医者も人間、神にはなれない
【医者も人間、神にはなれない】
♂1人 ♀1人 計2人
~10分
医師 ♂
神の腕・奇跡の人などと呼ばれている名医
看護師 ♀
5年目ぐらいで、新人とベテランの間ぐらいの看護師
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医師 ♂ :
看護師 ♀ :
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―――部屋に入室・電気を付ける
看護師「ふぅー、ちょっと休憩ー。きゃっ!?先生・・・?ここに居たんですか」
医師「あぁ、高橋君か。おつかれさま」
看護師「大岩さんが探してましたよ?また仕事ほったらかしてきたんでしょ」
医師「あれ?そーだったかなぁ・・・んー・・・」
看護師「もぅ。しっかりしてくださいよー?大岩さん怒ると、こっちまでとばっちり来るんですからー」
医師「いやぁ、それはすまないね。後でちゃんと大岩さんには謝っておくよ」
看護師「お願いしますね。ところで、電気もつけずに何してたんですか・・・?」
医師「いやなに、少し考え事を・・・ね」
看護師「・・・あの子たちのことですか。先生は考え過ぎなんですよ」
医師「どれだけ考えても考え過ぎてるなんてことはないよ。それに、本当にこれでよかったのか。私がしたことは正しかったのか・・・、わからなくてね」
看護師「私たちは神様じゃないんです。まぁ、先生は神の腕とか、奇跡の人とか騒がれてますけど・・・、でも一人の人間なんですよ。何でもできる訳じゃないんです」
医師「あはは・・・。高橋君は手厳しいなぁ。でも、本当にその通りだよ。私はただのどうしようもない人の子だよ。それでもね・・・、もう少し・・・、もっといい方法があったんじゃないかと、思ってしまうんだよ」
看護師「でも、あの子は幸せだったって言ってたじゃないですか。先生ありがとう。って」
医師「・・・あぁ。でも、そのために私は彼に嘘をついてしまったんだ。決して許されないような・・・、ひどい嘘をね」
看護師「それはあの子が望んだことです。それに、彼もそれは分かってくれたじゃないですか。先生が気に病むことなんて・・・」
医師「いっそ、殴られでもした方がすっきりしたかもしれないね。・・・いや、すまない。忘れてくれ。・・・ダメだねぇ、私がこんなことを言ってはいけない」
看護師「・・・大丈夫ですよ。先生はずっとあの子見てきたんですもの。それこそ、我が子のように思えるぐらいには・・・。そうでしょう?」
医師「一人の患者を特別に見ることはいけないんだがね・・・」
看護師「それは私も同じですよ。数年でしたけど、お姉ちゃんって慕ってくれてましたから・・・」
医師「今になって思うんだよ。普段人を助ける私も、彼女に助けられていたんだってことをね」
看護師「・・・そうですね。あの子の明るさにみんな元気を貰ってました。病院の中が明るかったですからね」
医師「本当に強い子だったよ・・・」
看護師「先生は、出来ることは全部しました。良い悪いは別として、医者として以上の愛情をかけてました。それをみんな知っています。だから・・・、先生がそんな風にしてたらあの子に怒られちゃいますよ?」
医師「・・・あはは、それは恐そうだね」
看護師「じゃあ、私はそろそろ仕事に戻りますね」
医師「私も、このコーヒーを飲み終わったら戻るよ」
看護師「患者さんの前でその顔はダメですからね?あ、あと、大岩さんの対応もお願いしますよ?」
医師「あはは、分かっているよ。君は強いな」
看護師「女は強いんですよ」
医師「そうだな。本当にその通りだ・・・」
看護師「失礼します」
医師「・・・はぁ。・・・慣れた。・・・なんて言ってはいけないが、救えなかった命はこれまでもたくさんあった。それは仕方のない事。彼女もまた、その一人。そのはずなんだけどね・・・。」
医師「私は神様じゃない。それでも、まだ私のことを必要としてくれてる人たちがいる。
だからこそ、私は。私の仕事をしっかりしないといけないんだろうね。まったく、本当にしんどい仕事だよ・・・」
看護師「先生っ!!!」
医師「んっ!?どうしたんだい、そんなに慌てて。大岩さんが癇癪でも起こしたかい?」
看護師「そんな冗談言ってる場合じゃないんです!すぐに来てくださいっ」
医師「急患か?」
看護師「勇哉君が・・・、勇哉君がバイク事故で運ばれてきました」
医師「なんだってっ!・・・ダメだっ!君まで死んではダメだっ!」
END
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※これはとある台本のアンサーであり、この台本のアンサーはとある台本の方にあります。