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タイBLドラマ「Bite Me The Series / バイト・ミー」(2021年)U-NEXT 超おすすめ!キャストとあらすじ

2022.12.11 16:20

おすすめ度:★★★★★ 料理を通じた素敵なハートフルBLドラマ


U-NEXTでThe Dream and Destiny 制作のタイドラマ「Bite Me The Series / バイト・ミー」(2021年)を観ました!人気レストランのシェフとフードデリバリーの配達員の「料理」を通じたハートフルBLドラマ。タイ料理好きとタイドラマファンの想像と期待を超える素敵で美しい仕上がりに、終始ため息が出てしまう作品。そして、これはもはやただのBLではない…BLをBLとして「別ジャンル」で扱うことさえも無意味に思えてくる深いドラマ。


結論から言うと、このドラマ、すごくいいです。本当におすすめ。


少し前からU-NEXTで見放題プランに入っていたので、いつか見ようと思いながらも、もっと華やかな他のタイドラマに押されて後回しになっていた作品でしたが、観初めてすぐにレストラン「イム・ウア」の料理とその料理をつくる人たちの世界のとりこに!あっという間に動画再生をやめられなくなりました…。





レストランのシェフとデリバリーの配達員

ドラマの舞台はバンコクにある創作タイ料理レストラン「イム・ウア」。オーナーでシェフのエウ(発音からカタカナでおそらくこんな感じの名前)がある日、フードデリバリーサービス「LINE MAN」で宅配員をしている大学生エークとオーダーを通じて出会い、料理を通じて心を通わせていくストーリー。


ちなみに、LINE MANは実際にタイで稼働しているUber Eastsのようなサービスで、コロナ禍で発達したフードデリバリーのリアルな感じが出ています。このドラマはスポンサーでもあり、LINE MANの実際のビジネスとドラマが一体化していておもしろいです。いわゆるステマ広告でもありますけどね。


創作タイ料理のような最高のフュージョン

この作品は人気BL作家による原作「Grab a bite」のドラマ化で、ストーリーの中心はエウとエークが恋に落ちる話なんですが、なんて言ったらいいのか、単にタイBLドラマで片付けてしまうのは「ちょっと違う」と感じてしまうほど、非常によくできた深い作品なんです。


好きなことを仕事にしていく、夢を追いかける、挑戦して現実にしていく、といったお仕事ドラマな部分と、親子、兄弟、家族、友達、同僚との関係で誰かが誰かも思う優しい気持ち、といったヒューマンドラマな部分と、自分にとっての特別な人に出会うという恋愛ドラマな部分とが、絶妙なバランスで織り混ざって、劇中の創作タイ料理のように最高のフュージョンを起こしています。


タイ北部の料理を学びながら育ったエーク

バンコクの大学で商学を学んでいるエークはタイ北部のナーン県の出身。実家は祖母の代から続く小さなタイ料理レストランで、子どもの頃からおばあちゃんとお母さんにタイ伝統のハーブや料理について学びながら育った。お父さんはもういない。その分、お母さんを大事にしている。


料理が大好きで、将来は料理人になりたいと思っているものの、「大学を出て、いい仕事に就いてほしい」というお母さんの願いもあり、地元を離れてバンコクの大学に進学。それでも、寮の部屋ではいつも料理の本を読んでいる。デリバリーのアルバイトがきっかけでレストラン「イム・ウア」に行き、オーダーミスから2時間待たされ、ウアと運命的な出会いを果たす。


エーク役を演じているのはマーク・シワット・チャムローンクン(Mark Siwat Jumlongkul)。おそらく彼のこれまでの代表作と思われる青春BLドラマ「ラブ・バイ・チャンス / Love By Chance」(2018年)ではやんちゃな高校生役を演じていました。ほかにも「The Stranded / ロスト・イン・ウォーター 神秘の島」(2021年)でもBLキャストで出演しています。


