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WUNDERKAMMER

形態の異なる幽霊

2018.03.18 14:39

昔、俺を含めて友人と4人で、夜に車で心霊スポット巡りに行った。 車は俺が出し、運転も俺が行った。 行く途中、コンビニでジュースとかお菓子を買って、遠足気分だった。 

目的地はバイパスが出来てからは使われていない廃トンネルで、地元じゃ一部で有名な心霊スポット。 まあ、よくありがちな、幽霊が出るとかの噂があった。 

ただ気になったのは、聞く人によってその幽霊が、 女の人だったり、子供だったり、男だったりと、形態が異なっていたことだ。 しかし、当時の俺はそういうのを信じていなかったので、その時は何も気にしなかった。 

で、目的地に着いて、トンネルの中を散策した。 トンネル内部は真っ暗で、懐中電灯で照らすと、ぼろぼろの壁の様子などがわかるだけだった。 いくらか散策して飽きてきた頃、 連れの一人が「うわっ!!」と声を張り上げ、入り口に向かってダッシュし始めた。 残りもびびって、そいつにつられてダッシュし、車に乗り込んだ。 

何があったのか聞くと、そいつが言うには「何か黒い人影っぽいのが見えた」ということだった。 ほんとかよと思いつつ、俺は慌てて車を出した。 結局それだけで、そのトンネルで特にはっきりと幽霊だとか、何か起きたとかは無かった。


まあ、ちょっと怖かったけど、いい体験ができたかな。 と思いながら車を運転していたが、あることに気づいた。 

連れの3人が皆、後部座席に座っていたことだ。 

「お前ら、何で誰も助手席に座らないんだよ」と聞くと、 3人とも「はあ?もともと後ろに座ってたぞ」と言った。 俺は「そうだっけ」と思いながら、また運転に集中した。 いくらかして助手席を見ると、ホルダーに飲みかけのペットボトルが入ってることに気づいた。 「じゃあ、あれは誰のだよ」と聞くと、 3人とも知らない、自分のものではない、ということだった。 もちろん俺のでもない。 

コンビニのレシートを3人に調べてもらったところ、俺達は確かにそのジュースを買っていた。 でも、誰も買った記憶が無いという。もちろん俺含めて。 じゃあこれは誰のなんだ? 皆無言になり、そのまま家に帰った。 結局その後は、俺にも連れにも特に異常なことは起きず、平凡に暮らしている。 

しかし、俺はその時の事が気にかかって、たびたびその事を思い出しては、いろいろ考えていた。 

今となって感じることだが、あのトンネルに入る前まで4人ではなく、5人いたような気がする。 

気がする?いや、俺達はいつも5人で・・・ 

しかし、あのトンネルから出た時に、何故か分からないが4人になってしまった。 確証はないが、そう考えることで俺の中ですっきりする。 そして、トンネルの中で連れが見たという黒い影、あれはもしかして・・・ 

さらに、あのトンネルについての噂話も気になる。 見る人によって幽霊の形態が異なる? 

いや、幽霊とかではない。かれらは、もともとこの世に存在した・・・ 


思い過ごしと言われればそうかも知れないが、 あの不可解な経験について、10年近くたった今でもたびたび考えてしまう。