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砕け散ったプライドを拾い集めて

ジーニアスは精霊である

2018.03.26 14:41

【こんな話】【wording】
  
 古代ギリシャでは創造の精霊を「ダイモーン」(daimon)……英語だと「デイモン」(demon)なので良からぬ部分もあるが……一応精霊である。古代ローマでは「ゲニウス」(genius)でこれは良き面のみで、ご存知英語の「ジーニアス(天才)」の語源になった。

その「創造の精霊:ジーニアス」が降りてきて、 素晴らしい芸術作品や文芸作品のアイディアを授けてくれると信じられており、 アーティストなんてものはそれを形にする役目を果たす存在で、 いわば“シャーマン”みたいな者だと考えられていた。

アーティスト達はみんな自分が本当に天才か 才能が有るかどうかという不安に苛まれる。 それは自分自身が「ジーニアス」であることに固執しすぎているからだ。下北半島のイタコになればいい。 

あくまでも自分の力だけで作品を作っているのではないのだから、 自分の才能についてプレッシャーを感じるのはむしろ傲慢で、 素晴らしいものを授けるために降りてきてくれる「精霊」の降臨をひたすらお願いする。 

スペインでサッカーの試合で目の覚めるような天才的プレーのときに、「オーレ!」という掛け声がかかる。「ジーニアス」の降臨を言祝いでいるワケだ。「オーレ!」とは何だ?
イスラム教の最後の拠点であるグラナダが 1492年に陥落した。 ここでようやく、レコンキスタ(再征服)が完了。 なんと、700年以上にもわたってスペインは キリスト教勢力とイスラム教勢力によって、 領土取り合い合戦の渦中にあったわけだ。その間、よんどころなくムスリムの文化、デザイン、建築様式、言葉などが染み込んだ。
「オーレ!」の元は「アラー」「アッラー」なのだ。
サッカーだけでなくてもいい。美術、文芸にジーニアスが降りてきたときには、「オーレ、オレ、オレ!」と高らかに歌おう。 

(写真は「ドミティアヌスのゲニウス」)