3日でまたまた書いた! 『3日で書け!』お題:エキセントリックに対する感想文集
正直、「エキセントリック」というお題を引き当てた渡辺八畳先生へは恨みを募らせても募らせきれない。エキセントリックってなんだよ。なんなんだよ。
前々回の「前哨戦」は非常に良かった。イメージもふんわりしていつつ、しかし漠然とし過ぎてもいない、非常に良いお題だった。前回の「パクチー」に関してはちょっと混乱もあったが、やけに具体的過ぎるお題が故に消化もしやすかっただろう。
でも今回のは「エキセントリック」。イメージがエキセントリックじみていて、しかし何一つとして具体的ではない。なんなんだよ。とりあえずそんな印象を受けながら書いた。なんてことはない無難で毒にも薬にもならない散文を投稿してしまったことは反省の極みだが、いや、ちょっと待ってくれ、反省する前にお題が悪い。お題が。そう責任転嫁を図ることにしよう。そうさせてくれ、頼む。
しかもなんなんですか。今回の参加者、58名って。どんどん増えるじゃないですか。全部目を通す人いるんですか? よしんば目を通したとして、一つ一つに感想を抱く人ってどれだけいるんですか? すっごく批判的なことを言うと、書いてゴールだと思ってませんみなさん。載せてもらってゴールだと思ってませんみなさん。
文フリにせよなんにせよ、時間なりお金なりの身銭を切って買った本、読んでますか? 私は読んでません。読みます。読みますから殴らないで。お願い。
ということで、今回も感想、いってみよー! と軽く筆を執る次第です。実はこの文章を書いている時点ではまだ読んでいませんアッハッハッハ。これから読みます。読みながら一作品ずつ消化して感想書きます。いつもこうやって感想書いてます。だから全体としての印象とか書いてないのはそのせいです。ある意味でリアルタイムに読んで、その時思った感想をつらつら書くというこのライブ感!! イエーイ! ウェーイ! ノッてるかーい? ノッてるわけないよな。文学フリマ東京35も終わったしな。みんな燃え尽きてるよな。そうだよな。私だってそうさ。そうなのさ。
でもさ、鉄は熱いうちに打てっていうじゃないですか。やりますよ。誰にお願いされたわけでもないし。誰からもお金もらえるわけでもないけど、完全に自己満足としてやりますよ。この感想文集を誰が期待してるかって誰もいないだろうし、迷惑がってる人もいるんじゃないかと思いながらもう3回目ですよ3回目。なーにやってんだか。
なんだかエクストラステージとして別のお題も盛り込む方もいらっしゃったようですが、全員ではなさそうなので、あくまでもお題は「エキセントリック」としてそれだけで進めていこうと思います。
じゃ、やりますかー。(ウマ娘のナイスネイチャの声をまねた野太い男の声で)
・エキセントリック 小林素顔(Twitter:@sugakobaxxoo)
手紙の形式をとった散文作品。どうやら内容としては息子が母に宛てたものらしい。「男らしく手を引こう」とか言いながら全然構図が男らしくないあたりがクスリとくる。いちいち言い回しが古風なのに、どうも世界観的には現代なあたりのギャップも妙。そういう世界観なのか、それとも手紙の差出人が変わってる人なのか。私は後者だと思う。
・エキセントリックな友達 草野理恵子(@riekopi158)
詩文として言うのであれば、海の深いところに潜りつつ、手にしたのが鳥という空を連想させる物体であるあたりにわかりやすい対比構造があると思う。エキセントリックな感性を持つ友達という点において、確かに友達の行動は奇抜ではあるだろう。最後の三行が意味深だが、その意図を図りきれなかったのが私の読者としての限界だろう。
・タイダル・ウェイブ 械冬弱虫(@Wimpy_keter)
ピンヒールのハイヒールって履くの大変なのよね。そりゃ脚の筋肉も発達するわ。いやそうじゃない。全体として抽象的な印象を受けるが、一つ一つの言葉は具体的だし、穴の深さも具体的だし、しかしイメージがわきにくい。言語による表現として文字情報として消化するしかないんだろうなぁ。多分、視覚的に想像するには限界がある。ところで最後の二行で読者を巻き込む様は非常に痛快。
・元エキセントリックな彼女のこと 夢沢那智(@Nachi_Yumesawa)
