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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

ロマン派の時代52-カルメンのスペイン

2022.11.07 10:50

「ピレネーの向こうはアフリカだ」と言ったのはナポレオンということだ。実は19世紀はスペイン旅行ブームである。ナポレオンの遠征で仏軍がスペインに赴き、現地での交流が芽生えてからである。ナポレオンの臣下になってフランスに移住した人も居て、スペイン文化をフランスに普及した。

そして旅行者を魅了したのが、アンダルシアのイスラムの融合した建築物だった。イギリスからもフランスからも船で近く手軽にオリエントの異国情緒を楽しむことができたのだ。テオフィル・ゴーチェは帰国後「スペイン紀行」というダンス演劇をつくって大当たりをとり、スペイン舞踊団もパリに公演をして大人気となった。

そこへやってくるのがかのプロスペル・メリメである。彼はカスティリャ語を習得しており、1830年よりスペイン各地を放浪して特に下層民の生活に関心を持って取材した。何と密輸と山賊のことも取材して山中をまわった。この旅行で着想を得たのがもちろん1845年に発表した「カルメン」である。

ヒロインのカルメンは、ロマ(ヒターノ)であり、スペイン特有ではない、とメリメは断っている。しかしフラメンコの原型をつくったのはロマなのだ。カルメンには密輸や山賊、闘牛士も出てくる。そして75年にビゼーがオペラを作ってスペインのイメージが定着、16世紀の先進国スペインは完全に忘れられた、日本もこうならないとは言い切れない。