発表会ピアノ合わせ
今週末は講師をしているプレスト音楽教室の発表会。
そのため昨日、参加されるトランペットの生徒さんのピアノ合わせがありました。
プレスト音楽教室はどちらかと言えば「街の音楽教室」的存在です。しかし僕のクラスに関してはちょっと違って、僕のブログや書籍をご覧いただいた方が遠くからわざわざ時間をかけていらしてくださいます。
近所に住んでいるから、という「街の音楽教室」らしい理由の生徒さんのほうが圧倒的に少ないのです。
その中の多くが、吹奏楽やオーケストラに所属している方で、実践で使える技術を身に付けたいという目的を持った方がほとんどです。
生徒さんはそれぞれ週末になると楽団の練習や、場合によってはこの時期ですから本番です。そのために発表会に参加する生徒さんはとてもとても少ないのです(発表会は自主参加)。
生徒さんそれぞれが活躍している場があるわけですから、無理に時間を割いて発表会に出る必要もないし、それでいいと僕は思うので、参加を促すことはしません。場合によっては発表会の話題すら出さなかったりします。
というわけでごく少数の生徒さんのピアノ合わせを昨日したわけですが、やはりどうしても自分ひとりの世界に心が引きこもりがちになり、一緒に演奏しているピアノの音が全く耳に入っていません。
そこで、自分の演奏は今どうなってもいいので、とにかくピアノの音を耳で捉えましょうと伝えます。すると、そのときのほうがよほど安定した演奏をされるのです。
アンサンブルの妙ですね。
そもそも、音楽家人生をかけた国際コンクールに向けてピアノ合わせをしているわけではないのですから僕は生徒さんに、
何がなんでもこの高い音を出すのだ!!と力ずくの奏法で作品にそぐわない乱暴な音を絞り出すくらいなら、これまでレッスンで培ってきた(まだ習得しきれていないかもしれない)正しい奏法にチャレンジし、仮に音が出なかったほうが何百倍も素晴らしい音楽をしている、と伝えます。
音としては出なかったかもしれないけれど、心の中にある音楽が素晴らしく、それを聴く人へ届けたいと思う非常に強い気持ちがあること、これが演奏する側の何よりも大切なことだと知ってほしいのです。
心に音楽を持っておらず、器用に音を並べられる奏者よりも、ちょっとくらいミスがあっても心の中から素晴らしい音楽とそれを伝えようとする強い意思がとめどなく溢れ出る人であってほしいと思います。
大切なのは何をしたいのか。何を伝え、何を届けたいのか。
音楽の核になる部分です。
だから吹奏楽部の指導者で「ノーミス!」とか怒鳴ったり、ミスをした人を吊るし上げるような言動をする人間は本当に頭おかしいと思うし、音楽なんてやる資格ないし、そんな人に教わっている子どもたちは目を覚ました方が良いと心から思います。
以前テレビでそれを「厳しい練習に耐えて掴み取った吹奏楽コンクール全国大会の切符」と、まるで美談のように放送しているのを見て吐きそうになりました。
いつまで戦後教育してるんだと。
とにかく、音楽は奏者自身がまず楽しむこと、そして作品の美しさ、トランペットのもつ魅力、何よりも自分の想いを届けるために演奏するのだ、と自覚し、素敵なステージを作り出してほしいと願っています。
荻原明(おぎわらあきら)