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第9話 基本の大切さ

2022.11.20 04:09
『基本の大切さ』

AT(アスレティックトレーナー)として、スポーツ選手の身体をチェックしていて思うことがあります。

特に若い学生選手達。

中学生、高校生、共に3年間の中で部活動に励む姿は、どの選手達にも可能性を秘めたキラキラしたものを感じる一方で、

その可能性を奪ってしまうきっかけの一つ。

それが『ケガ』です。

ちょっとした擦り傷や、数日で復帰できるケガは特に問題ないけれど、

手術や長期の競技離脱が必要なケガというのは、

学生スポーツ選手の競技生命に関わる話。

中学、高校とそれぞれ競技者でいられる期間はそれぞれ3年間。

全国大会の決勝まで勝ち進む選手・チームでもなければ、実質競技に打ち込む期間は3年間ない場合がほとんど。

むしろ2年とちょっとの期間しかない人も多いのではないでしょうか?

中学・高校、それぞれ新入生のうちから上級生と混ざって勝負の世界で戦うのは、年齢的、体格的に不利な状況となりがちな新入生。

能力が高いことで、新入生ながら即戦力となる選手もいますが、ごくわずか。

なんとか大会・試合に出たいと思って頑張るも、新入生にこそ多いのがケガです。

中学、高校共に、新入生は非常にケガをしやすい。

そこで生じたケガが重症であればあるほど、

その選手の競技人生は短くなってしまいます。

部活動期間の大部分がリハビリとなってしまう選手も、これまでたくさん関わってきました。

ATとして、アスレティックリハビリテーション(通称アスリハ)をする機会が数多く、特に学生スポーツ選手との関わりが多かったが故に、アスリハばかりしている選手達との時間は、胸が苦しいものでした。

(・・・・この子達は、リハビリするために部活入ったわけじゃないんだよな・・・)

ATとして、ケガの後の応急処置や、再発防止に向けた安全な復帰計画(アスリハ)、予防のためのテーピング・ストレッチ・トレーニングを学びます。

この中でも、やはり最も重要なことは、

『未然に防ぐ』ということ。

予防です。

ケガ予防

限られた期間が決まっている学生スポーツ選手達には、

その後の未来が待っています。

若い時ほどいろんな夢を持ってスポーツに取り組む選手も数多くいます。

勝負に勝つことはできたけど、身体がボロボロでこの先、競技を続けることはできない・・・・

こんなことも、勝負の世界で勝ちにこだわる中で起きる弊害として、よく聞く話です。

「勝利を目指す上で、多少のケガや痛みはガマンしろ!」

こんな発想・思想の指導者の方、選手もいることと思います。

もちろん、勝負の世界において、

勝利にこだわること、勝ちを目指すことは大変価値あるものと思います。

一方で、その勝ちを追い求めるが故に、

大切なその選手の未来の可能性を奪う事になっては本末転倒ではないかと思うのです。

競技成績も将来には影響するのかもしれません。

大会で優勝しました!

全国大会〇〇位です!

