くいしんぼうばんざい vol.1<小籠包>
人にはそれぞれお気に入りのお店があるのではないかと私は思う。誰かに教えたくなるお店や誰にも教えたくないお店。お気に入り、イコールよく通い詰めるお店、いわゆる「常連」でなくてはならないなんてことはない。そう思っている。その人が初めてそこに足を踏み入れた瞬間にはっと感じる何か。はたまた、気が付いたら勝手に何度も足を運んでしまう何か。落ち着く。癒される。店員さんの表情や店内の雰囲気。会話。味。匂い。音。色。その何かは、その人の感じるその人なりの感じ方であって、きっと他人にはわからない。誰かにわかって欲しくて誰かに話したくてたまらなくもあり、自分だけで楽しみたい気持ちでもある。この感情は挙げ出したらきりがない。きりがないというより言い表せないところから、その人のお気に入りが生まれるのだと思う。
ここでは、そんな気持ちを心の奥で毎回にやにやしながら感じている気持ち悪い私の勝手な主観で、私のお気に入りなお店をただただ紹介するだけのコーナーですがしばしお付き合いを。一緒にお腹、好かせましょう。
【三州屋 @神田(東京都千代田区内神田三- 二一- 五)】
まず外観。ここは外観から既に私のお気に入りが詰まっている。私はとにかく、「若いのにチョイスが渋いね~」と言われそうな外観のお店が大好きだ。「そうでしょでそうしょ~もっと言って~」と、ついニヤつきそうになる。(おそらく実際満足気にニヤけているのだと思うが)三州屋はまさに、その場に到着した瞬間からニヤつきがとまらない、そんな外観なのである。
~お昼編~
引き戸を開けると、時計を見直したくなるほどにたくさんのおじさま(おじいちゃん・・か。笑)達が酒を酌み交わしている。ビジネス街でそれをやられたら、酒好きのこちらからしたらたまらんだろぅ・・うぅ・・。となるほどのそれである。良い光景だ。たまらない。店内には毎回、そんなにいる?というほどの店員のお姉さん(おばちゃんだね。笑)達が、近づき過ぎず離れ過ぎずない程よい距離感の接客でなんとも心地が良い。ここでの定食はなんと言ってもめだいの煮付け定食。ここ三州屋では、定食とはいえお盆に載せずお皿が次々とじぶんの前に運ばれてくるスタイル。白いご飯にお味噌汁、お漬物に熱いお茶。そしてメインのめだいの煮付けが綺麗な形をして運ばれてくる。この、順番に自分の前にそれぞれのお皿が置かれていく様がなんとも心をくすぐるのだ。素晴らしい(ここで毎回私は思う。瓶ビールがあったらもっと最高なのに・・・と。)!大きめなお豆腐の入った少し濃い味のお味噌汁を啜った後、綺麗に盛られためだいにお箸を入れる瞬間がこれまた堪らない。何回来てもここだけはスローに映る。誰かがそばでカメラを回しているのではないかと思ってしまうほどに(もちろん味はそれはそれは最高に美味しい!)。そんな浸々な私の思いとは裏腹に、隣の酔っ払いのおじさんやサラリーマンがする、オリンピックや政治、仕事の不平不満を横にここ三州屋を嗜むのである。
私のお気に入りのここ神田三州屋は、至高のめだいに集中することもあれば、周りの雰囲気や色や音を楽しみながら自分に浸り味わうこともできる癒しの場所なのである。 これぞ幸せ!
文:小籠包