怒れる伝道師
去年の夏、うだるような暑い日。
町営プールの横の公園で、
女子中学生と思われる女の子が
ご両親とソフトボールのピッチング練習をしていた。
ご両親に野球系の経験がないようで、
キャッチボールもままならず、
あまり良い練習にはなっていなかった。
ていうか、ひどいものだった。
私はそれを、
子供にねだられて来たプールの中から、
プールサイドに顎をのっけた状態で
金網越しに眺めていた。
見てるうちに
居ても立っても居られなくなった私は、
「横の公園にいるから」と子供らに言い残し
一人お先にプールからあがった。
そして大きなお世話おじさんとして参戦、
基本的なことからじっくり教えてあげた。
ご両親は大喜びだが、
後から出てきた子供らには非難ごうごう。
「またどこかでお会いしたらお願いします」
「いや、そんなの今決めちゃえばいーんすよ」
と、次回約束まで取り付けた。
後日その次回約束も無事に果たし、
新たな提案をすると賛同。
その子とその友達のソフト部4人で、
わがおじさんチームの練習に来てくれた。
楽しかった。
みんなで一生懸命に球を追いかけた。
しかしいかんせん、
みんな基本的な動作からしてできていない。
普段の環境が気になったので聞いてみると
「顧問がクソ」
「教えてもらったことなんかない」と。
自分が好きで楽しくやってきたのと同じ競技なのに、
箸が転んでも笑い転げるような世代の子供らが楽しくないなんてあまりに不憫だ。
上手にならなくてもいいから、
せめて楽しい部活動にできたらと
私には祈るしか術がなかった。
それから1年以上が過ぎ、
先日裏通りでバッタリ、教えた彼女に会った。
向こうもすぐに気づいてくれた。
「おー、久しぶり!部活どうやった?」
「もう引退?最後の大会とかどうやった?」
「あれからひどいことになって…
みんなボイコットして最後は解散みたいになった」
「最低の顧問のせいで…」
胸が痛んだ。
そして怒りでどうにかなりそうだった。
どこのどいつに、
子供の希望をぶち壊す権利があると言うんだ!
子供の笑顔や光を大人が奪うなんて、
そんなことがあっていいと思ってんのか!
決めた。
私は決めた。
その中学校のソフト部の非常勤コーチになると。
もしかしたらその顧問のせいで
廃部になってしまうかもしれないが、
まだ来年以降も存在するのであれば。
中学校にコネもルートも無いし、
子供らはまだ小学生だし、
どこにどうやって交渉すればコーチになれるかさっぱりわからんが、
とにかく決めたのだ。
「愛と平和の伝道師」と名高いおひょいは、
ソフトボールの楽しさも伝道するのだ!
半径5mに影響を与える男は、
半径500mに拡大して影響を及ぼすのだ!
待ってろよ、こんにゃろう。
やってやるからな!