No.63 著作権は想像以上に厳しいと学んだ失敗談 2022.12.07 21:15 こんにちは、鬼川こるくです。ご覧頂きありがとうございます。【🍄はじめに🍄】最近SNSなどでAIアートへの関心が高まっていますね。当サイトではいつもまったり楽しい話を取り上げたいと思いつつ、絵を描いている者の一人として無関心というわけにもいかない状況ですのでこの話題について触れさせて頂きたいと思います。今日もお付き合い頂けましたら幸いです。画像生成AIを使用することについて様々な意見があることと存じますが、私はNo.60の記事でも書かせて頂きました通り、AIが無断で世界中のクリエイターの作品を学習し搾取する構造であるにも関わらず何の還元もないことや、倫理的な問題が多発していることなどから、現状のお絵描きAIに対して反対の立場を取らせて頂いています。絵を描いている側の不快感「お気持ち」で反対といった単純な話ではなく、最近はAIに学習させた元絵と酷似した画像を自分で描いたと偽り、作者側が被害を声に出すケースがいよいよ増えてきましたし、AIが描いたことを隠して販売や有償リクエストを募集する人がいることで、詐欺被害に遭うケースも目立ってきました。もしかしたらこの記事を読んでくださっている方の中にも被害に遭われた当事者の方や、応援しているイラストレーターさんが被害に遭われて憤りを感じていらっしゃる方、その他にも、AI画像の投稿の早さから閲覧がAI画像だらけになって検索に困っているという方もいらっしゃるかもしれません。または、誰にも迷惑をかけずにAIで画像生成する研究を真剣にされている方もいらっしゃるかもしれません。AIの技術自体は凄いことだと私も思います。ただ、あまりに悪用が目立つため、AIでの生成を真剣に取り組まれている方々にとっても不幸な状況だといえます。現在、AI学習や著作権を巡って「現行法では合法だ!」「いや、そうとも言い切れない!」と専門家の方々の間で議論が交わされていて、それらの記事に目を通したものの、このブログで書けるほど私はまだ理解できていません。ですが逆に言うと、専門家の方々の間でさえそれだけ争論になるほど今はグレーの状態であること。そして、アメリカでは訴訟が始まっていること、そして先日のクリスタ同様AdobeでもAI生成画像機能を入れることを巡って海外で現在炎上中で、もうその部分だけでも私にとっては十分すぎる程避ける理由になり、自分の大切な作品に現状の画像生成AIを使用しないと決めています。特に使いたい機能もありませんし…。仮に金銭を絡ませずSNSに投稿するだけだとしても、たとえば偶然AIが生成した画像が海外のクリエイターの作品に酷似してしまった場合、訴訟大国の方々から訴えられる可能性もあるわけで、使用するのはリスクが高いと言わざるを得ません。偶然ではなくAI学習させたのなら更にたちが悪いです。これは更にリスクが高いでしょうね。(国内でも、自分の作品をAI学習させた場合はあらゆる手を尽くして訴訟すると明言されているイラストレーターさんもいらっしゃいます。私も同じ思いです)ただ、有名なイラストレーターさん、いわゆるインフルエンサーの方の中には現状の画像生成AIを推進している方々がいるのも事実です。その方々自身の考えがあって発信されていることを私ごときがとやかく言うのははばかれますが、影響力が大きいことは無視できず、ファンの方々の中にはその危険性を知らずに「このイラストレーターさんが使っているなら大丈夫」と軽く捉えて使用されている方もいるであろうことは同じ絵を描く仲間として勝手ながら危惧しております。また、少し前までプロンプト(女の子、可愛い等の単語を入力してAIに指示をする)は今後長文になり競争が激化していくのかなと個人的に考えていましたが、どうやらそれもAIの成長によって簡略化されているとかなんとか…?プロンプトがどうであれ、絵を描いている人の場合は自分のラフ画でAIを使って生成できてしまうのですから、こんなにグレーの状態で急いでファンの方々に勧めなくてもいいんじゃないかなと思います。クリーンなAIが出たときに道具として使いこなせるよう、地道に画力や絵の知識を磨いておこうねと発信してくださったらどれほどいいかと願っております。【🍄著作権に関する自分の失敗談🍄】そして前置きが長くなり申し訳ございません。今日はここからが本題です。お付き合いくださりありがとうございます。上記でも述べました通り、現段階でAI学習の著作権について書けるほど私は理解できておりませんので、ここではAIは一旦置いておいて、普通に人様の画像を使用するのはこんなにも厳格な規定があるよということを自分の失敗談を通してお伝えできましたら幸いです。それは、拙作の時代劇BL漫画『華咲け!お江戸黒咲家』の第3話のあとがきで使用する予定だった1枚の画像に関することです。2022年4月に電子版の配信が叶ったこの漫画。ご覧くださった皆様ありがとうございます…!第3話では「柳原土手(やなぎはらどて)」という言葉が出てきます。柳原土手というのは江戸時代、古着屋がずらーっと軒を連ねていた神田川沿いの土手のことです。大雑把ではありますが場所はこちらです。漫画の世界観をご紹介するために描いたこちらの略図で場所をご確認ください♪ ご覧頂きありがとうございます。第3話では、主人公の藤之丞(ふじのじょう)がその土手で布を買ったというエピソードがあり、ページ数の関係や当時の私の力不足で作中に柳原土手の絵を描けなかったため、あとがきでその様子が分かるように書こうと思いつきました。そして、せっかくならば自分で描くよりも江戸時代に実際に描かれた柳原土手の絵を使用した方が伝わりやすいかなと考え、検索して発見した画像を保存しました。