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ドアを叩くのは

2018.03.23 10:18

俺以外の家族が二泊三日の旅行に行ってしまった。 家は結構広い二階建ての一戸建てで、昔からあるものを親父が買って家族で住んでいた。 

この家には一階と二階にトイレがそれぞれ一つずつあった。 俺の部屋は二階にあるから、俺はいつも二階のトイレを使っていた。 その日は学校の特別補習があって、家に帰るのが遅くなってしまった。 学校を出たのが七時半ぐらい。家に着くのはいつもだいたい八時ぐらい。 遅くなっても今日と明日は俺一人だし、立ち読みでもして帰るかな・・・ などと考えながら道を走っていると、急に腹が痛くなった。 これはヤバイ!!もうあと少しで出る!! と思いながら自転車を全速力で走らせるが、この辺りには公園もコンビニもない。 野糞なんて絶対イヤだったので、腹の痛みに耐えながら家を目指した。 全速力で飛ばしたのですぐに家に着いた。


家に着くなり一階のトイレに入り、カギをかけて用を足そうと便座に座ると、 「ドンドン!!」「ドンドン!!」と、ものすごい勢いで扉が叩かれた。 驚いた俺は用を足すのも忘れ、しばらく「ドンドン!!」というドアが叩かれる音を聞いていた。 (なぜか恐怖心はなかった。一瞬驚いただけ) 

全然ドアを叩く音は止まないので、呆然として音を聞いていると、急に音が止み、 ものすごいでかい声でいきなり叫び声がした。 「〇×△□#$★▽~!!」 

なにを言っているのかは全然聞き取れなかった。 しかし、その言葉を聞いた瞬間、なぜかものすごい恐怖に襲われた。 そして、ドアを叩く音再開。 

俺は頭を抑え、ガタガタ震えながら音が止むのを待った。 頭の中では、なぜかお経や神頼みの言葉ではなく、 『ここは俺が使っていますから、どうか二階のトイレに行ってください!!』と祈っていた。 


そうすると俺の祈りが通じたのか、音が止み階段を駆け上る音が。 俺は音が止んだ後もしばらくトイレの中にいた。 腹の痛みも便意もすでに消えていた。しばらくして気持ちも落ち着いてきたので、とりあえずトイレから出ることに。 そして、そのままなにも持たず家を出て、友人の家に行った。 

事情を話したら、友人は今晩泊めてくれるとの事。 でも、明日から友人一家は出かけるので、明日は家に帰らなければならない。 そして次の日、俺は友人に礼を言い家に帰る・・・予定であったが、 いざとなると勇気が出ず、しばらくファミレスに行ったり、本屋で立ち読みしたりした。 しかし、明日はまた補習があるので、家にはどうしても帰らなければならない。 

意を決した俺は、家に帰ることにした。 


まだ昼の三時ぐらいだったので周囲は明るかった。 家に入ってまず目についたものは、無造作に投げ捨てられたバック。 しかし、明日の補習に必要な物は二階の俺の部屋にある。 しばらくその場に座り込み考えたが、結局二階に上がることにした。 そして、二階に上がろうと階段に足をかけた瞬間、急に腹に痛みが!!それも昨日の比じゃない。 

『もう出る!!もれる!!』と思い、すぐに一階のトイレへ。 しかし、なぜかカギが掛かっていて開かない。俺は全力で扉を叩き続けた。しかし扉は開かない。 「あけてくれ~!!」と、誰が中に入ってるわけでもないのに大声もあげた。そしてまた扉を叩きはじめた。 その瞬間気づいた。

「これって昨日と同じじゃないか」と。 


「じゃあ、昨日扉を叩いていたのは俺!?」 わけが分からないまま、とりあえず二階のトイレへ・・・行こうとしたが、すごく嫌な予感がしたのでお隣の家へ。 お隣の人は俺の表情を見るなり、「どうしたの!?」と聞いてきた。 とりあえず俺は「トイレ貸して下さい!!」と言い、トイレを貸してもらった。 

トイレから出るとお隣さんは困惑した様子だったが、 俺が「なんでもありません・・・」と言うと、それ以上は聞かなかった。 結局その日はファミレスで夜をすごした。 

次の日、家の前で家族の帰りを待ち、事情を話したが、誰も信じてくれなかった。