ムヒョとロージーの魔法律相談事務所 続編連載開始とアニメ化が決定
via https://www.cinematoday.jp/news/N0099340
週刊少年ジャンプで連載されていた西 義之先生の「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」。
連載終了から10年のときを経てリブート。誌面での最終回の続編として「ジャンプ+」では「魔属魔具師編」の連載が開始され今夏はアニメがスタートする。連載終了から10年経った作品としては異例である。
本編のクライマックス「禁書編」が終わってからというもの、急激な失速感は否めなかった。なので最終回も西先生はきっと志半ばといった具合が誌面から伝わってきたのを覚えている。しかし、この漫画は名作である。天才魔法律家 六氷透(むひょうとおる)通称ムヒョと助手の草野次郎(くさのじろう)ことロージーが、“この世のモノでない者”に魔法律という特殊な力で立ち向かう。つまり「地獄先生ぬ〜べ〜」(僕が漫画にハマったきっかけはぬ〜べ〜)のように悪霊や怨霊と対峙するのだ。「ムヒョロジ」デザインの霊の恐さといったらもう。不意に夜思い出すと普通に恐い。見た目から恐いホラー漫画にはない、根源的な恐さが西先生のデザインと絵柄にはある。コマ割や演出もうまいんだよな。恐さをいっそう引き立てるというか。
西先生の描く、“恐怖”
僕の実体験のエピソードをまじえて話しをすると“みえるひと”(岩代俊明先生の漫画であったよね。岩代先生の描くSFサイキックバトル漫画PSYREN-サイレン-も好きだったな)が知人にいる。僕は霊感も何もないし見えたことはないんだけれど。その知人に、今まで“みえたモノ”の中でいちばん恐かったモノってどんなん?って聞いたことがある。“それ”はとても説明のつかないかたちをしていたそうだ。「この世のモノとは思えない」という表現を地でいく、“異形”の存在。本当かどうかは僕には分からないけれど、知人は顔を真っ青にしながら話しをしてくれた。どうしてそんなかたちになって現れたのか? 人の想像力を掻き立てる恐怖。胸の奥にこびりつくモヤモヤ感。不安。そういう恐さが「ムヒョロジ」にはある。
via iTunes
「魔法律」が救うもの
「ムヒョロジ」の大きな見所。それはムヒョの使う強力な魔法律だ。魔法律家には位があり、その頂点に立つのが「執行人」である。地獄からさまざまな「使者」を呼び出し、魔法律のもとに法を執行するのが役目だ。執行人になるのは魔法律業界において、めちゃくちゃ大変な選ばれし職業なのだが、ムヒョは天才なので通常の執行人よりも数倍強力な魔法律をポンポン繰り出す。(いちおう、いろいろな条件や制約はあるけれど火力がケタ違いなのだ)魔法律はRPGでいえば召喚魔法。ムヒョレベルになると冥王や蠅王を指す地獄の六王、三賢者、十本刀など、契約を結び使役する使者の「格」が別次元なのである。それぞれ「使者」のデザインと、霊に対する罪状と刑罰を読み上げる「魔法律」の演出がめちゃくちゃカッコイイ。使者を通じて、地獄の力関係や社会性をムヒョの魔法律からのぞくことができるのもポイントだ。
via iTunes 魔法律家同士のイレギュラーな戦いで、相手がよびだした巨大な雷獄童子(らいごくどうじ)を、ムヒョが呼び出した地獄の三賢者の一人、幽李(ゆうり)がいなす。このシーンで「幽李」の圧倒的な強さがみてとれる
via iTunes
via iTunes 使者とは独自の言語を使用してやりとりする
さて、冒頭「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」は悪霊や怨霊と対峙すると書いたが、対立構造はもっと複雑だったりする。悪霊を生み出すのは人の心の在り方だ。心が壊れてしまったとき、憎しみにとらわれてしまったとき、魂は悪霊へと姿を変え、顕れる。憎しみの連鎖。つまるところ、この作品でムヒョとロージーは人間の根源的な憎しみや恐怖と対峙しているのだ。魔法律とは人の心を救い、守るための法律なのである。
現在、西先生はよりファンタジーRPG要素の強い作品「ライカンスロープ冒険保険」を連載中。加えてジャンプ+でムヒョロジ新作が連載スタート。名実ともに“復活”を遂げる傑作をぜひ読んでみてほしい。アロエリ。
via ジャンプ+特設ページ
via ジャンプ+特設ページ