コロナ禍の出産体験者の声
リプロ・リサーチ実行委員会 では、安心・納得できる出産、その後の育児や健康が充実したものとなるために、当事者の女性たちやそのご家族、出産に携わる専門家、メディア、政治家など様々な分野の方たちの協力とともに活動してきました。
今年の4月25日、リプロ・リサーチ実行委員会は、多くの賛同者の皆さまと出産体験当事者、参議院議員の打越さく良氏のご協力と共に、計11.775筆集まった署名を厚生労働省に提出しました。
⇒提出資料など詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
また、その後行った厚生労働省内記者会見では、コロナ禍で出産した当事者3名の女性が体験を語ってくださいました。
皆様のこの貴重な声が、今ある制度をより良いものにするための大切な力となったと思っています。心より感謝いたします。
以下、ご本人の許可を得て、内容を文字起こしした文章を記載します。
ぜひお読みください。
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【伊藤 睦美さんの体験】
「2月にコロナ陽性者として出産をした当事者です。当事者としてみなさんに、今どういう形で出産が行われているのか、どういった気持ちになるのかと言ったことを聞いていただくて、話させていただこうと思いました。
私は予定日4日前にコロナの症状が出て、自宅療養期間中に最終的には救急車で搬送されて、受け入れ先の病院で帝王切開で出産となっています。
待機期間中、自宅療養期間中に、保健所の方から連絡が入って、『コロナ陽性で予定日が近いので、状態とか陣痛の有無に関わらず、受け入れ病院が見つかり次第、すぐに入院をしてください』と伝えられました。連絡をいただいた時点で、私は発症から数日経っていて、完全に熱は下がって症状はほぼ治っている状態でした。とくに陣痛がくる兆候とかもなかったです。
『入院となった場合は、すぐに帝王切開されちゃうんですよね』というふうに保健師さんに聞いたところ、『おそらくそうなります』という返事をいただきました。
私は、そちらにいらっしゃる宗先生の松ヶ丘助産院で、できるだけ自然な形での分娩を希望していましたので、『今はちょっと陣痛がきていなくて落ち着いている状態だから、療養期間が明けるまで待ってほしい。陣痛が来なければ療養期間が明けて助産院で産めるので待ってほしい』と保健所の方に言ったんですけれども、『それは現状のシステムではできかねる』と言われて、『もし待機期間中に陣痛が来てしまったら、受け入れ病院が見つからず、病院で産めなくなるかもしれません。それでもいいんですか』というようなことを聞かれました。
そう言われてしまうと、私もちょっとすごく不安になってしまって、どうしたらいいのかわからなくなってしまって、宗先生に相談したところ、先生が保健所との間に入って、説得とかをいろいろしてくださっていました。ただ、そのやりとりをしたその日に、少量の破水をしてしまって、結局破水をしてしまったということで、救急車で受け入れ病院を探しての搬送となり、入院となりました。
入院先でもですね、入院したらすぐに、その時点ではすでにコロナの症状は治っていて、経過もとくに陣痛もきておらず、母子共に健康な状態ではあったんですけれども、それでも入院してすぐ『次の日、帝王切開で産みます』と言われました。
私自身、そういった形での出産になるとは思っていなかったので、心の整理がつかないまま、泣きながら手術台に上がって出産をするという形になりました。
病院の搬送中、私が通る廊下には、『コロナ陽性者移送中』という立札が立てられて、厳戒態勢の中、移送されるという形でした。療養期間を終えている退院時も同じ看板が立てられて、裏口から退院という形でした。迎えの家族は、患者用の駐車場ではなくて、荷物搬入用の駐車場で待機をしていてくださいと言われました。
手術後は、赤ちゃんの顔をまったく見ることもなく、すぐに別室へ隔離され、抱っこも授乳もできず、退院当日、出産から7日間。退院の当日まで、直接の対面はまったくできませんでした。母乳は3時間おきに自分で絞っていたんですけれども、それも、飲ませることはできませんということで、隔離された個室のトイレに毎晩捨てているような状況でした。
赤ちゃんと初めて会えたのが、退院時、迎えの家族が待つ、搬入用の駐車場に向かうエレベーターの中で、初めて赤ちゃんが連れてこられて、渡されて、『おめでとうございました』って。
私は元々助産院で産む予定だったので、その後の産後ケアというのは助産院の方でしていただいて、母乳ケアとかをしていただけたんで、すごく助けられた部分ではあったんですが、そうではない方がそういう形での出産をされたら、本当に産後、不安でたまらないと思います。
