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とある冒険者の手記

Another 第八霊災

2022.11.13 17:37

ギムリトダークで、エオルゼア連合軍と帝国軍の激しい戦闘が繰り広げられていた。

英雄の到着に兵の士気は上がり、帝国軍の勢いを殺し、戦況は連合軍が優勢。

その中に、不滅隊員に扮したヴァルの姿があった。

戦場で英雄ガウラの姿を見つけ、さりげなく近くで戦い、彼女の死角から襲ってくる帝国兵を始末していた。

そして、勝利目前という時に、伝令が届いた。


「帝国軍が放った兵器にて、前衛が壊滅しました!」


思わず耳を疑う。

しかも、その兵器が投下されてから、次々に人が倒れていっていると言うことだった。

ヴァルは前衛がいた方向を見ると、光のエーテルのモヤが徐々に迫ってきているのが分かった。

光のエーテルは停滞の力を持つ。

これに飲まれれば即死する。

それを判断した瞬間、近くにいたガウラの腕を掴み駆け出していた。


「お、おいっ!突然なんだ!?離せ!」

「あの兵器はヤバイ!食らったら即死だ!」

「えっ?!」


ヴァルは演技をする余裕もなく、素でガウラに言い放つ。


「あれは光のエーテルを使った兵器だ!ゆっくりではあるが、こちらに迫ってきている!」

「待て!他の連中を置いては行けないっ!!」

「バカを言うな!残ったところで何も出来ない!無駄死にをするだけだっ!!」


切羽詰まった物言いに、ガウラは相手の言うことが嘘ではないと直感した。


「お前に死なれたら、あたいは何の為に生きてきたか分からない!お前はあたいの希望なんだ!!」


その言葉に、ガウラは違和感を感じた。

エオルゼアの英雄、光の戦士と言われてきた自分に、“エオルゼアの希望“ではなく、個人の希望と言われたのが不思議だった。

いったい、この不滅隊員は何者なのか。

だが、自分を必死に逃がそうとしている姿に何故か抵抗する気も起きず、手を引かれるまま走った。

そして、どのぐらい戦場を走り続けただろうか?

どんなに鍛えられた人間でも体力の限界は来る。

2人は足をもつれさせ、地面に転がった。

体を起こす体力も底を尽きた。

それでも、迫り来る脅威は未だに消えていない。

ヴァルは、息を切らせながらガウラに言った。


「まだ、動けるか?動けるなら、お前だけでも逃げてくれ」


ヴァルの言葉に、ガウラもまた、息を切らせながら言った。


「無理だ。さすがに私も限界だ」


それを聞いて、ヴァルは悔しさを隠せなかった。

ガウラはそんなヴァルを見て、疑問を口にした。


「なぁ、お前は何者だい?」


少しの沈黙。

どうせ、体力の回復は間に合わない。

それなら、全て話してしまおうと決めた。


「あたいは、お前が赤子の時から知っている。そして、お前を護る使命を持つ者だ」

「そうだったのか。じゃあ、今まで時々感じてた視線は、お前のものだったんだね」


納得したように答えるガウラ。

彼女も、この状況で助からないと分かっているようだった。


「護りきることが出来なくて、すまない…」

「いや、私の方こそ知らなかったとはいえ、巻き込んでしまって悪かった」


ガウラはそう言うと、ヴァルの方に顔を向けた。

その顔は穏やかだ。


「なぁ。名前を教えてくれないか?」


真っ直ぐ向けられた視線。

今まで望んでいても叶わなかった事が、こんな状況で叶うとは、なんて皮肉だろうか。

ヴァルも、ガウラを真っ直ぐ見つめて答えた。


「ヴァル。ヴァル·ブラック」

「そうか、ヴァルか…」


すると、ガウラはヴァルの手を握った。

突然のことにヴァルは驚いた。


「ヴァル。今まで護ってくれて、ありがとう」

「っ!?」


優しい笑顔でそう言われ、ヴァルは様々な感情が溢れ出そうになる。


「あたいも、ガウラには感謝してる」


そう、答えた瞬間だった。

光のエーテルが2人を飲み込んだ。

ヴァルは薄れゆく意識の中、最期の瞬間をガウラと共に居れた幸せを感じながら、永遠の眠りについたのだった。