【社長通信】「心を動かす」ということ
長い夏の後の短い秋が冬を目前にその存在意義を主張しているような映像を見た。先日、ニュースで放映されていた鹿野・漢陽寺の真赤な紅葉である。
気のせいか、この秋はいつもより紅葉が鮮やかに見える。厳しい寒さの予兆かもしれない。
今年も残すところひと月あまり、緊張感をもって職責を全うしたいものです。
さて、私は社内で2番目の後期高齢者ですが、年々1年が過ぎるのが早く感じる。
なぜなのか?調べてみました。
この現象を心理学的に説明したのはフランスの哲学者・ポール・ジャネーという人で、〈ジャネーの法則〉と言う。
つまり「主観的に記憶される年月の長さは年少者にはより長く、年長者にはより短く感じられる」という現象を、心理学的に説明したものです。
例えば、50歳の人にとって一年の長さは50分の1ほどですが、5歳の人にとっては5分の1に相当します。つまり、50歳の人にとっての10年間は、5歳の人にとっての一年に当り、5歳の人にとっての一日は、50歳の人にとっての10日に当たることになる。
簡単にいうと、〈ジャネーの法則〉は「生涯のある時期における時間の心理的長さは年齢の逆数に比例する(年齢に反比例する)ということです。生きてきた年数によって一年の相対的な長さがどんどん小さくなることによって、時間の経過が早く感じるというわけです。
その他の要因としては、体験の有無があります。人は経験したことがないことをやっているときは、それが強く意識に残り時間が長く感じます。
反対に、慣れてしまうと時間の長さが気にならなくなり、あっという間に時が過ぎたように感じます。子どもの頃は初めて体験することばかりで、毎日が新鮮で新しい出会いや発見があります。
しかし、大人になるにしたがって、新しい経験をする機会が失われます。大人になると時間があっという間に過ぎ去ってしまったと感じるのは、日々の生活に新鮮味がなくなるからという考え方もあるようです。
いつまでもなぜ、どうしてと、日々好奇心旺盛に生きていきたいものです。
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最後に、私の趣味、好奇心の基でもある読書から、私が心動かされた歌人の論評(要約)を紹介したい。
現代人が1日に受け取る情報量は平安時代の人の一生分に当たるそうです。「平安時代人一生分」の私の今日1日・・・を毎朝想う。情報が日々、私たちの目を、耳を、脳を、恐ろしいレベルの量と速さで上滑りしていく。それに対して私たちは耐性ができているが、耐性は感性の鈍麻と表裏一体。例えば、ロシアによるウクライナ侵攻から9か月、やむことのないその報道は流れ去る情報になりかけていないだろうか、「うた」の心は動いているか。
「避難した妊婦の出産どうするの」臨月の娘(こ)はつぶやきて黙す 大曾根藤子
臨月の人が、ウクライナの報道の中に同じ妊婦の人を見て心を寄せる。
プラカードを日除け代わりにするあいだ太陽に見せていた「NO WAR」平安まだら
終わらない戦争やその報道に疲弊せず、心の動きをしなやかに詠いえている
と締めくくっていた。
混沌とする現代社会にあって、心に刺さる歌人の言葉である。「ボーっと生きてんじゃねーよ」と喝を入れられたようで、気持ちがシャンとした。
代表取締役 加藤慶昭(2022年11月15日記す)