散文作品。元エキセントリックということで、今はすっかり普通のかわいい女の子なのだそうだが、私の脳が狂ってしまっているのか、前半の会話の内容などを読んでも(確かに「変わった」彼女なのだろうが)どこか普通の独白に見えてしまってならない。お題のエキセントリック性をもっと高めていただきたかった(?)。話全体としては何か、こう、惚気ですなコレ。
・ラストライブ これ(@Ritalin_203)
エキセントリックが理解できないことを「センスのない」ことであると解釈して作られた作品だと勝手な解釈をした。掌編小説ではあるだろうが、その前、そしてその後の想像もされる、広がりのある作品であると思う。エキセントリック性を主人公に据えるのではなく、代田という人物に据えてそれをどこか俯瞰してみるあたりも確かにお題の消化の仕方としては非常に巧妙だと思えた。
・エキセントリック・シティ・オブ・名古屋 加藤万結子(@uta_kato)
一読して、お題の消化が素晴らしいと思った。恐らくはフィクション性のないエッセイなのだろうが、それにしてもエキセントリック性をここまで見出し、表現できるのかと感嘆の声を出してしまった。名古屋恐るべし。そして名古屋に住むに至った作者の数奇な人生恐るべし。出会うべくして出会った土地と人なのだろう。エキセントリックな街をどうぞ今後もお楽しみください。なお私は一回行きましたが、あまり印象にございません。
・人の幸 神野美紀(@katzeseim)
独白調のエッセイ、あるいは掌編小説なのだろうか。エキセントリック性を、言動や表現で語るのではなく、それそのものに対して肯定的な視点でとらえて語るのは良いお題の消化の仕方であると思えてならない。確かに「ゲージュツ」というものを通じて他者に幸せを提供しているという奇人めいた行動をとる我々にとって、この一編は他人事ではない気がしてならない。
・道沿い渡 川﨑雄山(@YuzanKawasaki)
詩文である。一つ一つの単語は具体的だが、やはり詩文らしく抽象的な表現だ。光景を想像しようとする行為そのものが野暮なのかもしれない。恐らく邪推するのであれば、最後の五行を印象付けるための第一節なのだろう。どこか退廃的な印象を受けるあたりに、エキセントリック性を付与しているのかもしれない。
・海の不幸せ stereotype2085(@keisei1)
詩作として発表されたものだと思うのだが、どこか教訓めいたというか、強い主張を感じさせてくる。それは作者にとってはその通りなのだろうし、人によっては説教臭いという人もいるかもしれないが、私はこのくらい主張のある詩も大好きだ。そしてその主張そのものが語り部のエキセントリック性を顕在させているあたりにもとても正統派なお題消化を見た気がする。
・風変わりで優しい 妻咲邦香(@chiisanakimochi)
最後の二行が非常に気がかりである。「わかって」いた「優し」さは、いったい誰のものなのだろう。「貴方」か、それとも「私」か、というところに、他の読者様方との解釈の不一致を見る気がする。とても印象的な作品である。恐らく、私は個人的な感性として、オノマトペや語感の連続に弱いんじゃないかなぁ、と気づかされた。
・ある女の生き方 平間みなの(@xxx_msnk)
掌編小説として読んだが、偶発性、運命的な出会いや出来事というものも含め、きっとその人の上にある星の導きなのだろうと思えた。恐らくは登場人物の「幼馴染」の言う、「静かに生きる方法が分からない」というのは、その運命力の引き寄せなのだろう。本人が演じるエキセントリック性ではなく、その状況に置かれた時の偶然の行動によってエキセントリックになっていく、というお題消化は巧妙だ。
・Mikkade-kakeグランプリ 横山睦(@Mutsumi_0105)
漫才という体裁をとった掛け合いによる作品である。とてもメタな視点を取り入れていて痛快だった。エキセントリック性が見出すことができなかったのが個人的な読解力の限界だろう。そもそも漫才の掛け合いを文字起こしする時点でエキセントリックなのかもしれない。
・偏心 ユウアイト(@yuaaito)
詩文と散文(小説?)の中間的な作品だとお見受けした。螺旋階段を下りる、という構図は極めて意味深であり、より深層へ、深層へ、そしてその深層はどこの深層なのか、心なのか、それとも、というところに想像の余地がある。「内省」という単語が非常に効いている。秀作だと思う。お題の消化も確かにエキセントリック。ちょっと私程度が語っていい作品ではない気がしている。