私自身も、コロナの対応というのは医療従事者の方を感染から守るためとか、コロナによる赤ちゃんへの危険を少しでも減らすためという理由は、もちろんいろいろなところで言われていたので、それだったらしょうがないかな、コロナになった自分が悪いんだなと納得させるようにしていったんですけれども、やはりケアをしていただいたとはいえ、とても辛くて、前向きに育児をできるようになるまでは時間がかかりました。
出産した病院のスタッフの方々は、自身の感染の危険もある中で、決められたルールの中で最善を尽くしてくれたとは思って、とても感謝はしています。実際の現場の助産師の方とかも、私に『現場で働いていて、コロナ陽性者がみんな帝王切開になるということ自体がいいのかは、やっぱり疑問に思いながらも対応していて、でもそれが決まりだから(・・不明・・)せざるを得ない』というようなことをおっしゃっている助産師さんもいらっしゃいました。
私自身やはり、出産のときにコロナになってしまうと帝王切開というのは知っていたので、それがやはり一番怖くて、私も家族も本当に細心の注意を払って生活をしている中で、それでも感染してしまう。なので誰でもなるものと思うんですね。
本当だったら出産って、家族に見守られる中で赤ちゃんが生まれて、祝福されるべき出来事だと思うんですけれども、それが本当に、なんでしょう、なんか悪いことをした人のように、移送中という看板を立てられて、退院のときも『早く出てください』というような形で、入院中の診察も先生は電話越しの診察のみで、産後診てもらったのは1回だけで、で退院と。
もちろん家族にも赤ちゃんにも会えず。なんなのか、私本当に出産したのかなって、日中も一人で隔離された部屋の中で母乳を絞りながら、なんとも言えない気持ち…でした。
もちろん母子共に健康に出産することができたし、必要な帝王切開とか、医療的介入とかがあるのは承知はしています。ですが、コロナ陽性という理由だけで、他に何も問題がないのに帝王切開になってしまうというのは本当に必要なことなのか、疑問に思ってしまうのは、正直あります。
…そうですね、今後は、私みたいな気持ちで、すごく辛い思いで出産する方というのは本当にいなくなってほしいなって思う気持ちで、今回話させていただきました。
ありがとうございました。」
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【長田 真紀子さんの体験】
「2020 年の 11 月にこの子を出産した長田と申します。私はコロナ陽性だったわけではなく、コロナ禍でのお産ということなんですけれども。2020 年春くらいに緊急事態宣言が出て、大変な状況があって、多分ちょっと落ち着いてきた状況だったんですね。
立ち会い出産ができない施設がすごく多かったんですけれど、運よく私の出産した病院は、早くに立ち会い出産を再開していて、入院前に P C R 検査をして、聞いたら陽性でも即帝王切開ではなく、分娩に時間がかかるようだったら切り替えるかもしれません、というような説明を当時受けていました。
伊藤さんの出産は、私から1年以上経っているのに、そんなことがまだ起きているのか、って、さっきも署名を提出したときもAさんのお話をおうかがいして、もうちょっと、怒りなのか悲しみなのか、言葉がちょっと出なくなるくらい、でした(涙声)。
出産する施設によって、出産の体験が全然違うものになってしまう。とくに今、コロナ禍もあって選択肢がない場合もあるし、コロナ陽性でも帝王切開にならない病院があるなんて私たちは知らないので、そういう観点で選ぶこともできない。天秤の向こう側に、安全とか、子どもの命とか、医療従事者の方にコロナが発生したらそこの病院は閉まっちゃうから、っていうのを乗せられたらもう、「帝王切開にします」「立ち会いも面会も禁止です」と言われて、「はい」って言うしかない。
だからさっき、ロンドンの助産師さんの小澤さん(※当委員会メンバー)が、それはぜんぜん根拠のないことだということを聞いて、ものすごくショックで、なんでそんなことを続けなきゃいけないのか、教えて欲しいです。
さっき伊藤さんと個人的にもちょっとお話させていただいたんですけど、私たち二人目の出産なんですけど、コロナ禍での出産、ひとり目の方は本当に大変だと思います。先ほども話にありましたが、両親学級のようなものもなくって、お母さん同士の交流もなくて、付き添いもないし、面会…私は立ち会いはできても、その後の面会はもちろん、ずーっとできなかったので、病院の中では病院の方以外と接触はありませんでした。
そんな中で、本当に必要のない帝王切開や、必要のない母子分離をされたら、本当にその後辛いと思います。いろいろ辛いことがある、もう本当にいろんな面から辛いんだけど、たとえば母乳ひとつとっても、産後すぐのケアがあるかないかで、母乳の出る出ないはすごく違って、私さっき署名を出しながらこっそり授乳をしていたんですけど、母乳が出なかったら、たとえばこんな所にも出て来られないわけですよ。荷物が多すぎて。