プロシェフ番組で2位になった料理人エウ

オーダーを受け取りに来た配達員エークに、2時間も待たせてしまったお詫びにと心優しく紳士なウアが渡したのが、レストランの人気料理チキングリーンカレーチャーハン。そこに入っているハーブを一瞬で嗅ぎ分けたエークを見て、一瞬で料理の才能に惚れ込んでしまう。エークをシェフにスカウトし、最初は断られるも、レストランで一緒に働くことに。この時すでにウアの恋は始まっていた…。


お母さんは画家で、お父さんは木と会話する人(おそらく芸術家)、お兄さんはお医者さんという家族のもとで育ったウア。料理を専門的に勉強してシェフになり、タイ一番のシェフを決めるテレビ番組で2位になったこともある。祖母と母親からの伝承以外に料理を学んだことのないエークがおいしい料理をつくるのを見て、エークの料理の才能は自分より上だと感じている。


ウア役を演じているのが、ズン・キダカーン・チャットゲーオマニー(Zung Kidakarn Chatkaewmanee)。このドラマでは物静かで落ち着いたいい演技を見せています。絶対にどこかで観たことある!と思っていたら、タイ映画「LOW SEASON / ローシーズン」(2020年)で、主人公の女の子リンの元彼トー役を演じていました。このドラマ「Bite Me」がBLドラマ初挑戦なんだそうです。


いい仕事とやりたい仕事

大学生で将来の進路選択をしなければならない時期に来ているエーク。親の期待に答えていわゆる世間体のよい「いい仕事」に就くか、好きなこと、やりたいこと、子どもの頃からの夢を追いかけて「料理人」になるか。どちらの道に進んでいくべきか、悩み、選択する、という大きな課題がつきつけられます。


最初は、お母さんが反対している料理の道に進むことに「罪悪感」のようなものを感じていたエークでしたが、料理が好きだという気持ちと、それを評価しサポートしてくれるエウとの出会いで、導かれるように料理の世界に入っていきます。


それでも、しばらくはレストランで働いていることをお母さんには言えずにいましたが、レストランで生計を立てることの大変さを知っているお母さんは「家業だから継がなければならない」といった義務感をエークに押し付けたくなかったので、「大学を出て、稼ぎのいい仕事について欲しい」と話していたんですね。


エークが自分で料理の道を選んだこと、シェフのウアがエーク才能を高く評価していることもあり、お母さんはそれを受け入れて、応援してくれました。エークがレストランを代表してプロシェフ番組に出場した時も、会場まで応援に来てくれました。お母さん、息子思いで、本当に優しい。


グリーンカレーにトムヤムスープ

このドラマ「Bite Me」の見どころのひとつが、タイトルにもある通り、美味しいそうなタイ料理の数々。料理のシーンもとっても魅力的に撮ってあり、仕上がるところなんかたまりません。タイのお菓子も登場して、伝統菓子のシンプルな繊細さがハイライトされています。



プー・マンとヤー・マン

このドラマでタイらしく象徴的に描写されているのが、エークの地元・タイ北部ナーン県にあるワット・プーミン(วัดภูมินทร์ 、Wat Phumin)という寺院の本堂にある壁画の男女プー・マン(マンおじいさん)とヤー・マン(マンおばあさん)。「大地に共鳴する愛のささやき、または、ささやく人」と名付けられた2人で、プーミン寺院の壁がのほかにも、街の至るところでナーン県のアイコンとして出てきます。


あなたへの愛の言葉を、川に託して伝えたら冷えてしまいそうで心配。もしも空に託して伝えたら、雲に隠れてしまいそうで心配。この気持ちをお城に託したら、王様に奪われそうで心配。だから私はあなたへのこの気持ちを、胸の中にしまっておく。胸の中でドキドキして、眠っていても胸の鼓動で目が覚める。



ちょっとしたすれ違いで仕事を休んで実家に帰ってしまったエークを追いかけて、ウアがナーン県に迎えに行くシーン。エークのお母さんが営む小さな白いレストランや、エークが育った部屋(レストランの二階)のノスタルジックな雰囲気、停電が起こる夜、トゥクトゥクでの地元観光、ローカルなお店での食べ歩き、全てのシーンが美しく情緒豊かに描かれていて、ホント最高です。


タイ北部でもナーン県はチェンマイのように外国人観光客が気軽に訪れるような場所ではありませんが、このドラマではプー・マンとヤー・マンみたいに、今はまだ外国ではあまり知られていないような観光資源を発掘して織り込んでいるあたりも、タイドラマを見る外国のファンにはたまらないポイント。次にタイに行く時はプーミン寺院に行ってみたい!


