終電で帰る?
ささっと仕事を終わらせ、学生時代からの親友と再会。
本屋回って、いろーんな本を見て、
最後に行ったのいつ?っていうくらい、久々にゲーセン行ったりして。
プリクラなんていつぶりなのか。
その後も梅田をブラブラ散策。
他愛もない話しをして、笑って、ほんと幸せ。
あ~楽しかったなー!とかいって。
おすすめのcafe&barに連れて行ってもらい
気づけば0時をまわりそうな梅田。
阪急で帰る友達をほなねー!と手を振って先に帰ったのを確認して、
足はやにJRに駆け込む。
「セーフ」
正直、この時鶴橋に着いた時点で実家のある生駒までの電車はないって分かってた。
「行けるとこまで行ってタクシー乗るかな。それとも満喫探すかな。」
なんとなく、中学の頃に聴いていた椎名林檎の
「丸の内サディスティック」が頭の中で回りだして、
“終電で帰るってば 池袋~♪”の「池袋」を「梅田」に変えたり(笑)
って心の中で歌ったりなんかして。
ちょっと走ったせいで、頭がクラクラ。
でも大丈夫。
そっと、今日1日の楽しかった事を思い出して、落ち着く。
鶴橋に着いた瞬間、案内板で「瓢箪山」まで行ける事が分かった。
「瓢箪山まで行けるならちょっとお金かかるけどタクシーやな」
さて、乗ろう!と思って乗降口に近づくと、
最後のほうにスッと降りてきた年配の女性が、突然、崩れるようにホームに倒れた。
え!
大丈夫ですか!?と駆け寄ってみると、
「う~・・・」と苦しそうにしていて、駅員さんは「車椅子!」と叫びながらパニック。
横目でちらりと見て通り過ぎる乗客たち。
けれど、もう一人、酔っ払い気味のおじさんが、
「おい!大丈夫か!?」と声をかける。
「気分が・・・」
女性は荷物を抱えたまま、くしゃっと倒れこんでしまっている。
あぁ、こういうときはどうしたらいいんやっけ?と思いつつ
女性に声をかけながら、精一杯、状態を確認。
「大丈夫ですからね」と言いながら背中に触れた瞬間、
洋服の素材が抜群に良いことに気づいた。
おまけにバッグも一流ブランド・・・
しかも、女性はかなり年配なのに、小綺麗にメイクをしていて、一人で、終電帰り。
難波も、梅田も、三宮もすべて通る線だし・・・
夜のお仕事?
あぁ、そうか。酔ってるんだ、この人。
と考えると普通に辻褄が合った。
確かに、気丈そうな方だし、自分で酔っ払いとは言いにくいだろう。
「お酒は飲みましたか?」
「かなり飲みました?酔っていますか?」
「・・・はい、けっこう・・・」
なるほど。よかった。
そして10分ほど経った後、用意していたビニール袋にだばーっと吐いて、
少し落ち着いた。
自分の着ていた衣服や靴にも結構、かかってしまったけど、
気にしている場合じゃない。
道行く人は階段の横の僕たちをじろじろ見たり、
「これ使ってください」とウェットティッシュをくれたり、
さきほどの酔っ払い気味のおじさんは
「ねえちゃん、オレもよっぱらって吐いたこと何回もあるからさぁ、心配すんなァ~!」
と女性を激励。関西のおやじ!、って感じだけれどいい人そう。
まだふらついているので、おじさんと協力して
水を飲ませたり、衣服の汚れを拭いて待った。
そして駅員さんが持ってきた車椅子に女性を乗せ、
タクシー乗り場までお見送り。
おじさんは偶然、女性と方向がいっしょだったので、
「おれが送っていくわ!心配やから。」と、同じタクシーに乗ってくれた。
念のため、女性の家に家族がいることを確認し、
おじさんの名刺をいただいて、お見送り終了。
ふぅ。
気がつけば、鶴橋から奈良方面へ向かう電車は無くなっていた。
「どうしよう・・・」
そしたらタクシー発車前のおじさんが降りて来た。
「兄ちゃん、どこまで行くんや?」
「生駒です・・・」
「えらい遠いやん!ほな、これ遠慮すんな。」
そう言っておじさんが渡して来たのは、十分すぎるお釣りが返って来る金額。
「いえ、悪いです。そんなの・・。クレジットあるしそれで帰ります」
「えぇから受け取れ!おっちゃんな、兄ちゃんみたいな若い子がこういう困ってる人助けてるのみて感動したんや。ありきたりやけど、”世の中捨てたもんじゃない”って思ったんや」
そう言って、申し訳なくも精一杯の感謝の気持ちと態度を示して、
ありがたく1万円を頂いた。
ドタバタしたけど、こうやってなんか人とのつながりが生まれる社会って、いいな。
とも思った。
もう終電はとっくに終わっているので、おっちゃんからもらった1万円でタクシーに乗った。
夜の風が冷たい季節になって、気持ちいい。
帰りはドタバタだったけど、どこか今日は幸せな気分。
あの人は無事に帰れたのかな?と、2人の顔を思い浮かべながら帰路についた。
shun