地域の工務店による家づくりアフターメンテナンス1年点検
古川都市建築計画一級建築士事務所
古川達也
新しい施設や建築が生み出される時、是非忘れずに意識したいことは、将来にわたるメンテナンスです。設計しました横浜市内の住まいが竣工し、ご家族が住み始めてからちょうど1年が経過。施工をご担当頂きました地域の工務店様よりお声掛けがあり、アフターメンテナンスとして1年点検が行われ立会いました。竣工時の取り扱い説明の中で工務店様からアフターメンテナンスに関するしおりの様な解説書類がご家族に渡されており、1年後に点検する内容はチェックリストとして既に細かく記されていました。修繕項目があれば内容によって有償の場合もありますが、アフターメンテナンスとしての点検は基本的に無償で行われることが多いです。今後も3年目、5年目と続いていき地域の工務店として住まいご家族との信頼関係が築かれていくのだと思います。
アフターメンテナンス1年点検チェックリスト
チェックリストをあらためて見てみると、新築だけでなく古い建物のリフォーム等も含めたリストなので、本件では採用の無い屋根瓦の破損確認など、一部に該当しない項目も含まれてはいますが、その殆どが本当に大切なことばかり。施主ご家族、施工担当者、設計担当の私、皆互いに見落としや覚え違いなどの無いよう、確認することができるチェックリストであり欠かせない書類です。
実はチェックリストによる点検は、1年点検全体時間の半分以下で終了しています。チェックリストはむしろリストに無い項目を確認したり発見したりするための、余力を生み出すための効率的な工夫であることが分かります。チェックリストに無いこの住まいならではの場所、例えば広いウッドデッキの全体にササクレが無いか。木造の住まいですがオリジナルのスチール製手摺りや物干しバーなどに変形や傷、ビスの抜けなどが無いか等々。点検を終える頃には、住まい手にも作り手にも互いに納得の安心が芽生えました。
外壁・屋根・雨樋点検の様子
システムキッチン内部のプチ修繕の様子
一方、今回の1年点検では水回りのキッチンでプチ修繕が行われました。この住まいのキッチンはメーカー既成品のシステムキッチンなのですが、引出し内に付いているキッチン用品を収納するためのケースが両面テープのみで付いており竣工後に数回取れてしまっていました。今回の点検時間内で工務店様の現場監督さんが、補強でビス止めして下さいました。システムキッチン内部の不備修繕は工務店様の仕事では無いと言えますが、出来る作業を自然に進めて下さったのです。
アフターメンテナンスとしての1年点検。今回は朝9時からスタートしお昼過ぎまで3時間ほど掛けて行われ、目立った不備は無いことが確認できました。一方で何より、住まいご家族の安心と信頼が得られるよう、工務店様がどのような段取りや気配りをされているか、とても身近に感じることが出来ました。これから住まいづくりをされる方は、是非信頼関係が築ける作り手に出会って欲しい。そのための出会いやサポートを、家づくりをされるご家族と一緒に考えていくことも、建築家にとって大切な設計活動の一部であると思っています。 @個人住宅『2つのテラスをもつ家』
『2つのテラスをもつ家』外観正面
『2つのテラスをもつ家』リビング
『2つのテラスをもつ家』眺望テラス
『2つのテラスをもつ家』物干しテラス
『2つのテラスをもつ家』 建築概要
リビングの延長として、隣りに住むご両親の住まいと行き来できる眺望テラス。共稼ぎご夫婦の家事をサポートできるよう水廻りと繋がる物干しテラス。2つのテラスをご家族のとっておきスペースとし、屋内外の繋がりを大切にした住まいです。リビング壁面7.5mのジャンボ書棚など、ご家族が楽しみながら収納したり飾ったりできる、オリジナル造作家具を各所に配置することで、暮らし方の幅を広げています。※本件はBELS評価(建築物エネルギー性能表示制度)5星を取得。約5KWの太陽光発電パネルを搭載したZEH住宅(ゼロ・エネルギー・ハウス)です。
□ 場所:横浜市戸塚区
□ 用途:個人住宅(夫婦+子供3人)
□ 構造:木造2階建て
□ 敷地面積:167.48㎡(50.66坪)
□ 建築面積:77.17㎡(24.53坪)
□ 延床面積:119.99㎡(36.29坪)
□ ZEH住宅(BELS評価5星取得)
□ 長期優良住宅
□ 断熱性能:UA値0.41 等級4
□ 気密性能:C値0.3(気密試験を実施)
□ 耐震性能:許容応力度計算 等級3
□ 施工 :株式会社 中山建設
□ 設計監理:古川都市建築計画 古川達也
□ 構造設計:宮崎構造設計事務所