「宇田川源流」中国とサウジアラビアの接近の意味する「アメリカの中東戦略の失敗」
「宇田川源流」中国とサウジアラビアの接近の意味する「アメリカの中東戦略の失敗」
習近平国家主席がサウジアラビアを訪問したことが話題になっている。実際に、このサウジアラビア訪問は様々な意味があるだけではなく、実際に、アメリカの中東への影響力の現象ということや、中国とイランの関係の微妙な変化、そして、エネルギーに関する世界のバランスの変化などが大きく変わる可能性を秘めている内容であると考える。
資源に関して、良く再生可能エネルギーで賄えばよいというような話をする人が多いが、再生可能エネルギーに関して言えば、自然を壊すことはないかもしれないが、少なくともそのエネルギーに関していえば、基本的に「繁忙期の備蓄が必要」ということになり、人間が必要な時にエネルギーをそれに応じた量を出せるというものではないし、また、分割して持ち歩くことができない、つまり、飛行機や船など長距離の移動には不安が残る。もっと大きな話で言えば、軍事に関しては、基本的に再生可能えねるいーなどと言うのは難しい。ソーラーパネルを積んだ戦車は、そのパネルを攻撃されてしまえば、そこで動かなくなり、また、そのパネルは非常に大きな面積を必要とするので的になってしまう。それだけでは無く、夜間の戦乙には対応できないなど様々な問題がある。それでもまだ戦車は良いが、ミサイルなどは再生可能エネルギーで何とかなる話ではない。つまり、再生可能エネルギーは緊急時には個人的なレベルでしか役に立たないということになる。まあ、言い方を変えれば、時と場合で使い分けなければ意味がない。
その意味で「産油国」というのは非常に重要な力を持っており、世界への影響力が大きいということになる。その産油国の一つであるロシアが、現在ウクライナでの戦争で世界から経済制裁を受けている。その経済制裁に対して中国は特に制裁をしていないので、何とも言いようがない状態になっているのであるが、それでも貪欲に資源を求めているということになる。
逆に中国を中心に見てみると、その覇権主義に対して、覇権主義に対抗する勢力として民主主義国、つまりアメリカとイギリスという国が出てくるのであるが、その二つの国との対抗をしているのが、中国・ロシア・イラン・北朝鮮・キューバ・ベネズエラというようなことになってくる。イランが資源国であることはよくわかっていると思うが、そのロシア・中国・イランにおいて、国内でデモが起きている状態になっている。その中で「習近平は何故サウジアラビアに行ったのか」ということになる。
習氏がサウジ訪問開始、関係強化へ 米「中国の影響力拡大を注視」
[リヤド 7日 ロイター] - 中国の習近平国家主席は7日、サウジアラビアに到着した。サウジ国営メディアは、リヤド州知事やファイサル外相、政府系ファンドであるパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)代表らが習氏を出迎える様子を放映した。
国営サウジ通信(SPA)は到着時の習氏の発言として、サウジアラビアなど6カ国で構成する湾岸協力会議(GCC)諸国などと協力し「中国とアラブの関係、中国とGCCの関係を新たな段階に進める」と述べたと報じた。
中国政府は習氏のサウジ訪問をアラブ世界における最大の外交的イニシアチブと位置付ける。サウジは、人権問題や石油減産を巡り米国などとの関係が冷え込む中、中国との関係強化を目指す。
サウジのコラムニスト、アブドゥルラフマン・アルラシュド氏は自国の国営紙に「中国はパートナーに要求したり、政治的期待を負わせたりせず、内政干渉を控える」と書いている。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は、習氏のサウジ訪問について、中国が影響力行使を目指す行動の一例とし、「中国が世界で拡大しようとしている影響力を注視している」と述べた。また、米国の中東政策に変更はないとも強調した。
世界最大のエネルギー消費国である中国にとってサウジアラビアは最大の石油供給国。中東湾岸地域の経済多様化を推進する中でサウジと中国の関係が親密度を増す中、米国は機密性の高いインフラへの中国の関与が拡大することに対して懸念を強めている。
サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相は、同国が中国にとって「信頼でき、頼りになる」エネルギーのパートナーであり続けると表明。中国工場向けの地域センターを国内に設立し、エネルギー供給網における協力を強化すると述べた。
中国外務省の報道官によると、習氏はサウジでの首脳会談のほか、アラブ諸国の首脳会議に参加する計画で、「中国・アラブ関係発展の歴史における画期的なマイルストーン」になるとした。
首脳会談では、1100億リヤル(292億6000万ドル)超に相当する初期契約が調印されるとみられている。
SPAによると、中国とサウジの企業が7日、グリーンエネルギー、IT(情報技術)、クラウドサービス、輸送、建設などの分野における34件の投資契約に署名。金額には触れていない。
2022年12月8日 ロイター編集
https://jp.reuters.com/article/china-saudi-idJPKBN2SR1M4
中国的な債務の罠があり、その債務の罠にサウジアラビアがはまるのかということが、大きな味方の一つになる。サウジアラビアそのものが、石油の産油が出来ないこと(イエメンの攻撃により石油施設が破壊されている)という状態において、その原油を出せない状態に対する投資をアメリカも日本も西側諸国はどこもしていない。イエメンによる攻撃は、そのままサウジのマイナスになっているが、サウジを頼っているおおくのくには、「産油国であるから金持ちであろう」というような先入観で何もしていない。それどころか、ウクライナに対してはこれだけ同情的な報道をしていても、サウジやイエメンのフーシ派の問題に関しては目をつぶってしまったかのようなことになっている。
サウジアラビア、特に、現在のムハンマド皇太子にとっては、それが不満なのである。自分の地下資源を出して発展しておきながら、イエメンとの情勢に関しては、全く関心を示さないということが大きな問題位なる。そのような「心理的な闇」に付け込むのがうまいのが中国である。
まさに心理的な闇と、その中における経済的な不満をうまく手玉に取り、そのうえで、債務の罠にはめるのが中国の手法だ。その手法にうまく引っかかっているというのが今回の問題の一つの見方であろう。
一方で、中国はイランとの関係はどのようにするのか。サウジアラビアというスンニ派のトップと、イランというシーア派のトップをどのようにうまくするのかということが大きな問題になる。ちゅごくはイランイラク戦争の時に、敵味方、つまりイランにもイラクにも兵器を売り、莫大な利益を上げたが、一方でそのことにひょって戦争が長期化し、犠牲者が増えた。そのことを中東では中国への不信感として残っているということになる。現座「反米」ということで言欄とは繋がっているが、一方で、サウジと結ぶということは、イランを見限ったのではないかというような感覚も出てくるのである。イランは、ロシアとの間に無人ドローンの関係があり、そのことから、ロシアとの関係が深く中国との関係が浅くなるというような感覚になってしまっている。もちろん、中国はその前に、パキスタンと関係が深いということを考えれば、中国的にはそのような宗教的なつながりは関係がないというようになるのかもしれないが、それで中東の人々は納得するのかは疑問である。
いずれにせよ、このような中国の動きをそのまま放置したのはバイデン大統領と岸田内閣である。上記のように中国の中東での動きに非常に危機感を示しているものの具体的に、目に見える何かをしているわけではない。そこに不満が残るのは仕方がないことであろう。しかし、その仕方がないということを、そのまま放置して良いのか。少なくとも、ここまではバイデン大統領と岸田内閣の外交の失敗であろうということはよくわかるのではないか。
これで決まったわけではない。他のイスラム教を主教とする国々や中東の国とのバランスを考えて、どのようにするのかということを見てゆかなければならない。