『ライフ・オプ・パイ』鑑賞。
虎と漂流? ということで、あまり見たいとは思わなかったのですが、(ごめんなさい。荒波は、いかにも映像酔いしそうですし)アカデミー賞で、監督賞などいろいろと受賞した映画なので、鑑賞してみました。案の定、私は、少し映像酔いをしてしまい、完全復活まで2時間くらいかかってしまいました…。
3Dなので、通常だと2100円のところ、水曜日ということで1500円になっていました。いつしか3Dメガネは、買い取り制になったのか、次回3D作品を観る時には、メガネ持参で100円引きになるそうです。
さて、日本語の副題に「トラと漂流した227日」と書いてありましたが、それは、少し先入観になってしまい、汲み取りが甘くなってしまったことに、映画の後、解説チックなレビューをいくつか読んでみて気づきました。
227日をどう過ごしたか? という風に観るよりも、主人公の「パイ」の心の中を覗いているような視点で、観たほうがもっと掴めたのかもしれません。
あらすじとしては、パイの家族は動物園を営んでいたのですが、経営が上手くいかなくなって、園を売ることになるのです。それで、動物を乗せた船に自分たちも乗って移動中に、嵐に巻き込まれ、救命ボートで一命を取り留めたパイとトラが、ボート上で、サバイバル生活を送る・・・という流れです。
映画の始まりは、動物たちの映像からです。いっきに、美しく、色鮮やかな世界に引き込まれていきました。
物語の前半は、パイの少年時代なのですが、その部分で、伏線になっていることが、いくつもちりばめられているように感じました。他のシーンと比べると、あまり動きがなく、単調なシーンではありますが、ちゃんと観るべきだと思います。
パイは、虎に近づいてみたくて、餌を虎に向かって差し出すのですが、お兄さんに止められ、お父さんに止められ、馬鹿な真似をするなと怒られるシーンがありました。その時、パイは、虎の目をみれば大丈夫そうだみたいなことを言うのですが、父親は、「虎の目に、お前の心が映っているだけだ」と返し、実際に子ヤギを虎のまえに生けにえにさせて、その恐ろしさを、パイに教えるシーンがありました。そこから、パイの信じているものが、変わって行くのです。
そんな、子供時代のいくつもの記憶の重なりが、「虎と漂流した僕」を作りだしてしまったのか、はたまた、実際はどうだったのか? 物語の最後でも、それはわかりませんでしたが、どうなのでしょうか?
漂流中、たまたま辿りついた島も、どんな意味があったのか? 「心」が映し出しているものとして、映画を観ていれば、もっと発見があっただろうに・・・と、後悔している私です。
ということで、何が何だか分かっていないような、感想になっていますが、意味もなく涙が流れてしまいました。
漂流中は、虎か自然(神)が、パイにとって話し相手になっているのですが、自然に逆らわず、受け容れ行くことしかできないその様子は、たとえ、大きな嵐が来ても神様に感謝しているシーンは、なんだか切なくなってきます。虎との別れのシーンも、あっさり過ぎて切ないです・・・・。虎と別れたことも、きっと何かを象徴しているのでしょうか。漂流生活が、人生の流れを象徴しているかのようにも見えました。とてもスピリチュアルな映画でした。
深すぎる映画は、途中、途中に入る、美しい映像により、観ているものに、瞑想の時間を与えているかのようにも感じました。味わい深いです。
アカデミー賞、監督賞(アン・リー)、作曲賞(マイケル・ダナ)、撮影賞、視覚効果の評価は、納得でした。
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