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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

ロマン派の時代54-ブラームスの失恋

2022.11.11 09:06

1869年、シューマン夫妻の次女ユーリエがイタリア貴族と結婚(夫は再婚)することになった。外国の年配と結婚させることの不安を彼女は親友ブラームスに手紙を書いた。しかし実はブラームスは、ユーリエに恋をしていたようだ。ユーリエはクララにそっくりだったのだ。

ブラームスがユーリエに会ったのは61年の16歳ブラームス28歳、このとき彼は「シューマンの主題による変奏曲Op23」をユーリエに献呈している。この「シューマンの主題」というのはシューマン自身が「天使が歌ってくれた」と言っているもの、とすればまあ「私の天使」と言ってるようなものだ。

しょっちゅう手紙を交換しているくせに、奥手でシャイなブラームスはユーリエへの愛をクララに言い出せなかった。クララへの感情も続いていて自分の居るウィーンに来てくれとしょっちゅう言っている。ブラームスの音楽は理知的な面とロマンチックな面とが同居している。

ブラームスは、ユーリエが結婚した直後「アルト・ラプソディOp53」を作曲した。そしてあからさまに「この曲はシューマン伯爵夫人のために書いたんだ、憤懣やるかたない怒りをもって」と出版社に手紙してる。歌詞はゲーテの「冬のハルツの旅」から取られて、旅人の孤独と癒しの希望が身にしみる。