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人差し指

2018.03.23 10:51

 凪と花音と街中を歩いていると、

「開ちゃん。ほら、見てよ。あの人ちょっとヤバイ系かもしれないよ?」

 と、親指で指し示した。

 振り返って俺も見たが、本当にガラが悪い。

 ロックをこじらせて失敗したヤンキーみたいになっている。

 その通行人のお兄さんには聞こえないように、俺は小声で花音を注意した。

「おい、そうやって指差しするなよ」

 花音はぺろっと舌を出して、自分の頭をこつんと叩いた。

「そうだったね。間違えちゃった」

「間違えたってなぁ……。次から気をつけろよ」

「うん。わかったよ」

 今度は凪が、さっきのガラの悪いお兄さんを指差す。

「あの人、作哉くんの友達かな? ヤクザみたいだ」

「こらっ! さっき花音に注意したばかりだろ?」

 しかし凪は悪びれもせずに言った。

「親指じゃなくて、ちゃんと人差し指にしたでしょ。人を指すのは」

 揚げ足取りみたいなこと言いやがって。

 俺はジト目で凪を見て、改めて注意した。

「そもそも、人を指差しちゃいけないって話だよ」

 だが、凪はまだ納得を示さず、ビルにある大型モニターを指差した。

「あれは?」

 そこには、最近人気急上昇中の若手イケメン俳優のCMが映っていた。

『キミに、届け!』

 と、商品を片手に、画面の向こう側に指差した。

 すると、道にいた女性たちの黄色い声が聞こえた。

「キャー」

「ステキー」

 花音がモニターから目を離さず、

「なるほどー。確かに、これは指差されたい人のほうが多いかも」

 俺は凪にぽつりと言う。

「何事にも例外はあるんだよ」

「じゃあ、あれは?」

 また揚げ足取りか?

 凪がまたモニターを指差すので、俺も見上げると、そこにはドラマのワンシーンが映っていた。

『犯人は、おまえだ!』

 そう言って、探偵役の俳優さんが犯人を、ビシッと指差した。

 凪が俺を横目に見て、

「キミだっていつもしてるじゃないか」

 花音は苦い顔でぼやく。

「あれはされたくないねぇ」

 そして、俺はため息交じりにつぶやいた。

「ああ、気をつけるよ」