直販農家は畑を舞台にした食のプロデューサー|直販農家のためのFun×Fanマーケティング講座⑫
皆様、こんにちは。大平恭子です。
「直販農家のためのFun✖Fanマーケティング講座」は、今までの実践や講演セミナー内容、指導アドバイス事例を、大平流に連載ブログ形式でお届けするものです。(今までの内容はこちら。)本編12回目のテーマは、「直販農家は畑を舞台にした食のプロデューサー」です。
今まで、直販農家としての理念やビジョンの設定からマーケティング戦略、そしてコミュニケーション手法に至るまで、実際の事例を交えながらお伝えしました。今回は最終回ということもあり、改めて本質的なところに立ち返り、お伝えしたいと思います。
◆食産業規模における一次産業の割合
一般的に「食」は人が生きるための営みであり、それを支えるのが「農業」という視点にたつと、食と農は一体化しているかのような印象を受けます。しかしながら、産業という観点にたつと、図1(※注1)のように一次産業の市場規模は全体の10%余り、食産業は2次、3次産業の規模は末広がりに広がっています。そして、超高齢化社会の到来、そして農業従事者の高齢化と後継者問題を見ても、この割合は大きく変わることはないと思われます。
<図1>
1月下旬に東京で行われた「直販農家のためのFun×Fanマーケティング講座」において、このグラフを示し、参加された方に感想や意見を聞いたところ、「もっと一次産業の割合が高いと思っていた」、「作るよりも、それを使って何かするほうが儲かる」、「グラフで見ると、生産と消費(3次産業)の距離が遠く感じる」「もっと農家が積極的に乗り出していくことが、農業の発展につながる」など、それぞれのお立場で様々なお答えが返ってきました。
どれもその方の感性でおっしゃっており、間違いではありません。そして、その時、私がお伝えしたことは、「直販する」ということは、こういった枠組みにとらわれず、「生産と消費の距離を自らの力で縮める」ということ。さらに直販農家の最大の強みとは、自分の理念を基に、「自分だからできること」に集中し、主体的に自身の市場顧客を創造することができる、ということでした。
これに関してVOl.7では、和歌山の梅農家さんの事例をあげ、繋がるお客様にとって単に農産物を作るのが「農家」ではなく、その先のおいしい食卓や笑顔、さらには、幸せを耕すことも「農家」だからできる醍醐味であると記しています。
◆直販農家が生み出せる「感動」とは?
それでは「生産と消費の距離を自らの力で縮める」、「お客様の食卓や笑顔、幸せを耕す」ために欠かせないものは何でしょうか?
それは、「感動」です。
「食べる」という行為を通じて人の五感が刺激された時、あるいは今までの「当たり前」が覆された時、「今まで知らなかった!」「とびっきり新鮮!」「本当はこんな味だったのね!」「野菜のエネルギーを感じる!」などの表現とともに、心の中で宝物のように光輝き、記憶として刻まれるのです。
そして、その感動の舞台は「畑」。その畑を装置とし、様々な出来事や感動ポイントについてストーリーとエンターテイメント性をもって送出し、食の世界につなげることができるのは、ほかならぬ直販農家の皆様なのです。
以上、12回ににわたり「直販農家のための Fun✖Fanマーケティング講座」をお送りしました。Funは「楽しむ、楽しいという感情を持つこと」。これは顧客や地域社会との関係性の中で、普遍的な「豊かさ」の根源でもあります。そして、Fanは「熱心な愛好家や支持者」のこと。畑から始まる双方向のコミュニケーションを大切にし、日々の活動を積み重ねていくことこそがFanづくりの第一歩となります。この連載は、これらを戦略的に創出するための一連の活動のあり方や手法についてお伝えをしました。
3か月にわたり、お読みくださりありがとうございました。皆様の気づきと自信、そして挑戦に対する具体的行動に繋がりましたら幸いです。
※注1;農水省HP「農業・食料関連産業の経済計算」平成27年度(平成29年3月28日公表)
【プロフィール】 ブランドストーリー 代表 大平恭子
食農連携の分野で「売り方・食べ方で人と地域を活性」をミッションに、付加価値化と魅力増大を図る専門家。生産者・農産物ブランディング、食事業者に対する健康食材コーディネートやレシピ開発、加工品開発支援、講演セミナー等を行っている。
6次産業化プランナー、野菜ソムリエ上級プロ、アスリートフードマイスター