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足関節捻挫に対する鍼灸治療

2018.03.21 12:48

患者 弟。

主訴 右足関節捻挫。

現病歴 昨日歩行中にグニャッとやってしまった。テーピングをしてそのまま過ごしたが今日になって歩けないほど腫れて痛い。

先ず鎮痛のため応急処置。

八卦皮内鍼法を施す。

最圧痛点をに印をつけ、上下左右斜めの八方向から皮内鍼を仮止めし、最も痛みが和らぐ方向から止め固定。

その上から知熱灸3壮。

→痛みが和らぎ足が動かせるようになる。

次いで宮脇奇経治療。

通常であれば奇経腹診で奇経パターンを決めるが、急性のものは病症で決める場合があります。

足首を動かさせて患部の流注から変動経絡を割り出す。

足首の内側~内踝~アキレス腱が特に痛むので肝経か腎経である。

太衝-通里と照海-列缺にテスターを貼って痛みの度合いを比べると照海-列缺の方が和らぐので照海に金粒、列缺に銀粒を貼付しその上から主穴に5壮、従穴に3壮知熱灸。

→さらに痛みが和らぐ。

次いで子午治療。

患部の変動経絡が腎経と特定できたので子午陰陽関係に当たる反対側の左大腸経を切経すると偏歴が外虚内実になっているので、古代鍼を接触して補い、刺鍼後金粒を貼付してその上から知熱灸5壮。

→さらに痛みがひく。

ようやく落ち着いたので診察診断。

経絡腹診 肺虚、脾虚、心実、肝実、腎平。

脉状診 沈・数・虚やや堅。

比較脉診 肺虚、脾虚、心実、肝実、腎平。

証決定 肺虚肝実証。

適応側 右足関節捻挫で病症に偏りがあるため健康側の左側を適応側とする。

本治法 銀鍼1寸3分一番鍼にて左太淵に補法→検脉→肺の脉が充実して脉が締まる。母経の脾がまだ虚しているので左太白を補う→検脉→脾の脉が充実してさらに脉が締まる。相剋する心肝の実が治まる。陽経を診ると右関上浮かして胃の脉位に虚性の邪を触れるので、患側の右胃経を切経して最も邪の客している上巨虚から枯に応ずる補中の瀉法→検脉→邪が取れて寸関尺が整ったので治療を終える。

足関節捻挫の病因病理

確かに外傷ですが、その背景には怒傷肝という病因病理が存在します。

負傷前に何らかの過度の感情の起伏があります。

多くは怒りです。

怒は陽の感情で肝に影響を及ぼします。

肝火となって上に昇ります。

いわゆる鶏冠に上るとか怒髪天とかいうやつです。

気が上に集中するので足元が疎かになり捻挫してしまうのです。

嘘のようなホントの話です。

肝火が肝陰を焼き払えば肝虚証になり、肝火が実に転じれば肺虚肝実証か脾虚肝実証になります。

捻挫は肝の変動ですが、経絡治療学では虚実を弁えて補瀉調整します。

急性症は対症療法(経絡治療家でいう標治法や補助療法)が大切です。

八卦皮内鍼法、宮脇奇経治療、子午治療は抜群の消炎鎮痛効果を発揮します。

そして本治法で気血を整えることで生命力(自然治癒力・免疫力)が強化され経過が良くなります。

夢分翁も三つの清ましで戒めているように、怒るとロクなことがありません。

分かっててもやってしまうのが人間の業でありそれを肯定するのが臨床ですが、気をつけるにこしたことはありません。