・エキセントリックエレジー 入間しゅか(@syukasaaan)
都都逸的なリズムのある詩文である。第一節と第二節、第三節の末尾の二行は共通だが、第二節を読んだ後のこの二行に関しては味わいが少々変わってくるあたりが妙であると思う。最初は突拍子もない単語だなぁ、と思ったが、なるほど確かにエキセントリック性がある。第三節まで行くともう納得の域である。
・労働 エキノコックス(@echino59s)
あえて普通を描くことでお題の消化を試みているのであろうか。そりゃ三百万貯まったら私も外国行きたい。どこか不条理というか、そんな平凡故のやるせなさも感じるが、タイトルの「労働」というのも相まって、もの悲しくもなる。
・エキセントリックな男「ボウイ」におもう ゆるぎ俊哉(@M_Night_Smokers)
コメントは差し控える、というコメントを残しておく。というかまだ18作目なのか。ちょっと休憩しよう。今までは3日で書け!に関して1~2日で全作品の感想を書いていたのだが、ちょっと今回厳しそうだ。なんというか、後日書いた切り替わりのタイミングでテンションが若干(かなり?)違うかもしれない。ご了承ください。
・竜宮城風サーチライト 階段ひかげ(@kaidan_123)
言葉の対比構造が極めて秀逸な詩文であるとお見受けした。全体としての対比ではなく、すぐ隣や近くの行において対比構造が設置され、畳みかけるようにして綴られている様は非常に読み進めやすく、飲み込みやすかった。
・フリソデエビ よしおかさくら(@sakuraga396)
全体として、恐らく語り部も含めて振り回されている感のある詩文であったが、しっかりと最後の一行で締めをくくり、全体として引き締まった様子になっているように思えた。エキセントリック性を見出せなかったのが私の読者としての限界か。
・特別 天明福太郎(@tenmeifukutaro)
悲哀を感じる散文だった。「特別な人間になりたかった」という最初の一文が実に身に染みる。フィクションであってほしいと願うが、もし仮にこれがノンフィクション性をはらんだ作品なのだとしたら、この悲劇と言っていい状況は、読者である私の身にも刺さる。中盤での転換から最終二行での落としまでの流れは、本当に悲哀としか形容しがたい。
・声明文 桃ヶ山心一朗(@momogayama_shin)
語り部の主張はどこか共感性のあるものであろうと思えた。少なくとも、読者としての私には。「私は!」の後の伏せた主張は何なのだろうか。あえて作者が伏せたのだろうが、やはり想像・解釈の余地があるだろう。文章の端々に改善の余地もまたありそうだが、そのあたりの粗さもまた声明文として語り部の主張しているときのエキセントリック性を表現したものなのかもしれない。
・生活がすきま いけだうし。(@kikedausinoshi)
生活「が」すきまというタイトルには惹かれるものがある。の、ではないんだ、というところでキャッチ―なように感じた。ところどころに助詞・助動詞の、読者である私だったらこうするなぁ、という語彙力の不一致が作者と私の間であったものの、それは感性の違いなのだろうし、何よりその少し読者たる私とずれた感覚こそ、の、ではなく「が」という表現が表しているのだろう。
・奔流 橘しのぶ(@kirainarasatte)
エロティックな印象を受けた。最後の三行を見るに、それは間違っていないのだろう。受動的に「流されていく」少女が、後半では自分の意志で「流れ」ていくという対比も非常にわかりやすく、素晴らしい。最初から三行目の「血の匂いがする」という一文もまたエロい、と思ったのは私だけだろうか。
・フィラデルフィアの夜に、 羽田恭(@dabunkan200)
「一つの針金」は何なのだろうか。何をたとえているのだろうか。そう思わずにはいられない。それが仮に何かの比喩表現であり、具体的な何かを設定しているにしても、あるいは本当に単なる針金であり、そこに殺到する現象の方を狂気をもって描いたのかにせよ、針金一本をめぐる掌編小説の一編のようでもある、しかしこれはきっと詩文なのだろう、と読みといた。
・umino-sachi あかりん(@shimaenaga311)
自叙的な詩文の体裁だ。創作者の描く自身を投影した創作者の話というのはどこか陰鬱になりがちな印象があるが、本作は最後の三行に救いのようなものがあるように思えてならない。これは強い意志表明であり、現在進行形の通過点の一つなのだろう。
