モリケンイチ個展Gender game ー昭和 ヘテロの憂鬱ー
2022年11月29日(火)〜12月11日(日)※会期中無休
僕らは明治以降、否応なく欧米的で近代的なジェンダーコードの干渉を受けながら生きていますが、昭和から令和の時代のジェンダー意識も大きく変わりました。少し前の映画やテレビなど見れば、女性の扱いの酷さに改めて驚いてしまうのですが、当時は普通のこととして受け取っていたものです。
今回ジェンダー論を主題として扱おうと思ったのは、このような性をめぐる意識変化の中に我々の時代特有の問題があるように感じたからです。
そもそもですが、ジェンダーとは生物学的セックスの話ではなく、社会学的分類です。男性女性名詞みたいなもので、日本人にとっては陰陽に近い概念だと考えていいと思います。そして、自分なりにいろいろ調べたのですが、結論から言えばジェンダー論の主要テーマは家父長制資本主義の男性社会です。
これ、考えてみれば当たり前なのですが、ジェンダーギャップ問題は簡単に言えば男性側の問題であり、僕のような一般的なヘテロ(異性愛)男性の社会通念や価値観が問われているんです。
しかも、こうしたジェンダー的視点は他人事というわけではなく、男性社会特有の感情を表に出さないとか、苦痛に負けないとか、助けを求めないとかいった男らしさの美学は、死に急ぐ男たちという現実とセットなんだといわれます。自殺者も犯罪者も圧倒的に男性が多いという現実からして、家父長制的男性社会で苦しんでいるのは女性やLGBTだけではなく、当の男性自身も【男らしさ】の束縛で苦しんでいます。
この男性社会、フェミニズムの分析によれば、男性共同体の結束はホモフォビア(同性愛嫌悪)とミソジニー(女性嫌悪)によって高められるということです。
まさに宗教の戒律そのもので、男性性とは信仰の一形態なのかもと僕は思いました。
そして、資本主義はプロテスタントと関係が深い男性的な一神教です。
そもそも近代的家父長制が成り立ったのは産業革命後の職場と家庭の分離、分業が成立してからと言われます。
近代家族とは労働力の再生産の場であり出産と育成を司る、主に女性が受け持つ領域として構造化された場であり、これが近代的家父長制資本主義の支柱となっています。
他方、西欧近代の男社会はオリエントやアフリカ、その他の未開地を植民地化する事でキリスト教的男性社会の優位性を誇示してきました。日本もその一例であることは改めていうまでもありません。
しかし、この西欧男性社会の「強さ」でもある科学と理性の背後には、どうやらミソジニー的魔女狩りと男らしさを検閲し続ける異端審問が潜んでいるらしいということが、ジェンダー論によって明るみになってきたようです。実際、江戸期までの日本ではLGBT差別はさほど無かったという話もありますし、少なくとも男色にはかなり寛容だったようです。
日本は欧米文化とのハイブリッドとして近代化してきましたが、西欧文化は科学と同時に一神教的な考え方でも日本に影響を与えています。
しかも、それはあんまり意識されていません。
今回、僕はほかならぬ西洋絵画という形で、性をめぐる日本の近代のヘンテコさを描きました。
このヘンテコ日本人たちと、いわゆるクィア(Queer)との距離は実はそれほど遠くないのかもしれません。
モリケンイチ
【モリケンイチ個展 Gender game ー昭和 ヘテロの憂鬱ー】
〇会期
2022年11月29日(火)〜12月11日(日)※会期中無休
〇営業時間
10:30-20:00〈ラストオーダー19:30〉
10月28日(金)は演奏会のため、通常営業は15時閉店です。
〇会場
TO OV cafe / gallery
ト・オン・カフェ/ギャラリー
札幌市中央区南9条西3丁目2-1マジソンハイツ1階
(地下鉄「中島公園駅」より徒歩1.5分)
お問い合わせ 011-299-6380