普段なら当然、人様の絵を無闇に保存したり使おうという発想には至りませんが、①その絵は江戸時代に描かれていることから作者さんも死後70年以上経過していること、②この絵を単体で売ろうというのではなく、あくまで漫画のあとがきで使用するだけなので引用元をしっかり明記すれば引用の範囲内として許されると判断したこと、更に、③自分が持っている江戸に関する雑誌にもこの絵が掲載されていたことで心理的なハードルが下がり私も使っても大丈夫だろうと安易に考えてしまったことから、私はあとがきにその絵を使用して原稿を入稿しました。その結果…!配信前の原稿チェックの段階でストップがかかり、この画像の著作権はクリアになっていますかと質問されました。それを受けて慌ててその絵を貯蔵されている公益財団法人様に問い合わせたところ、私の認識が完全に甘かったと反省することになりました。【🍄私の問い合わせに対するご返答🍄】人様の絵を掲載させて頂くためにはどのような手続きが必要なのか、一つの例として、この時お返事頂いた内容を箇条書きで紹介させて頂きますね。●どのような刊行物に掲載する予定なのか、簡単な企画書をA4判1枚程度にまとめて提出する●その企画書には、執筆者名、書名、サイト名(ブログURL)、公開年月日、価格、配布先など、特に画像を掲載する箇所について明記する●具体的に、画像を使う箇所をイメージできるゲラなどがあれば提出する●企画書に基づいて審査が行われ、無事許可がおりたら正式な申請書類を提出する●「複写物の掲載・放映・展示・復刻出版規約」の第1条 に基づいて、出版物等に掲載する場合は、掲載料として原則として1点(画像1カット)につき10,000円(税別)を支払う義務がある●掲載箇所にクレジットとして所有者を明記する●掲載物の刊行時には、1部寄贈するといったように1つの絵を使用させて頂くだけでもこんなにも長い道のりがあることをこの時学びました。初めてのことだったとはいえ、無知な自分に対してとても恥ずかしい思いをしました。その後どうしたかと申しますと、そんなに大変なら無理…というか第3話はR18回のため提出はご容赦ください…💦と断念して、自分で描いたこの絵を使用することにしました。 もし、江戸時代に描かれた絵をご覧になりたい場合は「柳原土手」と検索して頂ければ検索に引っかかりますのでそちらでお楽しみ頂ければと思います♪ということで、今日は著作権の取り扱いに関する失敗談をお話しさせて頂きました。AIはともかく、少なくとも一般的に著作物に対してこれだけ慎重な取り扱いがされているため、法的にグレーの段階で合法を盲信してお絵描きAIを使用するのは危険じゃないかな~と私は考えています。もし絵師さんの中で、流行っているから何となくとか、友達が使っているから自分も…と何となくで使い始めた方がいらっしゃったら、余計なお世話ですが身の安全のためにも今はお絵描きAIに手を出さず、絵の練習をひたすらされた方が良いのではないかと思います。仮にクリーンなAIが完成したとして、絵師がそれを使うのが当たり前の時代に突入した場合、結局絵の基礎をきっちり学んだ絵師同士の壮絶な戦いになりそうだなと…。または、AIとの差別化をはかるためアナログに移行した場合、アナログ界はただでさえ化け物揃いなのでやはり絵の勉強は必要になってきます。それとも突然規制が入ってお絵描きAIが使えなくなったり、お絵描きAIに対抗する自作発言を見破るAIが開発されたりもあるかもしれません。というか今でもSNSで「いいね」がたくさん付いた自作発言の作品も、嘘だと見破っている方も多いです。Twitterをやっていた頃は誰かと比較して密かに落ち込むこともありましたし、数字も気にしていた自分が言うのもなんですが、目先のいいねやフォロワー数に惑わされず、あなた様の絵を大切にしてくださったら嬉しく思います。【🍄ドラッグ🍄】また、現状のお絵描きAIはドラッグに近い印象を私は受けています。絵を勉強し始めの方が手を出したら戻ってくるのは大変だろうと思います。いえ、初心者の方じゃなくても陥りそうですね…。最初は補助してくれるから便利だーと喜んでいても、そのうち技術的な面でも発想の面でもAIの補助なしでは不安になって描けなくなり依存状態、AIに主導権を握られ、いちいち正解を見ないと描けなくなるAI漬け…となりそうです。少なくとも流されやすい私は一度手を付けたらそうなる自信があります。それってどう考えても幸せではないですよね。私は正しい物よりも、童心に返って遊び心を持ったり、自分のどうしようもない醜い部分、愚かな部分も含め、人間らしさを大切にして描きたいです。もしこの記事を読んで、現状の画像生成AIはやばいんじゃないかと思ってくださった方がいたら今すぐ戻ってきてほしいです…。上から目線のお説教みたいに聞こえたらごめんなさい。でも、手を出す時というのは本当に絵を描く人が望む、痒い所に手が届くような補助をしてくれるクリーンなAIが出た時で遅くないです。海外では反対の声も大きく、日本の絵師の中の否定派だけが時代遅れで反対しているわけではありません。新しい物を取り入れることは大切だとしても、何でもかんでも新しい物が良いとは限りません。少なくとも現状の物はリスクが高いです。AIに手を出しそうになっている絵師さんがいらっしゃいましたら今はじっと耐えて、一緒にコツコツ楽しく絵を描いていけたら嬉しいです。うまい下手関係なく、私はあなた様自身の手で描かれた絵が好きです。今日は以上になります。次は明るい話の記事がいいですね。大好きな時代劇のお話や、Twitter時代の楽しい思い出話もしてみたいです♪今日も最後までお付き合いくださりありがとうございました。読んでくださって感謝いたします。それではまた…!