・人魚の記憶 森崎葵(@VJAFQ)
どこか残酷な物語だが、もの悲しくもある、そんな詩文だった。ただ、エキセントリック性というものが読み解けなかったのが私の読者としての限界でもあり、その点は残念に思ってしまった(この際だから言及するが、エクストラステージのお題二つに関しての消化は極めて上等で光るものがあった)。
・彼女が持ってきたものは サンレイン(@sunrain2004)
掌編小説なのだろうが、この設定で描くのであれば(企画趣旨上無理なのは百も承知として)もっと長い物語として読みたい気持ちが強い。また、エキセントリック性を「あずみ」という登場人物に当てたのだろうが、その点においてはもっとエキセントリックなキャラクターにしてもよかった気がする。
・無名夜行、花魁道中夢景色 青波零也(@aonami)
掌編小説として、この長さにうまくまとまっている内容であろうと思う。正直、本企画を通じて(もっと長く読みたいなぁ)と思う掌編小説が多い中、本作はこの分量に適切な内容でつづられていて、感心した。最後の一行に「エキセントリック」という単語を交えたことには、少々直接的に過ぎるか、とも思ったが、必要な読者への配慮なのだろう。秀作であると思う。
・phlox Lindon かるべまさひろ(@KarubeMasahiro)
支離滅裂な詩文に見えるが、全体を通してどこかセピア色の光景が映るのは私だけだろうか。とても繊細で丁寧な文章なのだろうとお見受けした。当然、先に述べたように描かれた文章は支離滅裂だ。だが、そんな印象を受けるあたりに、どこか非常に筆の乗っている、筆に慣れている方の作品なのだろうとも思えてならなかった。
・エキセントリック・ニューシネマ 篠﨑亜猫(@Abyo_Shinozaki)
シネマと銘打っている以上、これはどこか映像的に見ることが正解なのかもしれない、と思えた詩文である。最後の二行が意味深で、何度か読み返したが、言葉と言葉の羅列に関連性があまりなく、見出しきれなかった。「ルージュ」のくだりはユーミンのオマージュだろうか。そんな程度しか読み解けない私の読者としての力量の限界だろう。
・冷え ケイトウ夏子(@xm_rage)
最後の三行があることによって、そこまでの文章をすべて包み込むような印象を受けた。「冷え」というタイトルが意味深。本作については「遅延は常に甘美」という一文に尽きると思う。この表現があるだけで、本作を読んだ価値があったように思えた。
・エキセントリック演者 星野灯(@tomoruhoshino)
第一節の二行目、「思っている」という表現が、最終節の二行目、「許される身分なのです」という言い切りに変わっていく様はどこか計画・計算のうちなのだろうが、見事。各節の一行目は共通だが、それがたいていの場合第一節だけは説明や前提に費やし統一できないところを、本作はうまく構成立てて成立させている。
・お屋敷の水 椿美砂子(@isako_tsubaki)
ホラーなのかもしれないが、「狂気」を抱いているのは本当に「貴方」なのだろうか。実のところかなり、「わたくし」なのではないだろうか、と思えてならなかった。最終二行の矛盾的な内容がどこか「哀切」そのものであり、全体の印象を決定づけている気がする。
・エキセントリック・プラネット 高橋克知(@swbanzai)
タイトルと同じ文章を一行目に持ってくるあたりに妙を感じる。念押しに近いような印象だ。彗星をうたった詩文なのだろうか。起きている事象と浮かんでくる光景が一致していて、非常に読みやすい詩であった。最後の一行で上げた「声」は、果たしてなんと言っていたのだろうか。
・ウニちゃんのこと 本条恵(@Singles_cafe)
エッセイなのか、あるいはフィクショナルな小説であるのか判断に迷うが、ひとまずエッセイであろうと読み解いた。なんということのないエピソードの羅列から想起される「ウニちゃん」という人物のエピソードを掘り下げた作品だが、最後の二行が痛烈にクるものがあった。とても好みです。
・ごーるでん はままつ君(@hamamatsuOD)
詩的な散文作品である。夢か何かの情景だろうか。それとも。乳房をあらわにしている様子などからエロティックにも見えるが、どちらかというと「女神像」という表現にたどり着く前に、彫刻や芸術的な美を感じる作品であった。というか最後の三行にて語られる「君」は、果たして語り部の前の人間に対してなのか、あるいは読者に対する語りかけなのか。広がりのある文章であると思った。
