写真の男
2018.03.20 08:03
もう10年前くらいになるかな。 親友のAが突然「一人旅に行く」と言いだした。
当時買ったばかりのデジカメを使ってみたかったんだろう。 俺は気にも留めずに「気をつけてな」って言って送ってやった。
しかし3日くらいの旅の予定の筈が、4日経っても5日経っても帰って来ず、連絡もつかない。 Aの家族は遂に警察に捜索願を出した。
1週間後、Aは発見された。水死体となって海岸に打ち上げられていた。 背負ってたリュックの中の遺留品から身元が判明したとのこと。
数日後、Aの葬儀の日、不意に警察に呼び止められた。 すると何やら写真を提示され、「この男を知らないか?」と質問された。 そこに写ってたのは笑顔のAと、見たことのない30代くらいのヒゲ面の男。 この写真、どうやらAのデジカメのメモリーから復元したものらしい。
つまりこの写真はAが死ぬ直前に撮ったものということになる。 他にも数枚、似たような写真があった。 もしやこの男がAを殺したのか? 男と全く面識がないことを警察に告げると、「やはりそうですか…」という反応。
「一体この男は誰なんです?」と質問すると、警察は教えてくれた。 この男は10年以上前にAの旅行先付近で行方不明になった男で、現在でも警察が捜索しているということ。 この男が何者なのか、そもそも生きているのか死んでいるのかすら分からない。
ただ一つ確かなのは、Aがこの男と会った直後に謎の死を遂げたということだけ。