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【第657回】長津結一郎(九州大学大学院芸術工学研究院准教授)

2022.11.24 01:00

こんにちは、九州大学で教員をしている長津といいます。今回はドラマトゥルクとして関わった、12月17日〜18日に久留米シティプラザで上演される、村川拓也演出「Pamilya(パミリヤ)」という作品のことを書きます。

この作品は再演でして、初演は2020年2月の「キビるフェス」です。コロナ禍直前に行われた公演でした。あれからもうすぐ3年。私たちが常識としているものの根幹が変わっていった時間を、この公演のことを思うたびに振り返ります。

この作品はフィリピンから日本に来て福岡県内で介護の仕事をしている人の福祉施設での日常を舞台上で再現する、というドキュメンタリー的な演劇です。外国から来られて日本で仕事をしている、という言葉を聞いて、どんな人のことをイメージするでしょうか。日本語がおぼつかない、一生懸命な、目の澄んだ人。それが常識、なのだとしたら、実際の現実とはかなり乖離していると、この作品に関わった身としては感じます。

人はその場のマジョリティの規範から外れる人のことを、つい何かのストーリー(それは憐れみであったり、感動であったり)に託して語ります。私自身もそうです。それが、実際に現場に足を運び、話を聞き、その振る舞いを観察することで、自分の中の思い込みに気付かされます。この舞台はそんな観察の機会になるかもしれませんし、その観察を通じて自分の身近な人に思いを馳せる時間になるかもしれません。

まだ再演に向けた稽古も始まっていませんが、約3年のあいだに変化したかもしれない自分の常識と照らし合わせるような時間を、私自身も楽しみに待っているところです。

「知る/みる/考える 私たちの劇場シリーズ」 vol.2

村川拓也『 Pamilya(パミリヤ) 』

【英語字幕付き公演】


開催日時・場所

2022年12月17日(土) 〜 2022年12月18日(日)

久留米シティプラザ Cボックス


  日程詳細

2022年12月

17日(土) 18:00開演(受付開始17:00 開場17:30)★

18日(日) 15:00開演(受付開始14:00 開場14:30)

<上演時間:70分間予定(途中休憩なし)>

<言語:日本語(英語字幕)>

★12月17日(土)は終演後、トークを開催

 登壇者:村川拓也ほか


料金 【全席自由/税込】

一般:3,000円

U25(25歳以下):2,000円

高校生以下:1,000円

※高校生以下およびU25チケットは入場時要証明書提示

※未就学児のご入場はご遠慮ください

※託児サービス有、詳細はこちら(定員有/無料/要事前予約/ TEL 0942-36-3000)

※車椅子でご来場の方は事前に久留米シティプラザまでお問い合わせ下さい


チケット発売

一般発売 2022年10月15日(土)10:00~

プレイガイド

■久留米シティプラザ  

 WEB 会員登録が必要です。

 窓口  ※窓口営業時間 10:00~19:00 臨時休館あり。 


スタッフ・キャスト

演出:村川拓也

出演:ジェッサ・ジョイ・アルセナス

ドラマトゥルク:長津結一郎

舞台監督:浜村修司

照明:葭田野浩介(RYU)

字幕操作:城間典子

字幕翻訳:岩本史緒、出口結美子

宣伝美術:永戸栄大

制作:豊山佳美


お問合せ

久留米シティプラザ(久留米市)

HPはこちら

TEL 0942-36-3000(代)

FAX 0942-36-3087


 【作品について】


"介護の現場を舞台に

そこに現れる、もうひとつの「家族」"


2020年2月に福岡市内で初演された『Pamilya(パミリヤ)』。制作にあたり演出の村川拓也は、2019年の夏に福岡で介護福祉に関わる30名へのリサーチを行った。そこで出会ったのが、特別養護老人ホームで働く、フィリピンから来た介護福祉士候補生のジェッサ・ジョイ・アルセナスだった。

福祉施設での日常が舞台上で淡々と再現された本作では、言語を通じた親密なやりとりと、身体同士の接触が入り混じる。その空間に目を凝らすことで、普段は気に留めることのない、しかしいまこの瞬間もどこかで毎日続いているかもしれないコミュニケーションに気づかされる。初演時に観客として居合わせた人々は、自分に近しい身内や、もしかしたらあり得るかもしれない自らの姿に思いをめぐらせ、終演後も語り合う姿が見られた。

その後、新型コロナウイルス感染症の流行により本作を再び上演する機会は失われた。ジェッサは母国フィリピンに帰り、介護の仕事も辞めた。時を隔てて、人と人との接し方自体が変化したいま、初演から約3年の時を経て本作は再演される。すべてが変化したかのような世界において、舞台上で再現される日常とはいったい何か―――。

「Pamilya(パミリヤ)」はタガログ語で「家族」。フィリピンでは介護は家族が担うものという価値観があり、そのスタンスが日本の状況との差異を浮かび上がらせる。家族とも友人とも異なる「ケアをする/される」関係。異なる年代、経験、国、言語、そして社会の状況―――フィリピン出身の介護士と、介護を受ける日本人の間で、いま再び紡ぎ出される、もうひとつの「家族」の物語。





主催 久留米シティプラザ(久留米市)

助成 令和4年度 文化庁 文化芸術創造拠点形成事業