国際課税勉強会25(タックスヘイブン対策税制のオーバーインクルージョン)
本日は、国際課税「一角塾」にオンライン参加し、自分の研究報告をしました。平成27年2月25日東京高裁判決(シティグループ事件)の研究です。
タックスヘイブン対策税制(租特法66条の6)は、国内の法人や個人が、税金が安い外国(タックスヘイブン)に子会社等を作って、国内で生じるべき所得を、タックスヘイブンで発生させることにより、日本での課税を回避することを防止する目的でつくられた税制です。
その内容は厳しいもので、タックスヘイブン子会社で発生した所得を、その支配者である国内の株主の所得とみなして合算課税するという規定になっています。
本件では、タックスヘイブンであるケイマンに子会社C社が設立されたが、所得はケイマンで発生せず、C社の東京支店で発生したため、日本の国内所得としていったん課税されています。
通常の内国法人であればここで課税完結ですが、C社はタックスヘイブン子会社だったため、東京支店で発生して課税済みの所得が、タックスヘイブン対策税制により日本親会社の所得に合算されてもう一度課税されてしまったという事件です。
当時の租特法の規定(66条の6第1項)と、租特法施行令(39条の14第1項1号)の規定を文言どおりに解釈すると、たしかにこのような課税が可能で、「国際的二重課税」ならぬ「国内的二重課税」が成立するという結果になります。
原告法人はそれはタックスヘイブン対策税制が意図するところではないとして、文言にこだわらない趣旨解釈を求めましたが、裁判所は結局法の文言を重視して課税庁側の主張を認めて原告敗訴に終わった事案です。
租税法は法の文言どおりに解釈(文理解釈)するのが原則といわれるが、それによってこのような国内所得の二重課税という不自然な結果まで許容するのは行き過ぎだと感じます。しかし日本ではなかなか納税者側の目的論的解釈は採用されないのが現状のようです。
仮に法の趣旨とは明らかに離れていることが明白な文理解釈による課税を受けると、納税者のコンプライアンス意識(自発的コンプライアンス)は減退するといえます。そのような状況下での課税と司法判断のあり方が問われます。
(先日、別の案件ですが、この一角塾における私の報告記事のひとつが、清文社プロフェッショナル・ジャーナルに掲載されました。)
【memo】
・上告不受理
・日本の税法立法過程の未成熟(立法趣旨も明確とはいえない)
・目的論的解釈は危険性をはらむ(税務行政態様との関係)
・知らしむべからず、拠らしむべし
・なぜケイマンに子会社をつくり、国内源泉所得を発生させたか