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とある冒険者の手記

A.寝癖

2021.11.28 02:18

アパルトメントで一緒に住み始めた翌日、アリスが目を覚ますと既にヘリオが起きており、朝食を作っていた。


「あ、おはようございますヘリオさん」

「おはよう」

「起きるの早いですね」

「あぁ、今日は予定が詰まってるからな」


答えながら料理をしているヘリオに近づくと、あることに気がついた。

ヘリオの髪に所々寝癖が着いていた。

普段のイメージから、キッチリしてそうな彼に寝癖を見つけ、なんだか可愛いとすら思ってしまう。


「ヘリオさん、寝癖が着いてますよ?」


そう言うと、ヘリオは「そうか」とだけ答え直そうとすらしない。


「直さないんですか?」

「どうせ戦ってる間にボサボサになるんだ、問題ないだろ」


意外な適当さ加減に、内心驚くアリス。

ひょっとしたら、今まで気が付かなかっただけで、実は寝癖だらけだったのかもしれない。


「いや、身だしなみはちゃんとしましょうよ。あ、良かったら俺、直しますよ!」


そう申し出ると、ヘリオはそんなもんなのかと言った感じで、朝食後にアリスが寝癖を直した。

それからは、毎朝アリスがヘリオの髪の毛をセットするようになったのだが、一緒に住み続けていて気がついたことは、ヘリオの寝起きの髪が物凄くボサボサな事だった。

サラサラで猫っ毛な髪は、どうやら爆発しやすいらしい。

それを、一人の時は手櫛で適当に整えていたと言うのだから驚きだ。

そういえば、義姉であるガウラも髪の毛に寝癖があることが多い気がする。

なんて思っている時、街中でガウラとばったり出会った。


「ガウラさん!お久しぶりです!」

「おー!アリス!元気してるかい?」


他愛のないやり取りをしながら、ふとガウラの髪の毛に目をやると、細かく毛先がピョンピョンはねていた。


「ガウラさん、寝癖が…」

「あー、いつもの事だよ」

「いつも?!」

「どうせ冒険してれば、すぐにボサボサになるからな」


流石双子と言うべきか、ヘリオと同じ様な事を言い出すガウラに、アリスは唖然としていた。


「そういえば、最近ヘリオの寝癖を見なくなったな」

「俺が直してるんです。身だしなみは大事ですから」

「なるほどね」

「ガウラさんも、寝癖は直した方がいいですよ?」

「えー、面倒臭い…」

「面倒臭いって……」


心底面倒臭そうなガウラに、呆れた表情のアリスだった。



************



すっかり習慣となった朝の寝癖直し。

アリスはヘリオの髪を整えながら昔を思い出していた。


「よし!寝癖直ったよ!」

「あぁ、ありがとう」


ヘリオは礼を言い、出かける準備を始める。

アリスも今日は依頼がある為、準備を始めた。


「今日は姉さんと仕事だったか?」

「うん!義姉さんと仕事すると、学べるものが多いから助かるよ」


そんな会話をし、行ってらっしゃいのキスを一方的にヘリオにすると、2人は別々に歩き始めた。

そして、アリスはガウラとの待ち合わせ場所に着くと、既に相手は到着していた。


「義姉さん!おはようございます!」

「おはようアリス。時間ピッタリだな」


挨拶をして、ふと今朝のことを思い出し、何となく彼女の髪を見た。

寝癖がない。

そういえば、最近は髪の毛が綺麗に纏まっている気がする。


「そういえば、義姉さん最近寝癖見なくなりましたね?」


そう言うと、ガウラはキョトンとした表情をする。


「いつもはどこかしら跳ねてたから」

「あー、それな。ヴァルだよ。身だしなみはきちんとしろって五月蝿くてね。気にせず放っておいたらヘアセットしてくれるようになってな…って、母さんの家の建築祝いの時に話したろ」

「そういえばそうでした」


あはは、と笑うアリス。

直ぐにボサボサになるのに、とボヤいているガウラ。


「でも、ヴァルさんの言う通り、身だしなみは大事ですよ!」

「えー」

「寝癖がないだけで、義姉さんの魅力が大幅アップです!」

「は?寝言は寝て言え!」

「痛っ!」


素直な気持ちを言ったアリスの脇腹に、ガウラは肘で小突く。


「本当のこと言っただけなのに…」

「私に魅力なんてあるもんかい!」

「何言ってるんですか!同じ顔のヘリオがあれだけ魅力あるんですから、義姉さんだってあるに決まってます!」

「はいはい!惚気をどうも!ほら、さっさと依頼こなしにいくぞ!」

「あ!待ってください!」


呆れながらも顔を赤くしたガウラは、それを誤魔化すように先を行き、アリスはそれを慌てて追いかけたのだった。