日米で株安円高が進行、対中関税を嫌気:識者はこうみる
日米で株安円高が進行、対中関税を嫌気:識者はこうみる
REUTERS トップニュース2018年3月23日 / 08:41 / 1時間前更新
[ニューヨーク/東京 23日 ロイター] - トランプ米大統領が22日、最大600億ドル(約6.3兆円)規模の中国製品に対し関税を課すことを目指す大統領覚書に署名したことを受け、日米金融市場で貿易戦争勃発による世界景気減速懸念からリスク回避が加速し、大幅な株安・円高が進行した。
ドル/円JPY=は2016年11月以来となる1ドル104円台に下落。米国株式市場は2%強値下がりし、主要3指数の下落率が1日では6週間ぶりの大きさを記録。23日の東京市場でも日経平均株価の下げ幅が一時800円を超え、2万0700円台まで下げた。
市場関係者の見方は以下の通り。
●米国発の通商摩擦が長引く恐れ、ドル安方向に潮目変化
<FXプライムbyGMO 常務取締役 上田眞理人氏>
今朝のドル/円は2016年の米大統領選以来初めて105円を下回った。心理的節目を下回った後は勢いよく戻るのが通常のパターンだが、今回はそういう流れになっていないことから判断して、ドル安/円高方向に潮目が変わったとみている。
米中貿易戦争に対する懸念が広がっているが、米国は中国のみならず世界を相手に保護貿易主義を貫く意向であり、米国発の通商摩擦は長引く可能性が高い。
米国の保護貿易主義によってグローバル経済が停滞するのは間違いない。トランプ氏が唯一成果をあげた米税制改革(減税)の景気押し上げ効果も、グローバル経済の停滞によって相殺されるだろう。
また、政治面では米国と北朝鮮の対話が期待されていたが、そこで重要な役割を担う中国と米国が通商面で衝突していれば、対話の進展も危ぶまれる。
こうした通商面、政治面のリスクは、金融市場のリスク回避行動を強め、株が一段と売られ債券が買われる展開となるだろう。
世界の投資家にドルが敬遠されるなか、ドル離れした資金の行き先はまずユーロやポンドとなるが、リスク回避の円買いも続くとみている。レベル感ではとりあえず103円が下値めどとなるが、トランプラリーの全てがはげ落ちるとすれば、101円前半までドル安が進んでもおかしくない。今年上半期のレンジは100―108円と予想する。
●貿易関連材料、市場は極めて敏感に
<エンパイア・エクセキューションズ(ニューヨーク)社長、ピーター・コスタ氏>
市場は貿易関連の材料に極めて敏感になっている。貿易戦争に勝者はいないことから、市場はそれ(トランプ米大統領による対中関税措置への署名)にやや驚き、嫌気した。神経質になる材料には事欠かないが、前向きな気分にさせられる決算シーズンも終わり、現在は好材料が少ない。
●しばらくは調整続く
<アムンディ・パイオニア・アセット・マネジメント(ボストン)のポートフォリオ・マネジャー、ジョン・キャリー氏>
足元の市場心理は過度に弱気だ。ハイテク分野では、オラクルの失望を誘う決算やフェイスブックの問題がある。
さらに、世界貿易では関税への懸念がある。投資家にとり、あまりにも不透明要素が多すぎる。
米連邦準備理事会(FRB)は経済見通しをやや下方修正した。経済成長については「堅調(solid)」から「緩やか(moderate)」という表現に変更した。
一方、これまで通り利上げ継続は表明しており、そのためFRBが経済成長や潜在的な経済成長をどのように捉えているかを巡り若干疑問が生じた。
しばらくの間は調整局面となる可能性がある。安心感を与える材料は見当たらない。今後数週間に発表される企業決算が予想よりも良好な内容となれば、不透明感が払しょくされるだろう。
●不均衡解決、長期的にはポジティブ
<ワシントン・クロッシング・アドバイザーズ(ニュージャージー州)のシニアポートフォリオ・マネジャー、ケビン・キャロン氏>
これ(トランプ米大統領による対中関税署名)が見せかけの行動で、実行に至らないならば、懸念は解消されるだろう。一方で、中国による報復措置がとられ、対立が深まれば、貿易や資本フローが阻害され、短期的に株式市場にネガティブとなるだろう。
長期的にみれば、世界的な不均衡を解決するのにポジティブな動きとなる可能性もある。ある国が他国に対して多額の赤字、もしくは黒字を長期にわたって抱えているのは正常ではない。これが米中関係であり、持続可能な関係ではない。