・ティーカップは本当に皿へと戻されるべきなのか 羽島貝(@hajima_kai)
「エキセントリックな」飲み方をする、というそのエキセントリックさを読者の想像に委ねているあたりがズルい。非常に巧いやり方だと思えてならない。最後の一行が締めでもありヒントでもあるのだろうが、とにかくどんな飲み方なのだろうか。とても想像の余地のあるいい作品であると思えた。
・百の猿 千の駅 渡辺八畳(@yoinoyoi)
全体として共通の単語や表現を盛り込んではいるものの、大きく前半と後半に分けられる詩文であろうと思える。前半は猿、後半は駅というのは言うまでもないだろうが、最後の七行は果たしてどういう意図・構図で据えたのだろうか。作者に聞きたい気持ちがある。確かに最後の七行が無かったら普通のエキセントリック性を交えた詩文だったろう。しかし、これが加わることでどこか喜劇的にもなっている。作者の狙いは当然その通りなのだろうが、私はこのオチに膝から崩れ落ちるような感覚を覚えた。
・ほぐされゆく光と、時間の遠さ 望月遊馬(@yuma_mochizuki_)
どこか寓話的な光景が思い浮かぶ散文作品であった。しかし込められたおもいはきっと純文学的な澄んだ気持ちなのだろう。少なくとも語り手の感性は個性的であろうが、それをエキセントリックと表現することに対して否定的な印象だ。最後の二行においては、何か涙を誘われるような印象さえ受けた。とても、とても印象的な作品だった。私はとても好きです。
・19XX年 吉田圭佑(@yoshi0007220)
一つ一つの単語のチョイスはイメージしやすいが、その中のつながりの意外性による詩作であるとお見受けした。エキセントリック性を見出しきれなかった私の読解力だが、それでもとても読み応えのある作品であった。恐らくは、最初の一行と最後の一行にエキセントリックという単語を連鎖させるところに妙があるのだろう。
・奇抜さの天秤 四方塚環(@yomotama)
確かに奇抜だ。これはエキセントリックな登場人物だ、というのが非常に説得力のある内容で描かれた掌編小説だ。恐らくはまだプラトニックな関係であろうに、その「艶めかし」さはどこかもどかしさに近い読後感を覚えた。魅力的な登場人物であるが、その一方で(もっと長く読みたい)と思わないあたり、実に分量と内容がマッチしているのだろう。非常によくまとまった掌編小説であった。
・義民電話 高嶋樹壱(@keytakashima19)
私の読解力が足りないことを強く感じた。時折挟まれる()であるとか、そういったところの技巧や技法が私にとっては詩に対する解像度の問題で見切ることができなかった。映画『パプリカ』の所長の発狂シーンを彷彿とさせる支離滅裂さで、これが一つのエキセントリック性の表現なのだろう。
・懸想――きわめてえきせんとりつくな―― 中貝勇一(@Unakagai)
とてもズレている。それは誉め言葉として受け取ってほしい。エキセントリックというお題に対して表記・表示上で表現する作者が現れることは想像できたが、意外にも本作が際立っていた。一ページに収まらなかったことが悔やまれるが、それは仕方がないことでもあるし、それは作者本人が頒布・配布するにあたり実現すればよいのだろう。ところで、語り部の「中心にある全部」とはこの羅列のどれなのだろう、あるいはすべてなのだろうか。
・叙情的なGaming Penisの試み 青ノ颪(@NORANEKO_AOKI)
タイトルの通りの内容の詩文であった。イメージのしやすい内容だったが、特筆すべきなのは挿入されている短歌(?)二首だろう。意外と短歌を詠む作者が少なかったのもあるが、この二首にはなかなか惹かれた。
・なきがら amane(@paraiba0117)
どこか若い感性のように思えた。いや、あるいは若い感性を俯瞰する年齢なのだろうか。放課後「まで」といいつつ、「果てない」という表現を一行に収め、それを反復するのも一つの技法なのだろう。なんてことはない一風景においての内に秘められた暴力性(?)のようなものが連想される。
・廊口上 七色(@0nanairo0)
