167. 映画 オーバー・フェンス - 2022.11.26
また良い映画を見ました...(ひかりTV)
原作は、佐藤泰志という作家です。世代的には、村上春樹と同じです。
わたしはどちらの作家も好きです。二十歳前後のひりひりする感覚は似ています。
村上春樹は、同時期に(作品が発表されたらタイムリーに)知っていましたましたが、佐藤泰志のほうは亡くなってから、何かの雑誌で没後の特集で(残念ながら)知ることができました。
その佐藤泰志の小説は、短編が多い印象ですが、学生から社会人になったくらいのころの、恋愛や、生きていく苦しみのようなものを、痛い感じで率直に描写しています。
小説作品の商業的な道筋は対極というか、残念ながら佐藤泰志のほうは生前は注目されず、ご本人は 41歳で自死してしまいます。
佐藤泰志は、生地の函館を舞台にした作品が多いです。ご存知の通り、村上春樹は神戸が生地です。ほか両者はいずれも、東京の大学へと進学しているなどの共通点もあります。
村上春樹は、文章が渇いていており、そのイメージが自分(読み手であるわたし)のものになっているので、映画になって見えると、ちょっと自分の見えた景色と違うなと思うことがあります。
佐藤泰志は、文章やメッセージが言葉として鮮やかすぎて、見える(はずの)イメージが良くも悪くも意味性が、既に決まってしまっています。
だから、その意味についての解釈の余地がないというか、誰かが演じることができる、演劇ができるというか映画にすると、"そうそう、そういう感じ" という、読んだひと皆でわかっている(読み手で合意されている)その方向性が、そのまま映像で延長/色づけされた感じです。
なので違和感はなくて、俳優や景色のカメラ次第で、小説の読後感が、さらに、上乗せというか、どんどん良くなります。
それが佐藤泰志という作家のかたの作品かなと思います。
大昔、新卒ではいった会社で、北海道の浦河や広尾・目黒あたりの仕事があり、何回か出張していたころがありました。夏から秋にかけてでしたが、家の簡素な内装とか(宿も民宿だったので)、ぶっきらぼうとは違うのですが唐突に間合いが近い感じの話し方とか、映画をみて思い出して懐かしく感じました。
いちおう、このブログで、タグづけで「本」とあるのに、本のはなしをあまりしていないので、書いてみました。小説は結構好きです。書くと書きすぎるなと思って書いていません。