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マヤ

ヒューマノイドロボット『RYUJI』プロローグ

2018.03.18 23:00

ほとほと嫌気が差していた…





アイツとの付き合いは長いが、

最近はとくに目に余る…





なぜ、よりによって俺なんだ?





あと、もう一つは





多忙を極めるこの毎日だ…





仕事があるのはありがたい事だ。





オファーがあれば全て受ける。





デビュー当時から、その気持ちに変わりはない。





ただ、いまだに俺は朝が弱い…





あと一時間、ゆっくりできたら…








都内某所にあるロボット工学研究所。





病院とおぼしき無機質な白い空間をひたすら歩く。




やっとの事で長い通路の奥の部屋にたどり着いた。





認証コードを入力すると、自動ドアが開いた。





俺は中に佇む長身の男に声を掛けた。





「教授、完成したの?」





「ああ、完成だ」





教授といえば、普通はもっと年齢を重ねた、50〜60代の男性を思い浮かべる。




だが、目の前に美しく佇む男は、どう見ても30代前半位に見える。





実年齢は知らないし、そんな事に興味も持ってない。





プロフェッサー•紅(くれない) 恭介





黒髪は腰まで伸び、横分けで長い前髪の下に眼光が鋭く光っている。





「細部まで正確にコピーしたかったからね」





「予定よりかなり時間を要した」





「完コピできたの?」





「99%はな」





「ん?1%の不備ってなに?」





「性格が真逆だ」





…絶句。





「それ…1%どころの不具合じゃねーじゃん」





「とにかく起動させてみないとなんとも言えん」





「恭介…真逆って、大問題だよ!」





「下手すりゃ何の役にも立たな…」





俺の耳に聞き覚えのあるメロディが入ってきた。





先日リリースしたばかりの『Angel』のイントロ。





「これは何の雰囲気作り?」





「俺の趣味だ」





「俺の貞操がかかってるんだ。

恭介、真面目にやってよ」





「俺は至って真剣だが…」




部屋の中心に置かれた細長いカプセルの上蓋がスライドした。





カプセル内の青白い光に包まれて、

白いトランクスだけ身につけた男がムクッと起き上がった。





上半身は裸で、金髪にサングラス、

耳にはヘッドホンをつけている。





まるで鏡を見ている感覚…




俺と異なるところと言えば、服を着てるか否か…くらいだろう。




男は恭介から受け取った色鮮やかな半袖シャツを軽く羽織り、数回首を回して真っ直ぐに俺の顔を見た。





「よう!てめぇが本体か?」





「ああ…隆二だ」





「俺もRYUJIってんだ。よろしくな」





RYUJIは恭介が手渡したタバコに火をつけふかした。





「…恭介、どう見ても1%じゃねぇだろ」





プロフェッサーは何も答えず、不敵に笑った。





to be continued…