口上、というだけあって、リズム感のある詩文であった。しかしエキセントリック性が薄くも思った。どちらかというとエクストラステージの方が主題になっている気がする。ただ、これは作者の失敗ではなく、あくまでもどこに重きを置くかという作者自身の判断だったのだろう。
・Pietoso~『2台のピアノのためのソナタ 二長調』より 月ノ音姫瑠(@onisumire)
少し、表記がずれている気がする。「絵画の詩」の下のダッシュ記号などは縦ではないのだろうか。いや、あるいはあえてなのだろうか。音楽記号などに詳しくないので言及避ける。これも一つの視覚的なエキセントリック性の表現なのだろう。少しばかり私には知識と学がないので読み切れなかった。
・七色の刺身を口の中に押し込まれる ベンジャミン四畳半(@ShiDa4643)
ホラーの一つなのかもしれないが、私にはライトノベルのボーイミーツガールの一つのようにも読み取れた。果たして主人公は偶然性によって「七色の刺身」を食べるに至ったのか、それとも「人魚」は主人公を狙っての行動だったのか。幻想的(というより非現実的)な状況から一変して最後から五行目あたりで俗っぽくなるあたりの転換も非常に新鮮であった。
・世界の中心を離れて けいりん(@koukounaries)
最初の一行と最後の一行のリンクにより、夢の世界が現実か、あるいは「目が覚め」た跡が現実なのか、という構図なのだろう。もちろん、作中で言及されている通り「地続き」である可能性もあるが、それは主人公の考えであり、作者の狙いともまた違う気もする。いずれ主人公はこのままだと、夢で見た光景を訪ねるだろう。その話はその話として読みたい気もする。
・瓶詰 深染つき(@usokozuki)
とてもファンタジー的な物語だった。最後の一行の最後の表現などを見るに、きわめてこれは「ロマンティック」な話なのだろう。そう、ロマンというのは時として現実的だ。退屈を感じている語り部の存在も、決してロマンティックの域を超えてしまっているものではない。それも含めてロマンティックなのだ、と私は解釈した。
・ITOMAN CITY ELEGY 元澤一樹(@sawa_sawa64)
オムニバス人間観察のような詩だが、どこか歌詞的なリズム、というより内容のリフレインな気がするのは私だけだろうか。誰か読者の方に曲を当てられる方はいらっしゃいませんか? という具合だ。奇人変人の描写だが、どこか牧歌的でとてもほんわかとする。そんな印象を受けた。
・エキセントリックフラッシュ りか
吐き捨てるような、吐き出すような散文である。皮肉めいた表現が多種多様に用いられているが、その実恐らくは語り部はどこかそんな日常や想像に救いもまた、求めているのではないだろうか、という所感である。極めて現実的でありながら空想的、かつ繊細な感性を、エキセントリック性というエッセンスを用いて表現している。そんな気がした。
・スパンコールの雨の中で あさとよしや(@shinra448)
スパンコールは降らない、という前提の下、空想の世界であろうと思うのだが、どこか穏やかで落ち着いた日常の描写はエッセイ的にも写った。段落ごとの内容の締りも良いし、最後の数行におけるその振り返りもまた、作者の計算の内なのだろうが、非常に読み進めるうえで気軽な散文であった。
・韻文的アジテーション――孤独のために まほろば(@mahorobabababa)
語り部の特定、というか視点をどこに置くべきかをかなり迷ったが、私の稚拙な読解力による解釈としては、()内が語り部であり、地の文のアジテーションはどこからか聞こえてくる空間に響く音というか、モノローグというか、なのだろうと思った。最後の二行には共感しかない。格好いい考え方だとすら思う。この一文を自分で思いつきたかった。
・エキセントリック商会 社歌 病氏(@ganyama)
この社歌をうたう会社には絶対に入りたくないと思う(それはそう)。四番(?)のカタカナの羅列は、ここまで関連させたビジネス用語をよくもまぁ引っ張ってきた、と感心することしかできなかった。もうエキセントリックというよりクレイジーだと思う。
・寓話・キューメトーション 南北東西(@namboku10zai)
寓話なのだろうか。確かにフィクショナルな設定だが、しかし、いや、彷彿とするのは『時計仕掛けのオレンジ』だ。ところどころのカタカナ文字の表現が図りきれず、しかしこの作品においては図ることすら野暮というか、そこは主眼ではないのだろう。捉えきれず放逐される読者の読後感については、ぜひ様々な視点から感想として言い合いたい気持ちもある。
