棒高跳の旅 in ドイツ(前編)
今回、筑波大学の八木田春菜選手が春休みを利用して2週間ほど(2018年2月17日~3月3日)ドイツにあるLAZに棒高跳を学びに行きました。今回は2週間のドイツでの出来事をレポートしてもらいました!
ちなみに、LAZは2013年モスクワ世界陸上で優勝したラファエル=ホルツデッペ選手が所属するチーム(LAZ Zweibrücken)の拠点となる施設です
日本で棒高跳を学んだ八木田選手が出会ったドイツでの経験、ぜひご一読ください!
【Day1:2.17sat】
成田空港からワルシャワ(ポーランド)経由でフランクフルト(ドイツ)へ。
飛行機はポーランド航空(LOT)のものを利用しました。入り口で迎えてくれるCAさんがイケメンでニヤニヤしました。ワルシャワまでは父と席が離れ、しかも3-3-3列の真ん中の真ん中。あまり眠れず、11時間とにかく辛かったです…。
ワルシャワに到着し、トランジットは2時間弱。
手荷物検査の効率の悪さ、小売店の雰囲気など、日本ではないことを実感しました。搭乗口の近くにLOTの飛行機をモデルにしたプレイスペースがあり、遊びたかったのですがもうすぐ20歳になるんだよと自分に言い聞かせ、我慢しました。
ワルシャワからフランクフルトまでは約2時間。
小型機でしたが席にゆとりがあり、ぐっすり眠れました。ワルシャワまでは半分くらい日本人だったのですが、この機内はほとんどが外国人。少しドキドキしました。空港に着いた後は電車で10分ほど移動し、フランクフルト中心のホテルに泊まりました。
このホテル周辺の地域は父が以前訪れた時、シャブ中が溢れていた街だったと聞かされ、かなりビビっていたのですが、警察署の前ということもありシャブ中は一人もいませんでした。しかし駅のいたるところには落書きがあり、物乞いにも話しかけられました。
治安は悪いようです。
夕食は駅にあるソーセージ屋さんで本場フランクフルトのソーセージを食べました。本場のソーセージはやっぱり美味しかったです。ホテルに戻り、お湯の調整が難しいシャワーと格闘したのち、眠りにつきました。
【Day2:2.18sun】
駅内のパン屋で朝食、その後フランクフルトの街を30分ほど散歩しました。
ヨーロッパの街並みがとてもきれいでした。しかし治安はやはりよくないようで、割れた酒瓶がいたるところに散らばっています。朝から叫びながら歩いている酔っ払いも多数。日本がいかに治安のいい国なのか、実感しました。
ドイツは車社会ということで、この日からの移動には車を使います。
父が国際免許を取得していたので、レンタカーを借りました。かわいいミントグリーン色のフランス車です。左ハンドルに右側通行というハンデがあるのに、スピードが出るからという理由で父は不慣れなマニュアル車を借りてきました。自分の父親ですが、この人は頭おかしいのかと思いました。
先述したように、ドイツは車社会です。そのため、アウトバーンという高速道路が何本も走っており、無料で乗れます。そしてスピード制限もないので、日本では見られないような速さの車に追い抜かれていきます。
かれこれ2時間くらいで高速を降り、トレーニングをさせてもらう施設のある、ツヴァイブリュッケンという街に着きました。前日に泊まったフランクフルトとは違い、とても田舎でのどかな街です。
トレーニングをさせてもらうのはLAZというチームの施設で、モスクワ世界選手権チャンピオンのラファエル・ホルツデッペの本拠地です。
街に到着したはいいものの、施設の場所がわからず、なかなか目的地にたどり着けません。道端を歩いていたおじさんに話かけ、なんとかたどり着けました。
しかしこの土日はドルトムントでドイツ室内選手権が行われていたこともあり、施設にはだれもいません。中には入れませんでしたが、施設の立派さに驚きました。また、施設の横にある競技場にはマットが3つあり、バックのマットは両側から使えるので全方角で跳ぶことができます。アスリート・ファースト、素晴らしいです。
施設には翌朝行くことを決め、これから約2週間住む貸別荘がある街、ホンブルクで昼食をとりました。しかしこの日は日曜日だったのでほとんどの店が閉まっており、レストランを見つけるのに苦労しました。そんな中でも空いていたドイツ料理屋に入りました。量は多いし、隣の人は花瓶みたいな大きさのグラスで白ワイン飲んでいるし、チップ文化だし、驚くことが多かったです。若干胃もたれながら貸別荘を目指しました。
しかしこれがまたなかなか見つからない。
そんな中父は「やっぱり準備って大事だな」と言い出すので殴ってやろうかと思いました。迷いつつたどり着くと大家さんが待っていてくれました。借りた家は2LDK。床暖房・Wi-Fi完備、調理道具もかなり揃っていて、各部屋にはベッドが二つずつ。大家さんもとてもいい人で、広さも十分。普段の一人暮らしよりいい生活ができます。宿泊料は12日間で約9万円。お値段以上すぎます。
食事は自炊をするので買い出しをしたかったのですがなにせ街が死んでいる日曜日。どこも開いていないので夕食は持参したそばとインスタントの味噌汁にしました。
夜7時前には眠たかったのですが、父が「時差ボケ対策のために9時までは頑張れ」というので広報委員の仕事をしながら睡魔と戦っていました。しかし頑張れといった張本人は8時半にいびきをかき始め、ぐっすり寝ていました。やっぱり殴った方がよかったのかもしれません。
