秋の文学散歩 軽井沢高原文庫訪問
晩秋の軽井沢へ文学散歩に出かけてきました。
今回の目的地は、塩沢湖のほとりの芸術・文学・自然を味わうことのできる総合施設軽井沢タリアセンの軽井沢高原文庫です。
軽井沢高原文庫は、軽井沢ゆかりの作家や文人の足跡を辿ることのできる文学施設です。
現在は「文学のふるさと・軽井沢 ― 朔太郎、犀星、龍之介、辰雄‥‥ ―」展が開催中です。
こちらの展示は、今年は詩人萩原朔太郎没後80年ということで全国規模で開催されている共同展示「朔太郎大全 2022」へ、軽井沢での朔太郎と室生犀星、芥川龍之介、堀辰雄らとの交流について展示されています。
敷地内には、文学碑や、文学者ゆかりの移築建造物があります。学芸員の方にお話を伺い、館の中からしか行けない堀辰雄の山荘を見学することができました。お話を伺っていなかったら見学しそびれるところでした。お知らせいただきありがとうございました。
今回の目的のもう一つは、道を挟んで反対側にある文学カフェ「一房の葡萄」でコーヒーをいただくことでした。冬季休業に入ってしまう前にぜひにと思い足を運びました。
カフェが入っているのは有島武郎の旧別邸「浄月庵」を移築した建物です。二階が展示室になっています。展示に使われていた調度品が軽井沢彫りなのが印象的でした。
訪れた日は戸外でも寒くなかったのでベランダの席にしました。木漏れ日がやわらかく美しく、塩沢湖の遠方には浅間山も見えました。バスで来る時は、山頂から裾野の紅葉まではっきりと見えていたのですが、すでに頂のあたりは雲がかかっていました。
さわやかな空気と静かな時間、美味しいコーヒーとまろやかな味わいのブルーベリージャム添えのレアチーズケーキに癒されました。
児童文学作家の安房直子さんが、軽井沢ゆかりの作家堀辰雄をお好きだったとのことで、その足跡を辿りたく思っていました。安房直子さんは私にとっては大学の文学部国文学科の大先輩に当たる方です。日本女子大の夏のセミナーハウスが軽井沢にあるので、もしかしたらあの辺りも歩かれたのかなと想像するのも楽しいです。
安房直子さんの物語の中で描かれる自然や生きものの多彩さ豊かさに、夏は軽井沢で過ごされたということも少なからぬ影響があるのではないかと思いました。
実際、軽井沢駅からバスで塩沢湖へ向かう途中、雄大な浅間山の姿に自然の美しさと迫りくる恐ろしさを感じましたし、東京とは違う高原の植生や空気感に、繊細な作家の感性が汲み取ったものが物語に散りばめられているように思いました。
軽井沢は都内から新幹線に乗れば意外に近いことがわかりましたので、折をみてまたふらりと訪れてみたいです。