2015年12月22日(火)『国立劇場の四谷怪談、幸四郎伊右衛門、染五郎のお岩』
国立劇場の四谷怪談を観に行く。冬に怪談噺とは、妙だと思ったが、仮名手本忠臣蔵と、表裏の関係で、初演の頃は、忠臣蔵の前半と、四谷怪談の前半を同じ日に演じ、翌日、忠臣蔵の後半と、四谷怪談の後半を見せたということでもあり、冬でも観にいったのである。
伊右衛門を幸四郎。お岩を染五郎の親子が演じた。いつもセリフが聞き取れない幸四郎だが、鶴谷南北のセリフが短く、強烈な言い回しが多いので、よく聞こえたのだと思う。幸四郎が、こんなに手強くセリフが言える役者だったのだと、認識を新たにした。幸四郎の色悪ぶりは、ニンにあって、ぴたりとして、いいできだった。
染五郎のお岩は、元々女形ではないので、伊右衛門に疑いの眼差しを持ってから、毒を飲んで、形相変わって、そして首を刀で刺して、恨みを残して死に、幽霊になって化けてでてからも、怖さに、甘さがなく、怪談物として、非常に怖く、堪能した。疑いと共に、顔の形相が変化していく、この変化、メイクも工夫されていて、白塗りに、少しネズミ色を混ぜ、シミそばかすを細かい点で描いたメイクが効果的だった。目を細くしたのも、怖い一因だったと思う。勘三郎のお岩は怖かったが、伊右衛門が、家の蚊帳を、質に持っていく際、お岩がしっかりと蚊帳を持ち、畳の上を、引っ張られるように、ずるずると動くので、観客から笑いが起きたものだが、今回は、笑い声は起きなかった。勘三郎の明るい普段のニンが、お岩の顔が崩れても、持続するため、子供のための蚊帳を、無慈悲にも伊右衛門が持ち出そうとするのを、止めるため、蚊帳にしがみつき、引っ張られる姿が、コミカルに見えて、笑いが起きたのであるが、染五郎には、そんなニンはないので、徹頭徹尾怖いのであった。
二階席から観たので、提灯抜けの様子が、観察できた。提灯の真ん中に、板がおいてあり、そこにお岩がのっていて、ロープで、引きずり出されるという仕組だった。女子の首に手ぬぐいを巻き、一緒に、ロープで引っ張り、お化けが女性を幽界に引っ張って行くシーンは、面白かった。