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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

第3回十字軍5-父に勝利!獅子心王誕生

2018.03.29 04:00

新たに長男となったリチャードはマザコンで実に父ヘンリーとソリが悪い。1183年父はリチャードに、「共同王にするからアキテーヌをジョン(失地王)に譲れ」と言うが、聞き入れるはずもない。翌84年に会議が行われ、王妃アリエノールも出席した。62歳の彼女は王よりも若く美しかったという。

王妃はもちろんリチャードの味方。英国跡目問題はなかなか決着がつかず、それを見逃す仏王フィリップではない。なんつっても主君なのだ。89年仏王が出席した会議で、リチャードは仏王に膝まづき、彼より王位継承の命を受けたのである。立場は逆転、従わない父は朝敵となってしまった。

リチャードと仏王の連合は、大陸領土を攻めて奪っていった。シノン城に立て篭もった父ヘンリーは、敵連合軍の名簿の中に何と最愛の息子ジョンの名を見た。ついに心が折れた英王は病に倒れ、程なく崩御した。最期を看取ったのは庶子ジョフロア他わずかだった。

同年9月3日、ウェストミンスター大聖堂で獅子心王リチャード1世の戴冠式が行われ、その準備一切は解放された67歳の母が仕切った。翌90年英王と仏王は、第3回十字軍のための同盟を組む。アリエノールの長年の理想はここに実現したかに見えた。

下はウェストミンスター大聖堂のリチャード1世像