために・・・」
魔王「みんなのためか・・・。ならば私が、お前たち勇者に殺された魔物のために、戦うこともできような?それが、正義なのであろう?」
勇者「なん、だと・・・。ちがう・・・。魔物が悪で・・・」
魔王「なぜ、魔物が悪だと言い切れる?」
勇者「だから・・・人を襲うから・・・」
魔王「お前たち人間は何物も傷つけず、何物も殺さないのか?」
勇者「え・・・?」
魔王「魚を捕まえ、牛や豚、鳥を飼い、殺し、食べているのではないのか?」
勇者「それは・・・生きるために!」
魔王「その通りだ!生きるため、食べるために!捕まえ、飼い、殺すんだ。・・・ならば、魔物も人を食べるために襲い、飼い、食っても、何の問題もないのではないのか?」
勇者「ちが・・・人を殺して・・・」
魔王「人を殺してはいけない理由などあるのか?他の生き物は良くて、人間はダメな理由がどこにある?」
勇者「人を殺すのは・・・罪になる!そうだよ!それは罪になるんだ!!!」
魔王「ふんっ・・・。それは人間同士での話だろう。もちろん私たち魔物の掟にもあるぞ、『魔物同士での殺し合いの禁止』とな」
勇者「でも・・・人は・・・」
魔王「人は何だ?特別なのか?フハハハハ。笑わせるな。神にでもなったつもりか?」
勇者「そうじゃ・・・ない・・・」
魔王「ふんっ・・・魔物の中には、牛や豚や鳥の魔物もいるぞ」
勇者「っ!!!」
魔王「知らぬわけないよのう?この私も牛の血を引いておるわけだしな」
勇者「魔物にも人を襲う理由があるとでも・・・?」
魔王「あぁ。その通りだ。少なくとも、魔物が悪などと言われる理由はないと思うがな」
勇者「しかし!!!魔物が人間を滅ぼし、世界を支配しようとしているじゃないか!!」
魔王「そのようなこと、私は言った覚えはないが・・・。仮にそうだとして、お前たち人間は逆に、私たち魔物を滅ぼそうとしているのではないのか?」
勇者「世界を悪に染める訳には・・・」
魔王「お前の言う悪など、所詮はお前たち人間に都合の悪いものでしかないと、まだわからぬか?」
勇者「ちがう・・・ちがうちがうちがう!!!」
魔王「違わぬわ!!!人間と魔物、それぞれ違う思想、理想を持ち。相容れぬ存在。お互いの思いを押し付け、そして、滅ぼし合うか?」
勇者「そんなこと・・・もう・・・」
魔王「もう?私はまだ何もしておらぬぞ?お前たち勇者が来るのを相手しているだけだ。一体いつ大群で押し寄せた?王都に何度も攻撃を仕掛けたか?魔物の本気がこんなものだと思っていたのか?」
勇者「そんな・・・」
魔王「人間と魔物。世界をかけた戦争でもするか?勝者こそが正義。それもまた一つの答えかもしれぬわな。ヌハハハハ」
勇者「戦争・・・だと・・・」
魔王「さぁ選べ、勇者。自分の復讐のために私を殺すか?人間の欲望のために戦争を起こすか?」
勇者「・・・わかんねぇ。わかんねぇよ・・・。悪って何だよ・・・正義って・・・」
魔王「そんな中途半端なものに、私の同胞たちは殺されたのだな・・・」
勇者「それは・・・、悪かった・・・」
魔王「謝るか・・・幼稚よのう・・・。謝罪し、何が解決する?私が謝ればお前は許したのか?」
勇者「ぐ・・・。それは・・・できない・・・」
魔王「そうだろうな。ならお前はどうする?詫びて死ぬか?」
勇者「・・・俺は。・・・俺は。魔王を・・・魔物を・・・滅ぼす!!!」
魔王「ほぉ!それが貴様の答えか!!」
勇者「正義も悪もわかんねぇ!でも!俺はお前らに家族を大事な人たちを殺された!!それは許せねぇ!だから!復讐で構わない!!!魔物を全員ぶっ殺す!!!」
魔王「残念だよ・・・勇者!!!」
勇者「うおぉぉぉおおおおお!!!!」
勇者「はぁ・・・がはっ・・・ぐ・・・」
魔王「・・・・・・ごほぉっ!!」
勇者「なっ・・・まだ生きて・・・っ!!!」
魔王「フハハ・・・無様よのう・・・。体は消し飛び、頭だけ・・・。もうすぐ消える命だ・・・」
勇者「くそ・・・しぶとい奴め・・・」
魔王「勇者よ・・・。私を倒し・・・何か変わったか・・・?」
勇者「・・・ん?なに・・・?」
魔王「復讐は・・・良いものは何も生み出さぬ・・・。産むのは新たな恨みと復讐だけぞ・・・」
勇者「だっっっ!だまれぇぇええ!!!」
魔王N「勇者の手によって魔王は滅びた。そして、数年後・・・」
勇者「これ!!!でっ!!!!・・・・・・クッ。フッ、フッ、フハハハハハハ!!!!俺に逆らうものは、魔物も人間も全員殺したぞ!!!もう誰も俺には逆らえねぇ!!!俺様が最強!!!!俺がトップ!!!逆らうものは殺す!!!フフッ・・・フハハッ。これこそが世界の平和!!!」