・path 七辻雨鷹(@U_Nanatsuji)
多分、SFとして読むことが正統ルートなのだろうが、私のねじ曲がった読解力は、この作品をどこか現実的な社会風刺の一つとして受け取った。現に「父」、「母」に言われた言葉はまさしく現代における精神・発達障がいへの目ではないだろうか。それはさすがに邪推か。作者の意図から離れた解釈をしていたら大変申し訳ないが、そう思えた。
・ナメクジ 五月女十也(@moon_Mayloth)
ほんわかとする掌編小説であった。変わり者、という人物を描くことによってエキセントリック性を表現しているのだとしたら、この作品はどちらかというとエキセントリックというよりもユニークというか、決して奇抜で突拍子もない、というような印象ではない。変わっている子供が、変わっている中でもどこか独特の感性をもってして行動している話である。とても心が温まるような話である。
・日常エキセントリック 大正躑躅(@taisyotsutsuji)
何気ない日常にエキセントリック性を見出す作品。奇をてらった表現でもなければ、特別奇抜な人物が出てくるわけでもないが、どこかタイトルには納得させられるような印象があった。そうだよなぁ、日常ってエキセントリックなんだよなぁ、という感じ。結局何事もない平穏な日常であっても、登場人物が二人いれば考え方も違い、そこにお互いの特異性が見出せるんだよなぁという、ある種の変わり種な、ある種の正統派な散文作品だった。
ということで、書き上げました感想文。Wordさんって便利で、編集時間が見れるんですよね。330分かかったようです。330分。あと3分あれば333。3日で書けっぽかったんですけどね。というか感想書き上げるのに所要した時間が3日間だったので、まぁ、なんというか、らしいんじゃないでしょうか!?(強要)っていうか何度も出てくる「エキセントリック性」って単語、なんなんだよ。何が言いたいんだよ。定義しろよ(助けてくれ)
さて、今回もめちゃくちゃなことを勝手に書き連ねました。作者の皆さん怒らないでほしい。蹴らないでほしい。埋めないでほしい。でもそれはあくまでも私の願望であって、多分怒られるし、蹴られるし、埋められる。それはそれとして、毎回感想書いている私って何なんだろうな。誰に頼まれたわけでもないのに、勝手に。
創作者って、感想を欲してると思うんですよ。私が勝手にそう思っているだけなんですけど、そうだと思うんですよ。でも皆さん経験おありだと思うんですが、感想って来ないんですよ。めったに。文学フリマで30冊でも50冊でも頒布したって、感想1件来ればもうお祭り騒ぎなレベルなんですよ。そうじゃないですか? そうじゃない? 感想いっぱいくる? だとしたらあなたは恵まれてますよ。本当に恨めしい。嫉妬マスク。
ということで、こうやって全作品でないにしても、かいつまんだり、秀作だと思うものだけでも感想を書き連ねて、可能であれば作者に届く形で送ってあげることって大事だと思うんですよね。それが批判であっても賞賛であっても。
ということで今回の企画に対する感想文でした。
なお、過去の「3日で書け!」企画を含め、今回の企画も渡辺八畳様のboothにて販売されている模様です。気になる方は買ってみてくださいね。チェキチェキ!!
さて、MondayNightSmokersの次回以降の告知ですが、未定です。残念ながら。
というのも弊社、倒産しましてね、今失業者なんですよ。残念ながら。
公私ともにひっ迫しているので、イベント主催もイベント参加も厳しそうなんです。残念ながら。
ということで未定ではありますが、どっかのタイミングでビブリオバトルかボードゲーム会、やりたいなぁ、そろそろ気晴らしに遊びたい。楽しみたい。
そんな感じで今回の記事を終えます。みんな、文フリで買った作品、読もうね。そして感想を送りつけようね作者に。タコ殴りし合おうね。こぶしを交わして友情深めようね。文学フリマって東京に限らず横のつながりが希薄な感じするので、「横のつながり~」ってニタニタしながら両手広げてハグし合える日が来るといいですね。なお中の人ことセンダギは体重100kgのデブなので、やせてる人の背骨はサバ折りします。イケメンならなおさら粉砕骨折させます。憎いから。
それでは、また。
賤駄木