「蝶々結びの掟」~三輪忍からの挑戦状~
三輪忍が動画投稿をしなくなり、ツイッターの更新も途絶えてから数日。
あなたのもとに一つの通知が届いた。youtubeからだ。
「新着動画が届いています」
チャンネル登録をしていると、そうした通知が届く。違和感もなく、詳細を見た。
「三輪忍を殺した犯人は誰か」
冗談にしては少々過激なタイトルだ。一体どこのチャンネル動画……三輪忍、本人だ……。
好奇心に抗えず、動画を再生した。
そこには、ある一室に一人の男が映し出されていた。一人暮らしの部屋だろうか、生活感のある様子だった。ただ、窓がないのか、撮られた時間をそこから特定することはできそうにない。服が半そででないことから、真夏日ではなさそうだ。
机の上にはデスクトップパソコン。マイクもある。男はパソコンの前で何やらキーボードを叩いている。映像は見下ろすような形で撮られており、画面を凝視している男性の顔は見えない。時折、肩を回したり、目頭をマッサージするような仕草もあるが、視点は一定のままだ。
これが一体……。
しばらくその様子のまま動画は続いていた。が、次の瞬間、仮面とマントで体を隠した者が現れ、男を一殴り、倒れた背中にナイフを突き刺した。
一瞬の出来事で、理解するのに時間がかかった。これは……本当に殺しているのか!?
仮面の者は懐からスマホのようなものを取り出し、カメラに向かって何やら操作をしだした。そこで、カメラの様子は終わった。
数秒後、テロップが流れた。
「深く刺したその後に
ゆっくりとゆっくりと
糸を通して
綺麗な血がこぼれないように
塞いでゆけるかな」
こうして「蝶々結びの掟」が始まった。
そう、これがほんの始まりであることに、そのときのあなたはまだ、気づかない。
血と酒と、煙草の匂いが纏わりつくその場所に、蝶がひらひらと舞(待)っている。