人の心は複雑

こうして徐々に互いに心の距離を縮め、いつしか惹かれていくウアとエーク。しかし!人の感情ってそんなに単純に「好きなものは好き」とはならないんですね…。それが最後には辿り着く唯一の答えだったとしても、人の心は複雑。戸惑い、反発、疑い、拒絶、あきらめ…こうした紆余曲折を経なければ、そこへはなかなか辿り着けない…。このシーンは切なすぎる。


この「心の葛藤」は、ある意味でBLドラマがBLである所以かもしれませんが、それは「いい仕事」を選ぶか、「好きな仕事」を選ぶか、ともどこか似ていて、最終的には世間体や他人の目ばかりを気にしていては幸せはつかめない、ということでもあります。


でも、それは好きな仕事を選ぶより何倍も難しいし、周囲の人の理解だって何十倍も得られにくい。エークのお母さんはさまざまな愛の形を受け入れてくれる人で、エークはすぐに打ち明けることができましたが、この世はドラマよりももっと複雑なのは間違いない。この難しいシナリオをこんなにも自然かつ情緒的に演じたマークとズンに拍手。


僕は…腹が減った

ナーン県の山間のロッジで、朝霧に浮かぶ街が少しずつ明るくなっていくなか、ウアがエークの耳元でささやくシーン。実は最初に観たときはスルーしてしまいましたが、2回目に観た時にウアの手のポーズから「愛をささやくプー・マンとヤー・マン」がモチーフになっていることに気づきました。


しかも、この時ウアのささやく言葉は「僕は…腹が減った」なんですね!「君が好きだ」でも「愛してる」でもなく、「腹が減った」。このセンスは天才的!


そして、ウアが「料理」だとしたら、エークは「調味料」だと言う。これはプロシェフに出るために準備をしていた時、ウアがエークに調味料で味付けを頼んだシーンに繋がっていますが、料理には調味料がないと味がつけられない。味付けをしてはじめて「Bite Me」に。


そして、朝食に豚肉のおかゆを作るラストシーンでの会話がまた天才すぎる!


エーク:豚肉は好きですか?
ウア:好きだよ。かなり好きだ。エークは?好き?
エーク:好きです。
ウア:豚肉が好き?
エーク:……… あなたが好き。
ウア:本当に好き?食べたいなら鍋に飛び込む



このドラマは全12話ですが、ストーリーは11話で完結し、12話は出演者インタビューや制作秘話などのスペシャルエピソードになっています。この回も非常におもしろいのでお見逃しなく!


あわせて観たい作品

GMMTVのタイドラマ「Baker Boys / ベイカー・ボーイズ」(2021年)。御曹司のプンが女の子にモテたいからとオープンした洋菓子店「スイートデー」で働く個性豊かな4人の男たちを描いたコメディ&サスペンス。原作は、よしながふみの漫画「西洋骨董洋菓子店」。このドラマでプンが住んでいる家と、Bite Meでウアが住んでいる家は同じ家のようです!


もうひとつレストランが舞台のおすすめタイドラマは「オー・マイ・ゴースト / Oh My Ghost (OMG)」(2018年)。人気のイタリアンビストロ Artist Bistroで料理人として奮闘する内気な主人公ジウと少し意地悪な一流シェフのサン、さらにジウとは性格が正反対な幽霊が繰り広げるラブコメディ。このドラマのスーシェフは、Bite Meではウアが以前働いていたレストランの先輩シェフ(シェフコンテストでタイ1位を獲得)を演じています!