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善立寺ホームページ 5分間法話 R⑦ R4.12.1日更新

2022.11.30 07:29

  妙好人 浅原 才市(みょうこうにん あさはらさいち) ―その③

 前回に続いて妙好人・浅原才市さんについて紹介します。

 今回は最初に、2017年、浄土真宗本願寺で開催された第25代専如門主の伝灯奉告法要の初日に、ご門主が全国の門信徒に向けて「念仏者の生き方」と題する「ご親教」というメッセージを述べられましたが、その一部を紹介します。

 私たちは、日常、ありのままの真実に気づかず、自分というものを固定した実体と考え、欲望の赴くままに自分にとって損か得か、好きか嫌いかなど、常に自己中心の心で、物事を捉えて生活を送っています。その結果、自分の思い通りにならないことで苦しんだり、争いを起こしたりして、苦悩の人生から一歩たりとも自由になれないのです。

このように、真実に背いた自己中心性を仏教では、「無明煩悩」といい、この煩悩が私たち迷いの世界に繋ぎ止める原因となるのです。

 中でも、代表的な煩悩は、「むさぼり」・「いかり」・「おろかさ」の三つで、これを三毒の煩悩といいます。

 阿弥陀如来さまは、我執・我欲の世界に迷い込み、そこから抜け出せない私を、そのままの姿で、救うと、働き続けていてくださる仏さまです。

 私たちは、阿弥陀如来さまのみ教えを聞かせていただくことで、自分本位にしか生きられない無明の存在であることに気づかされ、できる限り、身を慎み、言葉を慎んで、少しずつでも、煩悩を克服する生き方へとつくり変えられていくのです。それは、例えば、自分自身のあり方としては、欲を少なくして足ることを知る「少欲知足」であり、他者に対しては穏やかな顔と優しい言葉で接する「和顔愛語」という生き方です。

 たとえ、それらが仏さまの真似事と言われようとも、ありのままの真実に教え導かれて、そのように志して生きる人間に育てられるのです。

 このことを親鸞聖人は、門弟に宛てたお手紙で「(あなた方)は今、すべての人びとを救おうという阿弥陀如来のご本願をお聞きし、愚かなる無明の酔いも次第にさめ、むさほり・いかり・おろかさというとい三つの毒も少しずつ好まぬようになり、阿弥陀如来の薬をつねに好む身となっておられるのです。(以上、メツセージの一部抜粋)

 浅原才市さんは、お寺参りを続けられる中で、自分の物差しを捨て、自身の固定観念を捨てて仏様の教えに遇うことの尊さと喜びに目覚められたと思われます。いくつかの詩を次に紹介します。

 〇あさまし あさまし あさましは どこにいる あさましは ここにおる

  この才市 あさまし あさまし あさましが くよくよと 

  あさまし あさまし あさまし

 ○あさましの妄念は 常の習いなり

  瞋恚(しんに)なり 愚痴(ぐち)なり 貪欲(とんよく)なり 

邪見なり あさましなり 鬼なり 邪見なり これがさいちがこころなり

 あさまし あさまし あさまし 

 ○わたしのうたがい うみよりふかい わたしのうたがい やまよりたかい

  わたしのうたがい せかいのごとく それにおじひが くっついて 

  くださるおじひが なむあみだぶつ ご恩うれしや なむあみだぶつ

 ○ありがたい ありがたいのは 才市じゃないよ

  ありがたいのは おやさまで おやさまとは なむあみだぶつ 

  これに才市が すくいとられて なむあみだぶつ

 ○これ才市 よろこびはあてにならぬ 消えて逃げるぞ

  逃げぬお慈悲は親の慈悲 なむあみだぶつに心とられて

  これに才市が助けられ ご恩うれしや なむあみだぶつ

 ○仏の心はふしぎなものよ 目には見えねど話ができる

  仏と話をすることは 称名念仏、これが話よ

 ○大悲の親は、ふしぎな親で 目には見えねど 声でしれるよ

  南無阿弥陀仏で、親がしれるよ

 ○ここにふしぎな声がする  南無阿弥陀仏の声がする

  わしの心の森木のなかで さえづる声のおもしろさ

  これを人にも聞かせたい

 ○しあわせものは 才市であります 才市は果報者であります

  ごかいさんさまに うきよのみちで であうたが才市 

   あなたのご恩があればこそ ご恩うれしや 南無阿弥陀仏

  

  島根県太田市温泉津町小浜にある安楽寺に参拝すると、境内入り口に才市さんが詠んだ仏さまの教えに遇った喜びの句が碑に刻まれています。

○かぜをひけばせきがでる才市がご法義のかぜをひいた念仏のせきが出る出る

阿弥陀如来の大きなみ手の中で生かされて生きる嬉しさが、「ご恩嬉しや南無阿弥陀仏、なーまんだーぶ、なーまんだぶー」とまるで咳が出るように口からこぼれることだわいと心境を詠まれた句であると味わったことでした。

※JR山陰本線・温泉津駅から徒歩で数分、才市さんの生家が見学できます。生家からさらに徒歩で10数分の地に安楽寺さまがあります。宿泊地としては名湯・温泉津温泉をお薦めします。  □本年最後の法話をお届けしまた。皆様にはお健やかにお過ごしいただき、どうぞ佳きお年をお迎えくださいますよう念じ申し上げます。次回は令和5年2月1日にお届けします。