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米国にハーブ旋風巻き起こした アンドリュー・ワイル博士の功績

2020.08.09 01:46

http://www.daiwa-pharm.com/info/world/2452/  より

 高額な医療費、面倒なケアシステム、そうした現代医学にためらいをみせるアメリカ国民が代わりに選んだ医療は…。代替療法(alternative medicine)と呼ばれるもう一つの医学、伝統伝承医療であった。中でも、日頃の食事による栄養療法は手軽な療法として予防医学の中軸となっているが、とくにハーブ・サプリメントを用いた療法は他の療法に比べ自己のペースで容易に行えることから人気が高い。そうしたハーブの効能をアメリカに知らしめ、90年代に入って一大ハーブ旋風をもたらしたのがアンドリュー・ワイル博士。アメリカで知らない人はいないとまで言われるハーブ療法の権威である博士の功績とハーブ療法の概要を報告する。

ワイル博士のHP、週に50万ヒット

2002年にハーバード大学が行った調査で、アメリカ人の35%が代替療法を利用しており、その割合はさらに増加の一途をたどっていることがわかった。 そして、昨年、NCCAMと疫病対策予防センター(CDC)が共同で、アメリカ国民の代替医療の利用率を調査したところ、ポピュラーな「祈りの療法」を含 めると アメリカの18歳以上の62%が何らかの代替医療を利用していることが明らかとなった。中でも、誰でも手軽に行える療法として人気が高いのがハーブ・サプ リメントを用いた栄養療法。このハーブの効用を米国に広く知らしめたハーブ療法の立役者がアンドリュー・ワイル博士である。

ワイル博士は1960年代にハーバード大学の生物学(植物)を卒業後、マリワナなどに代表される精神変容作用を持つ植物に関する研究に興味を抱く。 1968~1969年、サンフランシスコのMount Zion Hospitalでインターンシップを受けた後、National Institute of Mental Healthへ勤務、2年の契約も1年で辞職する。博士の述懐によると、マリワナとの係わり合いがネックになったという。ここから、現代医学への反発もあって、博士のハーブによる代替療法の探求が始まる。

ワイル博士はサウスダコタ州のインディアン居住区を訪ね、メディスンマンに付いてハーブ療法と儀式ヒーリングなどを学び、1971年に「The Natural Mind」を執筆、翌年上梓する。この処女作が後に大ベストセラーとなる。その後、「Spontaneous Healing」、「Eight Weeks to Optimum Health」、「Eating Well for Optimum Health」など縦続けに世に送り出すが、どれもベストセラーとなる。

ワイル博士の活躍は執筆活動だけにとどまらない。世界各地を巡り、薬草やヒーリング療法に関する情報を集め、ethnomycology(民族菌類 学)、ethnobotany(民族植物学)、ethnopharmacology(民族薬物学)などの分野に多大な貢献をしている。その一つにこんなエ ピソードがある。1995年、ジョージア州で幻覚キノコ、オオシビレタケの一種を発見。この業績に対し、その種にワイル博士の名前を命名 (psilocybe weilli)した。

また、そうした活動の傍ら、アリゾナ大学のヘルスサイエンスセンターにProgram in Integrative Meidicineを設立し、後人の指導にも精力的にあたる。PBSテレビではホストを務める番組を持ち、博士のホームページ、www.drweil.comは週に50万ヒットといった記録も。さらに、ニュースレター、「Andrew Weil’s Self Healing」を発行。購読者は45万人に達する。

肉体と精神の両面からアプローチし、患者の治癒力向上を図る

ワイル博士は、薬草、マインド&ボディ・ヘルス、インテグレイティブ医学分野で世界的に著名だが、博士が提唱する医療とはどのようなものか。かいつまんで言えば、代替療法と現代医学の良い部分のみを利用し、身体が本来持つ自然な治癒力を高めていこうというもの。単に、医者にハーブの処方を指導するだけではなく、通常の治療に鍼治療を加える、また通常治療の代わりに鍼を行うといったことも。

つまり、患者を肉体に精神を宿した一つの人格として見なし、患者と医師との関係を重視する。具合的に言うと、患者の食生活や運動、ストレス、睡眠、仕 事、ダイエタリーサプリメントやハーブの使用などを含めた個人の生活のあり方にまで広く目を配る。西洋医療による通常治療で効き目がない時や有害な影響を 及ぼすと判断される場合は、代替療法による効用を試す。

ワイル博士は様々なハーブの有効性を説いているが、例えば、うつ病対策のハーブとして、真っ先に挙げているのがセント・ジョンズ・ワート(注1)。 博士はProzacやZoloft、Paxilなどいわゆる向精神薬の効能を認めながらもそれらの重篤な副作用を指摘する。また、過剰投与によって感情が フラットになること、人格変化を懸念する。軽度から中程度のうつ病に対しては、運動や食生活、瞑想などのライフスタイルを取り入れることを提案し、セント ジョンズ・ワートなどのハーブやサプリメントも併用していくことを薦める。

他のハーブに関しても、博士のHPでカテゴリー分類している。ハーブを四季に分けて紹介し、例えば、冬の項には、カレンデュラ(キンセンカの一種)、エキナセア、ガーリック、パッションフラワー、セントジョンズ・ワートなど、それぞれの概要、用法、目的、用量などについて説明している。

(注1)セント・ジョンズ・ワート:西洋オトギリ草の別名を持つ。2000年に米国で抗HIV薬や避妊薬との併用で相互作用をもたらすことが報じられたが、同ハーブ単体での使用においては抗鬱症状の重度は難しいものの、軽・中度の症状改善には有用であるといわれている。