【Day3:2.19mon】
この日の朝は4時半に起きてしまいました。時差ボケです。
前日8時半に寝やがった父も早く起きており、家から徒歩4,5分の場所にパン屋さんで、朝食を買ってきてくれました。これから毎朝このパン屋に朝食を買いに行きます。朝食を食べ終わり、少しゆっくりした後に練習に向かいました。家から車で約20分かかります。朝10時ごろに到着したのですがまだ誰もいません。
周辺をウロウロしていると背の高い男の人に話しかけられました。話を聞くと同じ施設でトレーニングを行うDenisというイスラエル人で、施設の鍵を持っているコーチは車が故障してしまって遅れるそうだと教えてくれました。
コーチがなかなか来ないので彼と英語でいろんな話をしました。父が。
私はしばらく??がいっぱい浮かんでいました。
その後父がどこかへいってしまったので二人で話しました。日本語でHow are you?はなんていう?My name isは?数字は?とたくさん質問されました。ノートとペンを駆使し、なんとかコミュニケーションをとりました。反対に、ヘブライ語の数字を教えてもらいましたが、一生のうちで使うときは来るのでしょうか。
跳躍のビデオを見たい、と言われたのでベストを出した時の動画を見せました。突っ込みの局面がGood positionと言われ、ちょっと調子に乗りました。そんなことをしているうちにコーチがやってきました。Alexというプロのコーチです。
中に入ると施設の立派さに圧倒されました。ポールのマットが二つ、ハイジャンのマットやWT器具も揃っていて、直線走路は約100m、その奥には砂場もあります。暖房も完備されており、半袖でも汗をかくほど暑いです。
この日は3日ぶりの練習ということで、ポールワークと10歩の曲げのみを数本で終わりました。
練習後は大きなホームセンターやスーパーに買い物に行きました。海外は一つ一つの大きさが馬鹿です。それにいちいち驚きながら買い物をしました。一通り食材が揃ったので、夕食は自炊をしました。こういう時は普段自炊をしていてよかったなと思います。美味しいご飯が食べられました。
父はこのドイツ合宿の様子をFacebookに載せているのですが、○○がいいねしてるよ、○○からコメント来た、といちいち報告してくるので正直うざいです。54歳のおじさんですが、心はJKなのかもしれないです。
【Day4:2.20tue】
まだ薄暗い中、パン屋に父と行きました。
手のひらからはみ出るほどの大きさのパンを4つ買ったのですが2.20ユーロ、約300円でした。とても安いです、そしておいしい。前日に買ったチーズやハムをはさんで食べました。昨日スーパーでもらってきた広告を使ってドイツ語の勉強をしましたが???です。
この日も朝10時から練習。
施設につくとなんとHoltzdeppeとKarstenとDaniel、そして彼らのコーチでドイツのナショナルコーチでもあるTivontchikがやってきました。普通にあいさつとして握手を交わし、テンション上がりました。
練習はアップをしたのち、10歩で跳びました。
私はポールワークで左手が横に抜けてしまう癖があり、Alexがそこを重点的に指導してくれました。
とにかく右手、右手を強調していけ、身体の上の方を張るようにと言います。
ポールを引っ張ってもらう、ポールにぶら下がって後ろから押してもらう等の練習をして少しずつ良くなってきましたが、まだまだ反復が必要です。10歩はポールワークでの右手を意識しながら曲げました。その成果なのか、突っ込みが高くなり、スイングもしやすくなりました。
突然余談ですが、LAZで使っているBenzというドイツ製のマットの落ち心地は今までのマットで一番いいです。
10本ほど跳び、鉄棒のドリルを行いました。
ただ前後に振るだけの練習なのに胸が全然張れません。前から骨盤、後ろから肩甲骨を押してもらいました。
ホルツデッペらは試合明けということでドリルや体幹、走練習をしていました。貸し切りで跳んでいたので彼らにじっくり見られます。彼らは何とも思ってないでしょうけど、私はとてもドキドキしました。これも経験です。
この日は午後も練習をしました。午前に質の高い練習を行ったので流しと補強で終わりました。
LAZでは高い突っ込みをかなり重視しているようで、初心者には徹底的にドリルをやらせていました。
今回こちらのクラブで練習させていただくにあたり、窓口になってくれたViewegに会いました。
元やり投げ選手で世界選手権にも出場したそう。縦にも横にもでかいです。
また、この施設には地域総合型スポーツクラブの拠点になっており、そのクラブに所属している人たちもたくさん来ています。会員数はなんと500人もいるそうです。
ちびっこたちがいろいろなスポーツをする横で20代くらいの若者が直線を走ったりバウンディングをしたりしていました。
これもなかなか日本では見られない光景で、日本が目指したい生涯スポーツの在り方です。
この環境にも慣れてきて、疲労の質が生活のものからトレーニングのものに変わってきたように感じました。
現在時刻9時半、父は疲れたようでリビングで寝ています。
これでは時差ボケが治りませんね、ざまあみろ!