それって本当に母親の Q O L を阻害することで、気軽に外に出られるか、人に会えるとか、自己肯定感とか、いろんな面ですごーく大事なことなので、なんていうかもうちょっと女性の気持ちとか赤ちゃんのことを、主体に考えて、そんなことを変えて行って欲しいなというふうに思います。 ありがとうございました。」
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【Cさんの体験】
「匿名でお願いします。私は昨年の夏に 32 週で・・不明・・双子を出産しました。私のいた病院では健診のときから立ち会いも、付き添いも全面禁止。もちろん入院中も禁止。生まれた赤ちゃんが NICU に入っている間は、母親である私も、同じ病院の同じ階に入院している私も面会は禁止。面会が許されても、原則 15 分で、二人赤ちゃんがいても 15 分だけなので、その日はどっちかメインで会える方を選ばなければいけまでんでした。
子どもたちの父親に至っては、緊急帝王切開になった日に付き添って(涙声)…もらいましたけど、…子どもたちが退院する約2ヶ月後まで、一目すらガラス越しにすら会わせてもらえませんでした。
それも全部、感染症対策という大義名分を盾にして、相談したりとか、お願いしたりとかしても、なかなかどうしても動く気配はありませんでした。
私は今回のことに関しては、本当に命を守るという大義名分を盾にして、女性ですとか、私が一番傷ついたのは、赤ちゃんの命を大切に扱ってもらえなかったと感じていることが、とても私の中ではショックだった出来事です。
異常産になってしまった、早産になってしまったショックや罪悪感に加えて、その後の…家族に会えない、面会禁止、子どもに会えない面会禁止、…そうですね…そしてその対応に対する納得のいかなさで、だいぶ、あのう…葛藤がありました。
私は、実は獣医なんですけれども、獣医の現場っていうのは、日本はそこまで多くないんですが、実施に完全隔離が必要な患者さんを入院してもらって、完全な隔離の状態をケアするという現場を私は実際に経験してきています。その経験や知識から言うと、正直、感染症対策も、本気で…しているように思えない、というよりかは、根拠のない感染症対策と呼ばれるもろもろの制度ですとか、あとはやろうと思えばできるのに、感染症対策という大義名分を盾にしたやっていないこと。
たとえば、父親を一目でもガラス越しに会わせるということが、本当に2ヶ月間もできなかったのか。こちらが何度も謙虚に、一生懸命訴えかけていたことを現場の方々はどういうふうに感じていたのかなっていう。さっきから繰り返しになりますけれども、命を守るというせいで、命を大切にされていないと、とても強く感じました。
1.300g と 1.600g くらいで生まれたんですけれども、退院の頃には 2.600g を超えて、あの生まれたての小ささ、私もちょっとショックだったくらい小さくて、もっと小さな赤ちゃんもいらっしゃいますけど、あの小ささを家族の中で知っているのは私だけで。あの時の異常産になってしまったそのショックを一緒にシェアして、分かち合って、共に乗り越えていきたい、家族とか夫と、シェアできていなかったというのも、いまだに、心の傷というか、私の中では今だに消化しきれてはいません。
そうですね、あと、これは私、とても大事なことと思うんですけれども、妊娠中に体調不良になったことがありました。ちょっとまずいかなって、病院を受診しようかなって思ったんですけれども、もしも陽性が出てしまったら、私の体、出産に対するコントロールを失うという恐怖から、受診をかなり躊躇しました。躊躇して、我慢して、とにかく赤ちゃんにとって危険じゃないと私が判断できるギリギリまで、受診しませんでした。したくなかった。万が一、陽性が出たら、完全に主導権を持っていかれるだろうと思って。体調不良のときに、受診をかなり躊躇しました。
このような状況で出産される方、初産の方、異常産になってしまった方の傷は深くて本当に、大袈裟でなく、多分グリーフケアに近いような、とても細やかで長期的なケアが必要になると思います。
この2年間、日本中でそういう思いをされている方々で、その傷を誰にも言えずに、抱えていらっしゃる方がとてもたくさんいると思います。今回、リプロ・リサーチの方々が、少ない声に気づいて、聞いて下さって、こうして動いて下さって、私はとても感謝しています。
この動きが私にとっては、本当に励みになっています。どうもありがとうございました。」
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体験談は以上です。
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ーコロナ患者の妊婦に根拠なく帝王切開をするのはやめてくださいー