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Grandia

夏に憂う

2022.11.11 23:40

HP/ネビルと夢主

「シャオリン」

聖マンゴは壁も床も真っ白なのに廊下はいつも暗い。暗くて閉鎖的で息が詰まりそうだ。彼女に出会うまではずっとそう思っていた。永遠に続きそうな白い廊下の途中にある待合室のソファで、彼女はうとうとと船を漕いでいた。手にはマグカップ。中身がまだ残っていたら危ないだろうと思って彼女の手からそれを奪い取る。サイドテーブルにマグカップを置いて眠る彼女に目を向けた。どうやら彼女は疲れているようで、目の下にクマはあったし肩を揺らしても目を覚ます気配すらなかった。周囲に誰もいないことを確認してから僕は彼女の隣に腰掛け、安定しない彼女に肩を貸す。やっと枕を得て安定したようだ。無意識なのか僕の肩に顔を埋めて気持ち良さげに眠る彼女の姿にホッとした。夏休暇ももうすぐ終わる。もう少ししたらホグワーツに戻らなくてはならない。新学期を迎えて忙しい日々が始まるはずだ。ホグワーツは好きだし、友人たちと再会できるのは嬉しいことだ。勉強も苦手で嫌だったけど、最近は薬草学が楽しくなってきた。ただ、スネイプ先生とまた会わなければならないことだけが嫌だった。そして休暇の間だけ気兼ねなく話せるシャオリンと話せなくなるのが嫌だった。もちろん彼女はホグワーツに居る時だって僕が一人の時を見計らって度々話しかけてくれるけれど、休暇中に比べたら接する機会が減るのは事実だ。そういえばもうすぐ夏休暇が終わるという話を昨日彼女としたのだった。レイブンクローは偏屈が多いから面倒だと彼女が言っていたのを思い出す。その時は思わず吹き出した僕を「ネビルったら。笑いごとじゃないのよ」と彼女が睨むだけで話が終わったが、ふと考えてみる。グリフィンドールの皆はどうだろうか?ふざけたり喧嘩をすることはあっても大抵みんな親切で良い人だ。僕が困っていたら助けてくれるし、スリザリンの連中に馬鹿にされたら自分のことのように怒ってくれる。レイブンクローの人付き合いが僕にはよく分からないけれどシャオリンにとってはグリフィンドールの方が理想なんだろうか?

「グリフィンドールだったら良かったのに」

無意識に開いたままだった口から出た言葉に自分で驚く。でも、彼女がグリフィンドールなら今以上にもっと話す時間が増えるだろうし、彼女が人間関係に悩むことはない。ただ、あんまり僕が彼女と親しくしていたら冷やかされるかもしれないと思って少しだけ顔に熱が上る。だけど、シャオリンなら冷やかされても上手く切り替えせるのだろう。彼女は賢くて弁が立つ。読書も好きだしハーマイオニーとも気が合うかも。グリフィンドールに居るシャオリンを考えてみると楽しくなってきた。グリフィンドールの女子たちと歓談する彼女の横顔は心なしかいつもより明るく思える。

「ん…」

急に耳元で聞こえた彼女の声に驚いて視線を向ける。しかし彼女はまだ目を閉じたままで、また寝息を立て始めた。安心して胸を撫で下ろす。新学期はいつも待ち遠しいけれど、少し寂しい。彼女と過ごす何気ない日々が少なくなってしまうから。こんなことを考えているのは僕だけなのかな。そうじゃないといいのに。そう思いながら僕は残り少ない休暇を思い、目を閉じた。少しでも居心地の良いこの時間を長く感じたかった。