こうした素晴らしい実績も重要ではあるものの、

若い10代アスリート達の場合、

身体が未熟な時期のため、この頃のケガが時として将来への大きな後遺障害となることもあるのが、悩ましい種。

その時は良くても、その後の経過が良くない。

せっかく競技力が高いのに、

過去のケガによる症状が原因で、なかなか更なる成長が出来ずに悩む。

これも良くある話です。

学生スポーツ界のあるある話としてこんなのもあります。

中学では全国レベルの競技力を発揮していたA選手。

将来を期待され高校でも全国トップクラスを、監督も選手自身も期待していたけれど、

実際には思うような競技力を発揮できず、焦り、無茶なトレーニングに励み、ケガを繰り返してしまう。

過去の栄光があるが故に、期待値も高く、トレーニングに励むものの、なかなか思うようにいかず、ギクシャクしてしまう。

監督も部員も、自分を見る目が変わったように感じ、心理的にも追い込まれてきて、攻撃的な心理状況になり、

過去競技力が高かった選手達ほど、ひねくれていってしまう。

そうなると、周囲の仲間達も大人も、

「あいつは変わった」

なんて言い出して、益々その選手は途方に暮れる事になってしまう。

この選手をそんなふうにさせたきっかけは何だったのか、

それを辿っていくと、

調子が思うようにいかない中で発生した『ケガ』、そして、『繰り返すケガ』が、選手をネガティブは方向へ向かわせることが、学生スポーツ界ではあるあるの話です。

ここで、

『選手自身が弱いんだ』

っと切り捨てるのは、あまりにも冷たいと思うのです。

なぜならば、

そうしたケガで悩む選手達をたくさん見てきて思うのは、

選手自身がどうであるの前に、

その指導にあたる監督・コーチ、トレーナー(治療家含む)の関わり方や指導内容、指導方針、スポーツ界の風潮(勝利至上主義)などが、

その選手を追い詰めてしまっているという風に感じてならないのです。

決して、そうした指導者を責めたいのではありません。

指導者にしても、ただ『知らない』だけなのです。

人間の身体の成長の過程や、個人個人の特性、運動に伴う生理的反応が、

どんなものであるのか。

知らないから、自分の知っている範囲内での指導となり、

それが結果的にうまくいっているうちはいいけれど、

そうではなくなった際に『ケガ』へと繋がってしまうことが多々ある。

だって、学生スポーツ選手達って、

基本的には自分で全て判断して競技していることは稀で、

ほとんどが指導者の指示を聞いて動いているわけですから。

うまくいった時だけ指導者が賞賛され、

うまくいかない時(ケガ)の発生は選手のせいだというのは都合が良すぎると思うのです。

むしろそこは逆ではないかとも思います。

競技において、うまくいくのは選手の力。

うまくいかないのは、指導者の力なのではないかと。

『指導』者として、うまく導くためにいるはずじゃないですか。

選手の成長を願い、指導にあたる方々にとって、

『安全』な指導は本当に大切なことだと思います。

ただ、運動において安全(ケガのない)の究極形態は、

何もさせないことになってしまう。

そうではなくって、

運動には必ずリスク(危険)が伴うのが大前提。

リスクゼロにはならないけど、

リスクを最小限にし、

そして効果(成長)を促進する、

選手の目標達成へ導くこと、

それが指導者の理想像ではないでしょうか。

指導相手がいてなんぼの指導者です。

相手が元気で健康的な状況だからこそ、その後の展開が広げられる。

やっぱり、ケガのない状況を維持する、ケガを予防する、ケガをしてしまったとしてもなるべく早く安全に復帰させる、再発を予防させる、

こうした視点が必要だと思います。

でも、予防のためにどうしたらいいかわからないってこともあるでしょう。

わからないから起きたケガでもあるのですから。

知ることから

わかっていたら防げたはずなんですもの。

ケガを繰り返す選手がたくさんいる場合、

その指導者の方には是非予防策をお伝えしたいです。

ケガの大部分に共通する、基本の話がございます。

選手達の成長にも必要な大切な大切な基本の話。

先ずは何が基本なのか知ることから。

知ったつもりにならずに、

プロの話を是非聞いてみてください。

僕達ATは、身体に関する学びをたくさんしています。

スポーツ選手のサポートのためです。

スポーツ指導者の方も選手のためを思う気持ちは我々と同じことと思います。

ATとしてできることは、指導者の方々の日頃の指導のアップデートが可能です。

何をアップデートするかと言うと、

運動の生理学的効果や目的、安全と危険の違いをわかりやすくお伝えし、

『ATの視点を持った安全で効果的な指導者』となるサポートができるということ。

ケガの後の応急処置や、リハビリは覚えれなくてもいいと思います。

そこのプロはたくさんいます。

そこは『医療従事者』や『AT』がいます。

そこではなくって、

ケガの後の専門ではなく、

ケガの前の専門家は『指導者』の領域です。

ケガの前の専門家である指導者が、

より一層安全で効果的な指導が可能になること、

これこそ選手達にとって素晴らしい環境だと思うのです。

指導者一人一人がATの大切にしている『予防観』を持って日頃の指導にあたることで、一定数の怪我は未然に防げます。

ケガをしなければたくさん練習やトレーニングに励み、選手達の可能性を十分に発揮するチャンスが増えます。

指導者の醍醐味は、選手達の成長過程を見届けられることではないでしょうか?

選手が怪我して、その成長過程を見れなかったら、指導者の方にとってもデメリットとなるはず。

ATや医療従事者は、何かあった際の安心材料として保険的存在にはなりますが、

ケガを望んでいるものは誰一人おりません。

万が一に備えて僕達がいる、そんな感じです。

万が一が何度も起きるのは健全ではありません。

日頃の指導がより安全になること、

これが選手にとっても、指導者の方にとっても、双方のメリットだと思います。

僕は、ATとしてその指導者の方の『安全指導』サポートを行いたいと考えています。

僕が選手の指導をするより、日頃の指導にあたる指導者の方々が、僕の持っている予防コンテンツを習得し、指導に活用することで、

より良い指導になる。

僕が選手を良くするのではなく、

そこはやはり普段の指導にあたっている指導者の方が選手を良くするのが理想的です。

だってトレーナーっていう存在は黒子役だから。

僕達が目立つのは本意ではありせん。

指導者ための指導者

スポーツ界での主役は選手、そして、その指導者。

この両者が揃ってスポーツは光り輝くもの。

その両者を『支えるサポーター』がトレーナーであり、

予防に特化した思想を持っているのが『AT(アスレティックトレーナー)』なんじゃないかなって、僕は思っています。

黒子役の僕達トレーナーは、後ろでそっと見守るくらいが理想的ですよね。

大事な試合・大会場面で輝いているのは紛れもない選手達と、日頃の熱心な指導にあたる監督・コーチの方々に他なりません。

そんな姿を後ろで見守りつつ、いざ何か起きた時にすぐに駆け寄って対処するのがATです。

いざって時のATの活躍が少ない現場こそ、

僕が考えるATの理想形態。

ATがたくさん活躍するスポーツ現場って、怪我ばっかりしてるってことなので、僕は胸が痛くなる。

だから、予防の専門家として、

ケガの前にできることはないか?っと常考えました。

ここはやはり『指導者』の方のサポートなんではないかと。

選手のためのトレーナーというのはもちろんのこと、

ケガ予防を思えば、

監督・コーチのためのトレーナーという存在が、非常に重要なのかなって思います。

安全で効果的な予防専門は、ATにお任せ下さい。

たくさんの指導者の方と知り合えたらなって思います。

この投稿を読んで下さった方が、指導者の方であれば是非お話ししてみたいですし、

知り合いの指導者の方を紹介くださるのも大歓迎です。

僕は一人でも多くの選手を、ケガから守りたいです。

そのために僕ができることが、

スポーツ指導者の方のサポートだと考えました。

身体の基本を学んでいます。

日頃のスポーツ指導に、その基本を取り入れてみませんか?