オンライン読書会 シーズン1 第1回報告
こんにちは。
オンライン読書会 シーズン1 第1回(2022年11月7日)の報告をします。
メンターは、高萩智也さん、26歳、慶應義塾大学 文学研究科 哲学・倫理学専攻 後期博士課程。
テキストは、デカルト『方法序説』第5部・第6部(谷川多佳子訳、岩波文庫)。
著者のルネ・デカルト(1596-1650)はフランス生まれの哲学者です。
まずは参加者の感想から紹介します。
・世界史選択ではないのでデカルトという人を知らなかったけれど、凄い人だとわかった!
・私は世界史選択なので知識はあったけれど、デカルトの頃は中世から近代へ移り変わる時期だった、ということがよくわかった!
・デカルトは哲学者だと思っていたが、数学や科学も研究していた人だとわかった!
・デカルトさん、言い訳を二つも用意しているの、かわいいし頭良いなと思った!
(※言い訳が何か、あとで説明します)
・まだ学年的に分からないことも多くありましたが、面白かったです!
という感じに、みなさんそれぞれに楽しんだようです。
管理人は、その頃の哲学者は哲学専業ではなくて、ヨーロッパ一、中国に詳しい人や外科医、レンズ磨きをしている人もいた、ということにビックリしました!
以下、振り返りです。
① P80 L1~P81 L1 なぜデカルトは『方法序説』を書いたのか?
当時の常識は、宇宙の中心は地球だとする天動説でしたが、16世紀にコペルニクスが「宇宙の中心は太陽であり、地球はほかの惑星とともに太陽の周りを自転しながら公転している」という地動説を唱えました。
17世紀に入って、この地動説に賛同したガリレオ・ガリレイが宗教裁判(異端審問)で有罪宣告を受け、その後軟禁生活を送ります。
ガリレイは裁判の後、「それでも地球は動いている」とつぶやいたというエピソードで有名ですね。
デカルトはガリレイの身に起こった出来事を聞いて、すでに書き上げていた『世界論』の出版を断念します。『世界論』は地動説を承認していたからです。
② P83 L10~P84 L4 『方法序説』はどんな本か?
しかしデカルトの著書を待ち望む声があったため、著者名なしで出版します。
その正式タイトルはとても長くて、『理性を正しく導き、学問において真理を探究するための方法の話(方法序説)。加えて、その試みである屈折光学、気象学、幾何学。』と言います。
『方法序説』は、この500ページを超える分厚い本の序文でした。
そこで書かれていることは、要するに「ボクはこんなふうに物事を考えてるんだ、こんなふうに住む場所や暮らし方を決めているんだ」。
今風に言えば、『方法序説』はライフハック本だったのですね。
もうひとつの特徴として、『方法序説』はフランス語で書かれています。
当時、本はたいていラテン語で書かれましたが、ラテン語を知らないことの多い女性や普通の人でも読めるように、フランス語で書いたわけです。
③ P57 L1~P58 L9 デカルト(の時代の人々)はどのようなものの見方をしていたか
デカルトはカトリック教会から「異端だ」と言われないように、慎重に筆を運びます。
とにかく、キリスト教と矛盾しないように世界を説明しようとするのです。
もちろん、デカルト自身もカトリック教徒ですから、自分の信仰に抵触することは考えないし、書かないでしょう。
そのせいもあって、現代人にはわかりにくかったり、まどろっこしかったりする記述が、正直あります。
ここで、デカルトや当時の人々はどのようなものの見方をしていたか、おさらいしておきましょう(④を読む際の用語集でもあります)。
・神は完全、世界の創造主
・すべての事物は、神に由来する形相(本性)と、質料(物質)との合成物
・人間は神の似姿(人格、理性、精神をもつ)であり、神に由来する魂(理性的魂)と、肉体との合成物、したがって「人間は自然の主人にして所有者」(P82 L12)
④ P61 L1~P64 L9 デカルトの世界観
デカルトは『世界論』で書こうとしたことを簡単に述べていきます。
天体、地球、水、光、火、ガラス、動物、人間、心臓、動脈……400年前の偉い人の文章とは思えないほど、身近な印象があります。
デカルトは、「キリスト教に矛盾していませんよ」と言い訳しながら「神が創造した世界」(地球)について記述しているのですが、それでもキリスト教に反していると指摘された場合に備えて、「これは地球のことではありませんよ、地球によく似た別の世界のお話です」とも言っています(これが、参加者が言っていた「二つの言い訳」です)。