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鈴木桂一郎アナウンス事務所

2015年12月23日(水)『歌舞伎座12月、昼の部、十種香、赤い陣羽織、関扉』

2015.12.23 10:05

昼の部は、十種香、七之助の八重垣姫、初演の時も観たが、その時よりも、情が出てきたが、それでも、淡白な味の七之助には、まだ勝頼への、情愛が薄い。切腹して死んだ、勝頼が、すぐ横にいるのに、よそよそしい。演技が一通りなのだろう。こってりとした情愛に溢れた雀右衛門が懐かしい。児太郎初役の濡衣は、色気がまるでなく、視線が強すぎて、怖い。身体も揺れすぎ、これでは、折角、松也の白塗りの勝頼は綺麗だが、可哀想だ。松也もしどころがなく可哀想。

赤い陣羽織は、中車のために、持ってきた演目だが、演技が大袈裟で、歌舞伎役者のつつしみが足りない。歌舞伎の寸法にあっていないので、最初こそ、メイク、セリフ術で引っ張れるが、中盤以降中弛みした。門の助のおやじは、歌舞伎役者として、弾けていて、好演だった。

昼のお楽しみは、関扉。常磐津、竹本の掛け合いでスタートしたので驚いた。関扉は、天明時代を代表する常磐津の名曲のはずでなかったっけ。二つ合わされば、ボリュームは増すので、迫力はあるし、常磐津と竹本の、違いも分かるし、勿論三味線の音も違うので、楽しいのだが、江戸で生まれた常磐津の軽妙な雰囲気と、大阪で生まれた竹本の重い雰囲気では、全く趣が違うし、ガラリがらりと雰囲気が変わり、常磐津の雰囲気の中に、身体と耳が浸れないマイナス面を強く持った。松緑の軽妙な踊りも、そう見えなくなってしまった感じがした。  

玉三郎の墨染はなんと美しいのだろう。桜の精だから、人間ではないのだけれど、桜の精があるとすれば、まさしくこれだと思う、幽玄な雰囲気があって、見ているだけで、美しさに引きずり込まれる。幻想の美しさ、桜の精を、玉三郎の肉体で、見せてもらえた感じがした。七之助の小町、この人は、何を演じても、セリフが同じ。松也も、白塗りの顔は美しいが、身体の動かし方、表情もあまりなく、役がかわっても、セリフの言い回しも同じで、単調である。