【Day5:2.21wed】
今日も朝10時から練習をしました。メニューはスプリントとWTでした。
外は風が吹いていてとても寒いのですが、暖房ガンガンの室内施設では走ると汗をかきます。
施設内には前日も練習をしていたKarstenとDanielが跳んでいました。
ベストは5m76と5m65だそうです。すごい…。
改めて見ると思っていたより背が大きく、190cmくらいあります。バスケやバレーの選手並み、陸上だったらハイジャンでしか見たことない背の高い選手がポールを持って跳んでいると圧巻です。
6歩のポールワークのグリップが私の全助走より高いのではないかと思いました。そのあとは16歩に助走を伸ばしていました。
使っているポールは5.00か5.10だそうです。そしてかけているバーはおそらく5m70。見ていると思わずおぉ!と言ってしまいます。
とても背が高い彼らも高い入りのためのドリルを徹底的に行っていました。
じろじろ見ていて感じたのは、絶対に左手が落ちないことと、踏み切りの時の身体は/(一直線)くらい真っ直ぐということです。
2時間ほどで練習を終え、帰路へ。
家があるホンブルクの街中で昼食を済ませ、少し街を散策しました。
Day2で死んでいた街ですが、今日は人がたくさんいました。
今までは何か買うにしてもすべて父に任せきりだったのですが、初めて自分で支払いをしてみました。相変わらずドイツ語はわかりませんが、特に問題なしでした。
私たちが暮らしている貸別荘は2階建てで、昨日から上の階に入居者がやってきました。そのせいなのか、Wi-Fiのつながりが悪くなり、私と父のイライラが少しずつ募っています。
知らない間にスマホ依存症になっていますね。
明日からは静岡陸協の理事長が合流します。
この5日間は父と二人だったので好き勝手にやっていましたが、これから1週間は少し気が引き締まる思いです。
そして明日はRest日。ドイツの街を堪能しようと思います。
【Day6:2.22thu】
今日はrest日でした。
父が理事長を車で迎えに行ったため、私は大家さんに自転車を借りて一人で買い物に行きました。
自転車に乗ってから気づいたのですが、ブレーキが手ではなくペダルを逆漕ぎしないとかかりません。そのうえ右側通行、家から街まではほぼ下り坂です。
一人でわちゃわちゃしながらも迷うことなくたどり着けました。店ではとにかくいろんなものが安い。お土産をいくつか買いました。1時間ほど滞在しました。
帰り道、上り坂と強い向かい風が待っていました。買い物中は寒くて震えていたのに家に着くと汗をかいていました。いいアクティブレストになりました。
そしてなんと、24日は試合に出ることが決まりました。
一生に一度はやってみたかったロードジャンプ、というか、ショッピングモールでの試合です。
そのため、明日は助走を伸ばして距離や持っていくポールの確認をします。
試合で結果を出したいのはもちろんなのですが、初めての経験なので何よりも雰囲気を楽しみたいと思います。
ショッピングモールでの試合、いつか日本でも開催したい…!
【Day7:2.23fri】
今日は午後練だったので、試合に向けてポール運搬用品を買いに行きました。
日本では車にキャリアをつけて運搬していますが、今回借りたレンタカーはキャリアがついていません。そのため、ポールを筒状のスポンジでくるんで前後をひもで結んで運ぶことにしました。
結果は大成功。なんとか行けそうです。
練習は半年ぶりに14歩で跳びました。
Day4で右肩を伸ばしきる高いポールワークを行った成果が出て、以前より高く入れるようになりました。また、助走もよく走れて冬期練習の成果を感じられて満足です。
明日が試合なので、10歩と14歩合わせて5本ほどで終わりました。
試合はinternationalということでユニフォームに日の丸をつけろとやたら理事長と父が言います。
そのため持ってきた学年ユニフォームにお手製日の丸をつけました。
明日はとても貴重な機会なので、テンション500%で頑張ります!
次回、後編!
急遽決まった、ショッピングモールでの試合はいかに!?
2週間のドイツ旅、まだまだ続きます!